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灰
少し感じた 灰達の気配
それは多分春が来るから
少し思う 灰達のこと
それも多分春が来るから
あと何回 春を迎えるのだろう
あと何回 灰を増やせるのだろう
幾度も僕は斃れ
燃えて朽ちて遺灰になって
そうして灰が積もってできた層が僕をまたかたちづくっていく
楽じゃない死に方もしたな
あの頃から無力なのは変わらないけれど
空が藍色から青色に変わっていくのは悪くない
もう今生の別れとは思わないよ
君はただ春先に灰になった
殻そのものだったあいつ
授業サボって写真撮ってたあの人
日々をいなす術を知らなかったあの子
惨めな場所で安らいでた彼
顔では決して泣かなかった彼女
灰達が側にいるから、座礁した世界を少し歩けそうな気がした
良いことだらけでもないだろうけれど
きっと悪いことだらけでもないだろう
灰と共に
過去と共に