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青い記憶   作者: お醤油
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2ページめ

その日は夏の始まりみたいな日だった。

茹だるような暑さの中、雲が空高くまでのぼっていた。雷が来そうだな、と英語の授業中に窓の外を見て思った。窓に目を向けた時、黒板を見つめる石田の横顔を見た。小学生の時に比べ、ぐんと背が伸びて、丸みがあった輪郭もシュッとした石田。最近は文化部の女子に少し人気があるみたい。


『な ん だ よ』


少し大人びた石田を盗み見てると、視線を感じたのか石田と目が合う。口パクで文句を言ってくる。

中学に入り、もうすぐ半年が過ぎるが、席替えを行なっていない私のクラスは、苗字の50音順で窓から2列目、前から2列目のこの席は石田の隣の席だ。窓際で前から2列目の石田とはこんな所でも腐れ縁を発揮している。


『か み な り き そ う』


教卓にいる先生が板書をし始めたのを見て、小声でバレないように石田に言う。決してあなたを見ていたわけではありません、窓の外を見ていたのです。と伝えるため、少し眉を寄せて言う。

石田は少し口を尖らせた後、窓に目を向ける。

すると、腕をこちらに伸ばし左手に持ち替えたシャーペンでノートに何かを書き出した。


『よそ見してんじゃねーよ。』

と書かれた文字にムカっとして、石田の方に目を向けると


『ばあか』


と眉根を寄せ、肘をつきながらもニカッと笑う石田と目が合う。

その瞬間、なんだかドキッとして、思わず顔を背けてしまった。

久しぶりに石田の笑った顔を見たからだろうか?

最近は眉根を寄せて不機嫌そうな顔ばかり見ていたから、不意打ちを喰らってしまった。そういえば、コイツ、なんだかんだ女子に人気あったな…とどうでもいいことを考えてしまった。


授業が終わると、ノートを片付けながら石田が声をかけてくる。


「雷、部活に被るかな?俺、今日片付けの当番なんだよな〜」


「いや、ギリ持ちそうだし、外でやるんじゃない?私も女子の片付け当番なんだよね。雷来ないといいなー。部室の鍵、一緒に取りに行く?』


「そうだな。ついでに顧問に一応外練か聞いてみるわ。」


「私も聞いてみよー。じゃあ、職員室行こう」


2人で話しながら職員室に向かう。小学生の頃だったら、こんな風に話してなくて、石田に先にちょっかいかけられて、怒ってそれを追いかけてたが、石田が大人になったのか?最近は同じ部活の腐れ縁のいい友人みたいな関係になっている。


部活は結局外で練習になり、練習時間が終わりコート整備となった。男女別でテニスコートを使っているが、ネットをしまう所は同じだ。倉庫にネットをしまっていると髪を濡らした石田が倉庫に入ってくる。


「えっ降ってきた?」


「降ってきたどころじゃねーよ!急にだよ!夕立が凄すぎて、少し待ったほうが良い。部室の方まで行ったらずぶ濡れになるぞ。」


石田をよく見るとジャージもびしょ濡れ、髪の先からポタポタと雫が落ちる。


「ちょっと汗臭いかもだけど、拭いたほうが良いよ。風邪ひいちゃう。」


とタオルを頭に被せようとすると、後ろに一歩石田が下がる。なんで下がるんだ?と困惑した顔で見上げると、また眉根を寄せている。


「え、なに?臭くてやだ?」


「ちげーよ!」


と言いながらタオルを受け取って頭を拭きだした。


「飯田は?濡れてない?」


「うん、倉庫にネットしまってたから降ってきたのも気づかなかったよ」



「そっか、良かった。タオルサンキューな。」


貸したタオルを頭にかけたまま石田がこちらを見て言う。その時、


ゴロゴロ…ゴロゴロ…ドッシャーーーーン!


「「うわっ!!!」」


突然の大きな音に思わず石田の服を掴む。

濡れた服の下に暖かい体を感じて少し怯んで、石田の顔を見る。

真っ赤だ。薄暗いからハッキリとは分からないけど、真っ赤だ。

えっ?なんで?

どうしたの?と、声に出そうとすると上からタオルに包まれる。


「うわっぷ」


「怖いなら、耳塞いどけ」


タオルごと下を向かされて、石田の顔は見えなくなった。塞がれた耳からドキドキと音がして、それが石田の音か、私の音か分からなくなっていた。


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