離反者の情報
「培養食材の効率的生成法?」
『そのままです、理論上はコストが2%前後下がるらしいです』
うへぇ……今でも相当極まっている技術を、さらに2%安く済ませるって、ものすごいじゃんか……出身があそこじゃなきゃ英雄扱いじゃね?
えーと次が……。
「上級身体強化措置の革新的アプローチ?」
『コストは非常に上がりますが強化数値で言うと5%程上がるそうです』
いやいや、だから、今現在の皇国の技術だって頭のいい人が一生懸命作り上げた物のはずで……。
お金持ちなら多少のコストなんて問題無く払うだろう? 5%はでけーっての。
「ちなみにサヨが押さえている身体強化措置技術に比べると?」
『まだまだ圧倒的に私の方が上ですね、ですが……』
「何か問題あるのか?」
『私の持つ技術は過去の遺産ですので、これ以上進歩致しません、今は良いですが……』
「ゴクリッ……そのうち抜かされると?」
『はい、人類が文明を保ち常に進歩していくのならば……おおよそ100万年ほど先にはもしかしたら?』
……あ、はい。
「じゃ大丈夫だな、知的生命体ってのは必ずどこかでアホをやって技術が途切れるからよ」
やっぱ旧銀河帝国の遺産技術はおかしいわ、今の人類でも多少似た様な物は出来れども、出力やコストや規模の大きさでまったく追いつけていないんだよなぁ……。
人類技術のブレイクスルーとやらを、雨後の筍のごとく経験しないと追いつけない気がする。
まぁいいやデータの続きを読もう、えっと……。
「資源精製技術の向上?」
『そのままです、今までコスト的に見逃されていた資源を含む小天体等でも、その技術が普及したら利益が出る採掘が可能になります』
わぉ……やっぱ人は稼いで飯を食わないといけないからさ、例え衛星に資源が眠っていても利益とコストが見合わなければ手を出さないんだよね。
これも地味にすげぇ技術だな
さて、次が……。
「資源用植物の改良?」
『従来の物よりさらに効率の良い植物に遺伝子改良されております、主に糸を作る材料資源が低コストで得られる様になります』
まじかよ、服でも何でも糸ってのは知的生命体のうち、かなりの部分が使用しているものだ。
従来品って事は化学繊維用の資源が手に入る奴の改良って意味だよなこれ。
ちょい昔の地球の知識で言うのなら、石油を吐き出す植物の品種改良版か?
んで次が……。
「惑星改造における新たな方法論」
『皇国の方でその方法論を検証すべく実験を開始したそうです、今までコスト的に見合わなかった惑星が居住可能惑星になる可能性があるそうです、まぁ結果が出るまでは数十年以上かかるはずなのですが……』
サヨが途中で言葉を止めたので俺は先を促す。
「ですが?」
『すでに私の領域に取り込んだおやつ惑星を使い、時間加速を使って検証済みです、今現在の皇国の版図内で移住可能惑星が7%程増える余地が出来ました、まぁそもそも私の力なら余裕で移住可能惑星には出来てしまう程度の惑星でしたが、今までの皇国には無かった発想と技術でしたね』
ぶっ! ついつい吹き出してしまった……やべぇ話だ……。
今現在の人類がどれだけ苦労をして人の住める場所を増やしていると思ってるんだよ……宇宙に巨大な人工的な居住地を作成しているのだって、人の住める惑星の数が足りないからで……。
俺はまだまだ様々な情報が連なっている、空間投影モニター上に映るデータを読むのを一旦辞めた。
いつもの会議室、俺とサヨしかいないそこには、しばし沈黙が漂う。
……。
……。
「……なぁ、この、えーと……スターデさんだったか、ドリドリ団の研究者やばくねぇ?」
『公的な研究機関にいたら、今頃は貴族にでも叙されていますね』
「だよなぁ……俺がさっきまであげた研究内容だけでもアリアード皇国の国力がどれだけ上がるか見当がつかん」
『皇国側の権利問題で、すぐには使えない技術が多いそうですけども』
そうか……はぁ……知的生命体ってのは何処もかしこも……ま、そういう物か……。
「まだまだ技術の先が見えるってだけでも価値があるわな、これは確かに恩赦もしたくなるよな」
『シマ様の監視下で新たな技術が生まれる事も期待されていますね』
一歩間違えば爆弾じゃんかこの人……。
「ドリドリ団でも持て余してそうだな……」
『自分達より各方面に万能で頭の良い研究者ですし、かといって上に立つ性格では無いそうで……ほぼ全ての研究結果をドリドリ団の他の研究者に奪われていたみたいです、まぁ……本人はまったく気にせず自分の研究に予算が出ているのなら問題はなかったそうなのですが……』
