2 己を喰い合う原色の怪物
「簡単に言うと、君のガイドに頼まれたんだよね」
キリストぶっちゃけおじさん、略してキリスト()おじさんが言う。
「君、トートタロット買ってきたでしょ?筋がいいね☆
で、トートタロットで生命の樹のパスワークしたいって思ったじゃない?
それを夢のなかで先行してやってほしいって頼まれたんだ」
話がよくわからない。
「理解できなくていいよ。
そういうオカルトとか秘術とか魔術へのあこがれ。
そのなかには、人間の真に追求すべきものが隠されている。
きみは、もっと現実世界でそれを探求していいし、そうしたほうが幸福なんだよ。
でも、その前に夢でも『予習』をしていたほうがいいんだよね。
そのために僕が駆り出されたと言うわけさ」
こんな感じでキリスト()おじさんが説明してくれたことに、要はこれから「トートタロットを使ったパスワーク」を実際にするのだという。夢のなかで。
「あまり時間がないので駆け足だし、いちいち起きたことの説明はしないよ」
しかしなんでまた自称キリスト()が……。
「キリストって、実はそんなに珍しいものじゃないよ。
君を守ってくれる目に見えない守護存在……それが神でも天使でも妖精でも神獣でもなんでもいいけど。
そのなかの一つとして僕がいるという感じだね☆」
それにしてはノリが軽い。威厳に満ちていない。
「威厳うんぬんは、教会関係者のブランド戦略だね☆」
聞いちゃいけないことを聞いた。
「まあ早速、最初のカードにいくよー☆」
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20審判。
これが私たちが使う、この世界探索の「門」だ。
スルッとすんなり入れる。
「本来は『21世界(宇宙)』のカードが門になるんだけどね……」
そういって、隣の門の扉をあけて、チラッと中を見させてくれる。
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そこは化け物?キメラ?ガンのようにただただ増殖して細胞が崩れとけおちた原色の有機体が、自分も他人もわけもわからずズルズル食い合う世界。
「永劫」という文字が頭のなかに浮かぶ。永劫の地獄。想像できる地獄が、一億倍ほど煮詰まって濃くなって悪くしたような世界。吐き気がする。
色あざやかな有機体は、共食いなのか、それとも自分を食っているのか。見える範囲の空間に隙間なくビッチリ寄せ合った腐肉同士で埋め尽くされている……
「はーいはいはい、ストーーーップ☆
こんな感じで、まあ君にはちょっと早いんだよね☆
なのでここは後回し。次にいこう!」
なんか、ダンテの『神曲』という本を思い出した。
「そんなノリでもいいかもね☆じゃあ次に行こう!」
とりあえず「21世界(宇宙)」にはしばらく近づかないことにする。