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25 急展開?



『フェリにまた…信頼してもらえるように頑張るから…後1年と少し…私に時間が欲しい。』



『今は何も…言わないで欲しい。ただ、聞いて欲しかっただけだから。』





何も分かってない───


聞いて欲しかっただけ?それで、私がまた、心を傾けるとでも……思ってる?




それに───




「いやいやいや!言わせて欲しかったですけど!?」


「何を?」


「ひぁっ!?」


あれから第一王子と別れ、帰る為に待機させていた馬車に乗り込んだ瞬間、我慢ができずに叫ぶと、そこには─


「なっ……何でリオが馬車(ここ)に居るの!?」


何故か、リオが長い足を組んで座っていた。


「寮で荷物整理をしてたんだけど、どうやらフェリの部屋に忘れ物をしたみたいで。それで、一緒にエルダイン邸に連れて行ってもらおうと思って、待ってたんだ。」


「待ってたって…()()()()早く終わったけど、もっと遅くなる可能性とかもあったのよ?どれだけ待つつもりだったの?」


「フェリとメルヴィルのお茶会が長くなる─って事があるのか?」


「──無いわね。」


「だろう?」


そう言って、リオはしたり顔で笑う。


「で、何を言いたかったのか、聞かせてもらいながら帰ろうか?」


と言われて、私はリオの向かい側の椅子に座り、移動する馬車の中で、さっきのお茶会のやりとりを話した。








エルダイン邸に到着して、リオの手を借りながら馬車から降り邸の方へと歩いていると


「あ、馬車に忘れ物をしたから、フェリは先に行ってて。」


と言われて、リオは馬車に戻り、私は先に邸へと入って行った。





「あぁ、お嬢様。お帰りが遅かったですね。」


「王城に行くと、連絡を入れた筈だけど?」


「そうでしたか?」


邸に入った早々に、妹付きの侍女に捕まった。


「お帰りが遅いので、夕食は要らないと思って、料理長には要らないと伝えてしまいました。なので、今日のお嬢様の夕食は…ありませんよ?」


と、ニヤリと口を歪ませて嗤っている。


ーなるほど。それが言いたくて、態々玄関(ここ)で待っていたって事ねー


もう、溜め息すら出ない。そのまま、私は何の反応もせずに自室へと足を向けようとした時─


「ふん。返事も無しです────」

「へぇ…この邸の侍女は、辺境伯令嬢のフェリシティよりも、身分が上なんだな。」


いつもよりトーンの低い声と、全く笑っていない目をしたリオが私の後ろに立っていた。


「なっ──チェスター様!?」


「お前は、侯爵か公爵のご令嬢なのか?」


「いえ、私は───」


この子は確か、ミルア。子爵家の三女だった筈だ。勿論、リオだって、私より下の身分だと分かって言っているんだろうけど。


「え?違うの?じゃあ、子爵か男爵なのか?その上で、自分が仕えている邸の令嬢に、その態度なのか。」


「わっ私っ─私がお仕えしているのは、アナベル様で──」

「アナベル嬢付きの侍女だから、その姉のフェリシティはどうでもいいと?」


ミルアの顔色がどんどん悪くなり、震え出した手をギュッと握って、私にチラチラと視線を向けて来る。


ーえ?そんなに私を見ても、助けないわよ?ー


自分達は、もっと酷い事を私に言ったりやったりしてるからね?こんな事位で私に助けを求めないで欲しい。


「俺が知ってる頃のエルダインの使用人達は、きちんとしていたが…今では質の悪い者になってしまったんだな。この事は、辺境伯様はご存知なのか?」


「すみません。おそらく…知らないかと。」


リオが後ろに視線を向け、その問に答えたのは兄だった。


ーいつから居たの?と言うか…コレは何?一体何が始まったのかよく分からないけど、私は口を出さない方が…良いのよね?ー


そう思い、私は黙って3人のやり取りを眺めている事にした。


「知らないとは言え、俺はこんな質の悪い使用人の居る所に、預けられていたんだな。」


「質の…悪いとは…言い過ぎではありませんか?私は、アナベル様にはしっかりとお仕えしてます!他の使用人達も、奥様やシリル様には────」

「フェリシティだけに対して悪くなるのか?人を…仕える立場の相手を冷遇しておいて、“しっかりとお仕えしてる”なんてよく言えたもんだな。いっそ、笑えるな。こんな所に、フェリシティを置いておくと…心配になるな。第一王子の婚約者候補の1人でもあるって分かってる?何かあった時…困るのはお前達だよ?これは─現辺境伯様と、次期辺境伯のシリルも同罪だと見做されても仕方無いけど?」


「そう思われても…仕方ありませんね。私は今迄、黙って見過ごしていましたから。」


「それで?これからは…どうするんだ?」


「そう…ですね…。今すぐにこの邸の使用人を精査すると言っても、あくまでも雇い主は母ですし、私も嫡男と言えども、人を動かせる力はまだありませんから…。フェリシティ。」


と、兄が急に私へと視線を向けて名を呼んだ。


「はい。」


「ここに居ても…息が詰まるだけだろう?フェリシティの気持ち次第だが……お前も、寮に入るかい?」




その時初めて、兄シリルの少し困った様な顔だったけど、笑顔を見た。



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