才能開花
日が落ちて野宿を考えていたが、村を見つけてリアナは一晩だけでも置いてほしいと頼む
リアナは王都に向けて街道を歩き続けたが、日が落ちてきた
ことで野宿をすることに決めた。
幸いにも街道沿いには小さな村があり、そこなら一晩泊めてくれるかもしれないと考えたからだ。
だがいざ村の門の前に立つと緊張してきた。
もし自分がエルフだとバレたら追い返されてしまうのではないか。
そう考えると怖くてなかなか足を踏み出せない。しかしいつまでもここで突っ立っているわけにもいかない。
意を決して一歩踏み出したその時、門の扉が開かれた。
中からは一人の老人が出てくる。
「こんな時間に何用じゃ?」
「えっと、私は旅をしている者です。今夜一晩だけでもいいのでここに泊めて頂けないでしょうか?」
リアナは必死になってお願いする。
「ほっほ、若いのに大した度胸だのう。まあ入りなさい」
老人は快く受け入れてくれたようだ。よかった。
安堵しながらリアナは村の中に入っていく。
村は小さく宿屋などはなかったが、代わりに民家の一室を貸してもらえることになった。
「すまないねえ。何もないところだけどゆっくりしていきなさい」
老人はそう言って部屋から出て行った。
一人になったところでようやく一息つくことができた。
今日は疲れたしもう寝ようかと思ったその時、部屋の外から物音が聞こえてきた。
何かと思い窓から外の様子を伺ってみると、そこには数人の男たちがいた。
彼らは皆一様に剣や槍といった武器を携えており、中には鎧を着た者もいる。
その姿を見た瞬間、リアナは自分の背筋が凍り付くような感覚を覚えた。
彼らが盗賊だということはすぐに分かった。
だが何故?ここは辺境の小さな村だ。ここを襲うメリットなんて無いはずなのに……! とにかくこのままではまずい。何とかして逃げなければ。
焦燥感に駆られながらも、どうにか見つからないうちに逃げる方法を考える。
そうだ。魔法を使えば……! リアナは魔法が得意だった。特に回復系の魔法を得意としていて、母もよく褒めてくれていた。
これならば彼らから身を隠すことができるはずだ。
そう考えたリアナは早速呪文を唱え始める。
「♪~~~~♪~~~♪」
歌声と共に白い光が彼女の体を包み込む。
よし、成功だ。これできっと見つからずにすむだろう。
安心したリアナだったが、その考えは次の瞬間に吹き飛んだ。
窓の外を見ると、何故か先程の男たちが全員地面に倒れ伏していたのだ。
いったい何が起こったというのか。リアナには全く理解できなかった。
すると今度は突然ドアが開け放たれ、そこから先ほどの老人が現れた。
彼は倒れた男たちを見てため息をつくと、リアナの方を向いて話しかけてきた。
「お前さん、今何をしたんじゃ?まさかとは思うがあいつらに魔法でもかけたのか?」
その質問にどう答えればいいか分からず戸惑っていると、老人は続けて言った。
「もしそうなら悪いことは言わん。すぐにその力を捨てるんだな」
「ど、どうしてですか?私はただ隠れようとしただけで……」
「確かに普通に隠れようとすればそれで十分じゃったろう。だが今の力は違う。あれだけの人数をまとめて眠らせるほど強力な眠りの魔法なんぞ聞いたことがないわい」
「それは私も知りません……。ただ歌を歌ったら急に力が湧いてきて、気づいたときにはみんな倒れてました」
「歌?そういえばさっき歌っておったが、それが原因かの?」
「はい。母がよく歌ってくれていたのですが、それが関係あるのでしょうか?」
「ふむ、おそらく間違いないだろう。エルフには稀に特殊な能力を持つ者が生まれてくることがあるらしいからのう。お前さんのもその類のものかもしれぬ」
「そうなんですね。じゃあこの力で人助けとかできるのかな