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19 生徒会室


*フェリシティ達が、オルコット邸で話をしている時の生徒会室にて*




*ディラン視点*


「ディラン様が、冬休みの間エルダイン領に居た─と言うのは本当ですの?」


「あぁ、本当ですよ。ずっとエルダインに居ましたよ。」


生徒会室で各々が作業をしている最中に、ティアリーナ様が今思い出したかの様に私に尋ねた。


ー本当に、計算高いよなぁー


今日は、特に急ぎの作業はなかった為、各々都合の良い時間にやって来て、作業が終わった者は帰ると言う流れだった為、生徒会室に全員が集まる迄時間が掛かった。その上、来るのが一番遅かったのがメルヴィルだった。

そのメルヴィルが来て全員が揃い、静かに作業をしていたところでの発言だ。メルヴィルには勿論の事、役員全員の耳に入れたかったんだろう。


「滞在中は、フェリシティ様とも交流があったのかしら?」


「勿論ありましたよ。ね?シリル殿。」


と、私はエルダイン嬢の兄であるシリル殿に話を振る。


「そうですね。私とフェリシティで、ディラン様の観光案内をしましたから、交流はありましたね。」


「そう…シリル様も一緒でしたのね。」


ー笑顔で答えているつもりだろうけど、思い通りに行かなくて、内心は苛ついているだろうなー


ティアリーナ様は、私とエルダイン嬢の2人だけで行動していたと思っていたんだろう。今迄のシリル殿の様子を見ていれば、シリル殿がエルダイン嬢と行動を共にするなんて事は有り得ない事だ。でも、恐らく、それは違う。シリル殿は──


エルダイン嬢を、メルヴィルの婚約者候補から外したいのだ。エルダイン嬢自身も、候補から外れたがっているから。


()()()何も言わないのだ。


理由なんて分からない。この兄妹が、“実は仲良しでした”なんて事もない。事実、邸内でのエルダイン嬢への冷遇は見て見ぬふりをしている。本当に、このシリル=エルダインは、何を考えているのか全く分からない。


ただ、私にとっても、エルダイン嬢がメルヴィルの婚約者候補から外れてくれるのは──



「ディランは、エルダイン領に興味があったのか?」


と、珍しくメルヴィルが喰いついてきた。


「そうですね。避暑として夏には何度か行った事はあったんですけど、冬は行った事がなかったので。それで、丁度シリル殿がエルダイン領に行くと聞いて、案内を頼んで行ったんです。それで、これまた丁度エルダイン嬢も居たので、一緒に観光案内を頼んだんです。寒かったけど、景色は綺麗だし料理は美味しくて…楽しませてもらいました。」


「そうか。確かに……エルダイン領の料理は、王都のモノとは味が違うが…美味しいモノが多いな。」


昔を思い出しているのか、何かを懐かしむように呟くメルヴィル。いや、()()を懐かしんでいるのか?


兎に角、ティアリーナ様の、エルダイン嬢蹴落とし作戦?は上手くいかなかったようだ。


「あ、そう言えば…今日、留学生として来たエスタリオン=チェスターとは、メルヴィルとも知り合いですか?」


どう見ても、彼はエルダイン嬢とオルコット嬢とは仲が良さそうに見えた。


「あぁ…エスタリオンは…幼馴染みだ。」


ーなるほどー


だから、今日のメルヴィルはソワソワしていたのか。

そんなに気になるなら、自分から声を掛ければ良かったのに。きっと、彼はエルダイン嬢に好意を持っている。その彼がどう動くのか。


ーちょっと、調()()()みるかー


そう思いながら、私は作業に取り掛かった。








*ティアリーナ視点*


『そうですね。私とフェリシティで、ディラン様の観光案内をしましたから、交流はありましたね。』


シリルからは、私の予想とは違う言葉が出て来た。

てっきり、ディランはフェリシティと2人きりで行動していたと思っていたのに。



フェリシティ=エルダイン。本当に気に食わない女だ。メルヴィル様の幼馴染みで、婚約者に一番近いと言われていた。筆頭公爵家の令嬢の私を差し置いて。この数年、王妃教育も殆ど受けていないと聞く。どうして候補から外れない?まぁ、今ではメルヴィル様とは口を聞くどころか、目さえ合わないような仲だ。フェリシティが婚約者になる事はないだろうけど。


それでも、まだまだ()()()()


もっと、メルヴィル様のエルダイン嬢に対する嫌悪感を大きくさせたい。確実に、メルヴィル様がフェリシティを婚約者に選ばないように。

私が自由にメルヴィル様に近付けて、自由に動けるのは、この学園生活の間だけ。しかも、私はメルヴィル様とフェリシティよりも1年先に卒業する。だから、その私が卒業する前に、もっとフェリシティを落とさなければ──




『あんなに無表情で居られると、何を話せば良いか分からないし、お茶の味も分からない。』



と言いながらも、未だに少し、メルヴィル様がフェリシティを気にしているのだ。誰も気付いてはいないけど、時々、視線だけでフェリシティを追っている時がある。それがまた、私を苛立たせるのだ。名ばかりの辺境伯に成り下がった、凡庸な娘のくせに。兎に角、全てが気に入らないフェリシティ。



ー新しく来た留学生(幼馴染み)使()()()のかしら?ー



少し、調べさせましょう─そう思いながら、手元にある書類に視線を落とした。



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