「扱う人間によって歴史が変わる様な天才だよなそれ……まぁ面接はもう予定を組んじゃったけど、倫理観とか少しでもある人だったらいいなぁ……」
『研究資料を読む限りでは無関係の知的生命体を無理やり実験体として使う様な事はしていなかったみたいです』
「赤の他人ならどうなってもいいや的な感じの人ではないって事?」
『ですかね、ドリドリ団っぽくは無いですね』
「……ちなみに関係のある知的生命体にはどうなんだ」
わざわざサヨが『無関係の』と強調をした部分がすごく気に成った。
『自身を害しに来る暗殺者とかは利用しているみたいです』
「あ……うん……それってもしかして、わざと自分に隙があるように見せてたりしてない? 大丈夫?」
てーか状況的にその暗殺者ってドリドリ団内部の仕業だよなぁ……。
『どうなんでしょうか? そもそも人を害す存在は人足り得るのでしょうか?』
えっと……。
「……よし、この話は終わり!」
『畏まりました、続きを読みますか?』
「ああそうだなぁ」
俺はドリドリ団からの離脱者である、スターデさんの提出した研究内容に関してのデータを見る……。
まだまだずらっとタイトルが並んでいるね……どれだけ幅広い研究してんだかこの人は。
「細かい分野で専門用語が並んでるのは無理だわ、何かサヨが面白いと思うものがあれば教えてくれ」
『ふむ、そうですねぇ……シマ様が面白いと思う物ですか……』
サヨが何やら考えているが。
結果は一秒も必要なく出ているはずなのに、こいつはこう言う演技をしっかりと挟んで来る。
人らしさというのを大事にしているのだろうし、俺もそれに付き合う事にまったく問題は無い。
「細かい技術的な物だけならこれで終わりにするぞ?」
『いえ、まずは『視覚情報から来る生体反応の実証』とか『空気の振動による種族的嗜好』とか、その辺の論文はシマ様も興味が出るかもしれません』
「なんかお堅いタイトルだな、内容をかみ砕いて教えてくれよサヨ」
『畏まりましたシマ様、ではまずこれを』
そう言ってサヨは俺の目の前に新たな空間投影モニターを出したのだが。
そこに映し出された画像は……俺の秘密なムフフなアーカイブの中にも無い様な逸品画像達であった。
「いきなり何を見せるんだよ! ……これ売ってる物なの? 買うから後で俺の秘密なムフフアーカイブデータに加えておいてくれる?」
『これは『視覚情報から来る生体反応の実証』論文に付随している画像データでして、今これを見たシマ様の脈拍や脳波等を論文のデータに照らし合わせたりしたりすれば色々と判る事がありまして……まぁかみ砕いて言うと『生命体をいかにエッチィ気持ちにさせるかの実証データ』ですね』
……。
「あのお堅そうなタイトルのくせに内容はそれなのかよ……少し前の人類に変革を為す様な研究と同列に並べるなよ……じゃその次の空気の振動がどうのってのは?」
たぶん碌な内容じゃないんだろうなーと思いながらサヨに聞いてみると。
サヨは自分の席から立ち上がり俺に近づいて来ると、そして……そっと俺の耳元に顔を寄せて来ると……××××××~~×××××と囁いた。
その瞬間俺の背中にゾクゾクッっとした物が這いまわり、自分の椅子の上でピョコンッと一瞬体が跳ねてしまった。
「おまっ! 真面目に仕事をしている時に何を言い出すんだよ! しかも耳元で囁きながらとか……ゾクッっと来ちゃったじゃないか……あーいうのは……まぁ……二人でのそういう時間の時にやろうな?」
『いえ、今のは『空気の振動による種族的嗜好』を踏まえてシマ様の好きそうな内容で実験をした物です、実際に体験した方が判りやすかったでしょう?』
……。
「なんだろう、スターデという研究者の事が益々判らなくなって来たよ俺は……」
『そうでしょうか? シマ様に対する有効な手段をいくつも手に入る研究内容を提供してくれた訳ですし、私の彼女に対する好感度はちょこっと上がりましたけどね、是非これからも似た様な研究をして頂きたいです』
どうやらスターデさんとやらの提供した様々な研究内容によって、サヨさんがレベルアップしてしまった様だ……。
なんというか……これからの夫婦生活が楽しみでもあり、何が出て来るかが恐怖でもある。
願わくば……。
「平和な日々が続きます様に……」
『……? 急にどうしたんですかシマ様?』
そんな事を呟いた俺を、サヨはすっごい不思議そうな表情で窺って来るのであった。
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