30 決定
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特に、表立って第一王子と私の関係性が変わる事はなく、ティアリーナ様や兄達、2年生の卒業式も終わり、この春から2年生としての学園生活が始まった。と言う事は──
一つ年下の妹が入園したと言う事である。
「兄は常に次席をキープして卒業したけど……妹はまさかのCクラスだとは思わなかったわ。」
「え?そうですか?アレはどう見てもそのレベルですよ?」
「───ココ……。」
いくら脳内お花畑とは言え、同じ両親から生まれたのだから、妹もそこそこできるのでは?と思っていたけど…平民中心に作られるDクラスを除き、貴族は基本ABCと成績順にクラス分けをする。妹のアナベルは……Cクラスだった。まぁ、辺境伯を継ぐのは兄だから、特に問題は無いけど─。
ー後は、学園内で私に関わって来なければ…良いんだけどねー
なんて、お花畑を侮っていた私を殴ってやりたい──。
「あら、お姉様は今日もお友達とご一緒なのですか?相変わらず殿下からのお誘いがありませんのね。」
「「「「……………」」」」
放課後、学園にある自由室─生徒が自由に使えるサロンで、いつもの4人でお茶をしていると、いつものように妹がやって来た。
「やっぱり、お姉様は殿下からは見放されているのね。」
クスクスと嗤って、言いたい事だけを言って去って行く─これが、お花畑のいつものパターンだ。
たしかに、第三者から見れば、フェリシティ=エルダインは第一王子の婚約者にはなれない、見放されている─と見えるだろう。だけど、それはちゃんと見る事ができない者であって、ちゃんと見る事ができる者は、そうではないと分かっているのだ。
「本当に、半分でもフェリシティ嬢と血が繋がってるのか?いや、あの優秀なシリル殿と同じ血が流れているのか?」
相変わらず、エルド様はストレートだ。
「残念ながら……。」
それでも、私に攻撃はするが、グレイシーやエルド様やリオには決して攻撃しない。その辺は………流石だよね。まぁ、いつも私の横で冷気を放っているリオには全く気付いていないけど。
それでも、それ位の攻撃は可愛いものだ。
第一王子と言えば──
卒業したティアリーナ様とテレッサ様とは会う機会が減る─と言う事で、その2人を王城に呼んでお茶をする機会を増やしたそうだ。そこに、時々私とミンディ様とノーラ様が加わる。
勿論、相変わらず、私と第一王子の視線が交わる事はない。と言うか、私も敢えて合わそうとしないから。それに、ティアリーナ様が、いつも第一王子の前の席をキープしてくれているからだ。
本当に、ありがたいです。このまま──このまま、残りの学園生活を過ごしたいと思っている。
******
第一王子は変わった─とよく耳にするようになったのは、2年生の冬休み直前の頃だった。
第一王子は、よく周りの声を聞き、そこから疑問に思った事はきちんと調べて精査する。
当たり前と言えば当たり前の事だけど─。
そうして、いくつか滞っていた事業を進める事ができたそうだ。これについては、あのエルド様も手放しで褒めて?喜んでいた。
後は、コレを王妃様がどう判断するか─だ。
******
いよいよ、明日で1学期が終わり、冬休みに入ると言う日。
「あ、俺も一緒にエルダイン辺境地に行くから。」
「え?聞いてなかったけど!?」
「うん。今初めてフェリに言ったからな。領に居る辺境伯とシリル殿には言って、許可をもらっているから大丈夫だ。」
と、ニッコリ笑った後、私の耳元に顔を近付けて
「これで、ゆっくりとフェリと一緒に居られる。」
と、囁かれた。
「───なっ!?」
「ふっ───本当に、顔を赤くするフェリは可愛いな。」
「──っっっ!!??」
学園ではあんなにも普通だったのに!?あっ……甘い!甘過ぎる!!私、こんなんで、冬休みは無事に過ごせるの!?
囁かれた耳が熱を持ったまま、私は心の中で叫んだ。
*その頃の王城にて*
王妃が執務室で執務をこなしていると、そこへ、息子である第一王子メルヴィルがやって来た。
王妃はメルヴィルが入室したのを確認した後、自分付きの筆頭侍女(王妃宮筆頭侍女)以外の人払いを命じた。
その為、今、この部屋に居るのは─王妃、メルヴィル、侍女─だけである。
「メルヴィル、決めたのですね?」
「はい。」
母である王妃からの簡単な質問に、メルヴィルも簡単に答えて、手に持っている布が掛けられた手の平サイズのトレーを王妃に差し出す。
王妃はソレを受け取り、その布を外す。
「母上には、ご心配お掛けしましたが…やっぱり、私には彼女しか………。」
「──そう。ところで…彼女とは…関係を修復──回復できたと?」
「まだ…回復とまではいきませんが、必ず!」
「───そう。では…最後に、一度だけ確認するわね。メルヴィル。この色で、ティアラを作って良いのね?」
「はい!勿論です。母上、宜しくお願いします。」
メルヴィルは、パアッと顔を明るくさせ王妃にお願いをした後、そのまま執務室から出て行った。
そう。メルヴィルが持って来たのは、婚約者を決定付けるアイテム─ティアラに付ける宝石だった。そのティアラを作らせるのは王妃と決まっている為、宝石の色を決めたメルヴィルが王妃の所に持って来たのだ。この時点で、婚約者は決まった。
そして──
「これで…王太子も決まったわね………。」
そう呟きながら、手元にあるその宝石にもう一度布を被せる。
「レイア、コレで、ティアラを用意してちょうだい。それと、私は今から陛下に会って来るわ。」
「畏まりました。」
王妃は一度目を瞑った後、しっかりと前を見据えて歩き出した。
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