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1 プロローグ

「ニコリともしない。一体何を考えているのか分からない。」


「でも、エルダイン嬢が、婚約者候補の筆頭だろう?幼馴染みのようなものだし、昔は仲も良かっただろう?」


「兄であるシリルの前で言うのもなんだけど、あれだけ表情が全く変わらないと…怖いくらいだよ。」


「メルヴィル様、それは言い過ぎでは?フェリシティ様は、才に優れた方で────」




ここは16歳から17歳の2年間通う事が義務化された、王都にある学園の中庭の更に奥にある、普段はあまり人の来ない場所にあるガゼボ。

普段、私─フェリシティ=エルダイン─は、放課後はここで読書などをしたりしている。今日もいつもと同じように、そのガゼボの近くにあるベンチに座り本を読んでいた─のだけど。


そこへ、この国の第一王子であり、この学園の生徒会長であるメルヴィル=コルネリア様が、生徒会役員の生徒達と共にこのガゼボにやって来た。


そして、彼らは私の存在に気付く事なく他愛の無い話をし始め、そのまま第一王子の婚約者候補の話になり、冒頭の会話となった。


私の事をフォロー?したのは、私と同じ婚約者候補の1人─ティアリーナ=グレイソン様。第一王子より一つ年上であり公爵令嬢でもある為、身分的にはティアリーナ様が婚約者に一番相応しいのでは?と思うけど…。それに、私のフォローはしているけど…いつも第一王子の側に居て寄り添っているのはティアリーナ様だ。


そして、そんな会話が繰り広げられているメンバーの中には私の兄であるシリルも居るが、兄が私をフォローする事は無い。



「はぁー…………」


「お嬢様、大丈夫ですか?」


「ココ……」


「すみません。聞くつもりはなかったのですが…聞こえてしまって。」


「良いのよ。気にしないで。()()大丈夫よ。迎えに来てくれたのでしょう?彼等に気付かれる前に…帰りましょう。」


私はそう言って、いつものように迎えに来てくれた私の侍女─ココと一緒にその場から立ち去ろうと歩みを進めた。




「本当に、何故笑わない?何が気に入らないのか…。愛想もふりまけないのか?冷たい人形のようだなと思う。」



ーは?ー



その、第一王子の言葉に、思わず歩みが止まる。


「あー……お嬢様………」


私の横でココが引き攣った顔で私を見ている。


「──ココ…()()()よ…」


と、私はニッコリ笑ってココを見てから、もう一度歩みを進めてその場を後にした。






******



「あら、もう帰って来たの?」


王都にあるいえに帰って来ると、玄関ホールで一番会いたくない義母と会ってしまった。


「只今帰りました。」


挨拶をしながら軽く頭を下げて、そのまま歩みを進めて義母の横を通り過ぎようとすると


「本当に、あなたの何処が良いのかしらね?あなたなんかより、ベルの方がよっぽど殿下に相応しいのに。」


「別に、私が婚約者と決まった訳ではありませんから。」


「ふん。そうね。あなたなんかが選ばれる事は無いわね。」


義母はニヤッと笑ってそう言うと、廊下の奥へと去って行った。





義母であり、現エルダイン辺境伯夫人─ブリジット。

私の実母─ソフィアは10年前に流行り病にかかり、そのまま儚くなってしまった。そして、その喪が明けて暫くすると、父がブリジットを後妻として迎え入れた。それも、兄妹を引き連れて。


父と母が政略結婚だと言う事は知っていた。確かに、2人の間に恋愛感情はなかったが、お互い夫婦としての信頼関係のようなモノはあったようには見えた。


でも─


どうやら、父は私達に隠れてブリジットとも関係を持っていたと言うよりは、母との結婚前からの付き合いだったようで、私よりも一つ年上の兄を生んでいたのだ。そして、妹の方は私の一つ年下だった。


それから、家族5人でエルダインの辺境地で過ごして居たが、兄が王都の学園に通う年齢になった時に、義母と妹も一緒に王都の邸へ住まいを移した。それからの1年は和やかな生活を送れた。


ただ、その1年後、私も学園に通う為に王都の邸で暮らす事になった。

それまで、辺境地で過ごしていた時は、父が居たからだろう。必要以上に優しくされる事はなかったが、特に義母から何かされたりする事もなかった。


しかし─


王都の邸には、父は居ない。何故か、使用人達の顔ぶれも以前とガラリと代わっていた。ただ、ココだけは、私付きの侍女である為、辺境地から一緒に王都にも来てくれていた。


ー何故、使用人達が代わっているの?ー


当初不思議には思ったが、父も了承しているのだろう─と思うと、誰にも訊く事はしなかった。





でも、その理由はココによってすぐに判明した。





「以前ここで働いていた使用人達は、ソフィア様が選んだ者達だったのですが…。ブリジット様はそれが気に入らなかったようで、その者達を解雇して、新たに使用人を雇ったそうです。」



そう。既に、この王都の邸には─




私の味方は居なかったのだ──



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