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14 吊された男とキリスト

「さて、最後に12吊された男にいこう」


そうキリスト()おじさんが告げると、もう最後か……という感慨深い気持ちに襲われながら空を飛んだ。


---


12吊された男。


門をくぐると、カードに描かれている蛇とバチッと目が合う。


蛇を見ていると頭がぐちゃぐちゃになる。何だかおかしくなりそうな、奇妙な感覚。


「大丈夫。その感覚を、悪いものと思わないで」


キリスト()おじさんが優しく声をかけてくる。


その声を聞くと、蛇が「知恵を授けよう」と言うのが聞こえた。


そうして、スーーーーっと頭がスッキリする。



---


「これで君は、夢から目覚めても今までにくらべて直感とかインスピレーションを得られやすくなったよ」


今まで見たこともないような優しい微笑みで、キリスト()おじさんが喋る。


その姿は、()とつけたくない、本物のキリストのようだ。



「そろそろ時間だ。


これで夢の中の探索はおしまい。


でも、もし必要だったらいつでも呼んでほしい。


私はいつでも、君の、君たちの仲間だ。協力するよ」


自分の周囲が、スーーーっと白い霧になっていく。霞んでいく。


「キリストおじさん!」叫ぶ私の頬には気づかないうちに涙がつたっていた。


「今度はいつ会えるの?」


「……この『12吊された男』は、私と君たちをつなげる経路のひとつだ。


夢のなかではなく、現実世界で、私の協力がほしくなったら、このカードを思い出してね」


いつの間にか手中に、トートタロットの「12吊された男」が存在していた。


絵柄の男の手足は、釘に打ち付けられている。


そう、イエス・キリスト。彼のように。



「私は、いつでも一緒だ。


東とか西とか、宗教とか関係ない。


我々は兄弟であり、我々は仲間だ。


兄が、先輩が、弟や妹を、後輩たちを助けるのは当然ではないか。


だから、いつでも呼んでほしい。甘えてほしい。頼ってほしい。


忘れないでほしい。夢から覚めても、私は、いつでも一緒だということを」



せつなげで、優しい慈愛にみちた笑顔を最後に、すべては消え去った。




――そして私は夢から覚めて、忘れないうちにこの顛末を残しておく。


夢の世界の、生命の樹の、短い探索記録を。



<終>

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