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メイドとの休日

「ん? ごめん、もう一回言って貰っていいか? サヨ?」


『ですので、例のドリドリ団の離反者が恩赦を得ると共に、シマ様の治める学園都市に通いたいと発言しているそうです』


 なんじゃそりゃ……。


「あ、いてっ!」


「あ、申し訳ございませんご主人様、大丈夫ですか?」


 俺を覗き込む様に体を前に倒して謝罪をして来たのは、白い翼を背中に生やした有翼人で金髪碧眼のメイド長であるエンゼだ。


 天使の様に見えるメイドさんだな、いまはそんな彼女の膝に頭を乗せて耳掃除をして貰っている所だ。



 場所はいつもの俺の部屋……ではなくて、恒星共々配置した観光惑星の例の温泉旅館の一室での話だ。


 お金持ちもボチボチ観光に来ているからね、正式稼働を始めた旅館の視察兼お休みという感じでメイド長のエンゼと二人で来ていたんだ。

 勿論見えない所に護衛はいると思うんだけど、見えないので人数には入れない。


 俺は耳を上にしていた頭をグルリと上を向く様な体勢の膝枕へと変えると、こちらを覗き込んでいるエンゼと視線を合わせつつ。


「こんな簡単な仕事も出来んとは……これはもうお仕置きが必要だなメイド長よ」


「申し訳ありませんご主人様、謹んで罰をお受けします」


 申し訳そうなエンゼの言葉とは裏腹に、彼女の背中の翼はバサバサと軽く動いている……あれはすごく嬉しい時の動きだな。



「私達は何を見せられているのだろうねサヨさん……」

『耳掃除は専用の美容師がやっているので必要が無い行為なのですが、あれがロールプレイという奴ですね』


「シマ君ってばすごく嬉しそうだね」

『シマ様の表情が嬉しさを隠せなさ過ぎて、叱る時の演技に減点をつけたい所ですね』



 すっごい楽しいからね! 笑顔が漏れちゃうのは仕方ないの!


 てか一旦中断だな、しょうがないな……俺はムクリと体を起こすとテーブル側の座布団に座り。


「サヨとクレアから報告を聞くから、一旦終わりなエンゼ」


 俺がそうメイド服姿のエンゼに声を掛けると、彼女はシュンッっとして顔を伏せてしまい、背中の翼も何やら元気が無くなった。


「それでは、あの……お仕置きは……『メイドとご主人様の秘密の休暇旅行』も終わりですか?」


 そう言いながらエンゼは、そっと伏せていた顔をあげ俺を悲しそうに見て来る、何言ってんだか。


「後で続きはやるから安心……いやお仕置きを覚悟しておけよメイド長エンゼ!」


「あ……はい! では私はお茶を貰ってきますので失礼しますシマ様、サヨ様とクレア様も少々お待ち下さい」


 エンゼはテーブル周りの座布団の設置等を素早く済ませると、部屋を出ていった、その背中の羽を嬉しそうにパサパサと細かく羽ばたかせながらな。



 ……。



 ……。



 畳敷きの部屋にある長方形のテーブル、俺の向い側に座った二人が。



『休暇を満喫している様で何よりですシマ様』

「むー、シマ君、私がやった時より生き生きしている気がするんですけどぉ?」


「気のせいだって、クレアとのお茶を零しちゃったメイド事件も大変満喫させて貰ったってば、新人メイド風のクレアはすっごい可愛かったぜ……またお願いします」


「あ……うん、よろしくお願いしますシマ君、えへへ」


『……コホンッ、それでシマ様、先程の件なのですが、いかがなさいますか?』


 おっと、今度はクレアとイチャイチャしてしまいそうになった。

 二人は仕事の話を持ってきたんだっけ、えっと……あれ?


「恩赦なんてそう簡単に出るものか? だって相手はドリドリ団だろ?」


 かつての内乱で物凄い数の犠牲者を出した上に、今でも催眠暗示を使ったインフラ攻撃を仕掛けて来ている奴等の仲間なんだろう?


『それがですね、離反者……女性なのですが、彼女は自分の研究時の行動を全て記録しており、それを調べた皇国が言うには……』

「ずーーーーーっと、ただただ研究をしていた人っぽいんだよね、世情の事には一切興味なく」


 うへ……。


「ある意味研究者っぽい話ではあるな……兵器を開発したとして、罪に問うべきはそれを実際に使った者に、という感じか?」


『そうですね、こちらにも彼女の情報は渡されているのですが、研究が出来れば幸せという人種っぽいですので』

「シマ君がオープンキャンパスで募集した時の条件をドリドリ団も掴んでいたみたいで、その用意されている機器や予算の額を聞いて、ドリドリ団から抜ける事を選んだそうよ」


「えっと……時期的にニナさんだけを引っかけるつもりで出した募集の条件だな?」


『そうなりますねシマ様、元々学園都市は、シマ様のお見合いを兼ねつつ将来的な研究者を集める為の物でしたので、使われている機器やら何やら、学生相手の研究室といえど計上される予算の額は他所と比べても桁が違いましたので』

「逃げ隠れしているドリドリ団の元だと満足に研究出来なくなったって事なのかな? ……まぁ事情は分かったけど、とはいえそんな簡単に恩赦は出ないよなぁ?」



『ドリドリ団の情報や自身の研究内容を素直に提出、しかもドリシティの移動やステルスをしている際の弱点やら見つけ方まで、てんこ盛りの情報提供をした様です』

「皇国軍の上層部は、その情報にすっごい喜んだみたいだよシマ君」



「なるほど、皇国軍にはぜひとも頑張ってドリドリ団を潰して欲しいな」


『ですね、血を吸われたからとて森に逃げた蚊を追いかける義理は私共にありませんので』

「ドリドリ団は虫扱いなんだね……まいいや、それでその離反者の女性に会うかどうかをシマ君に聞きに来た訳だけど」



 ああ、学園都市に通いたいってんなら、一度会わないといけないよな。


「そうだな、一度会っておこうと思うけども、完全に罪を許されているって訳じゃないんだろう?」


『学園都市に受け入れるのならば、監視をこちらで請け負う事になりますね』

「最低でも数百年単位で監視が解かれる事は無い生活になるだろうね、うちで研究の続きをしたとしても、その精査もうちで請け負う事になると思うよシマ君」


 だよなぁ……皇国軍の奴等、面倒くさそうな厄介事をうちに丸投げしてきやがったな……。


 そして俺らが皇国に報告する研究内容の美味しい所だけ貰おうってか……いや、そこまでは考えすぎか?



 しかしまぁ、ドリドリ団の元研究者ねぇ……。


「いいぞ、一度会ってみよう、その人のデータを皇国軍から受け取ってんだろ? 後で見せてくれよ」


『畏まりました、ではそのように』

「シマ君、監視はうちの側付きからも出す事になるからよろしくね~、近衛兵が監視として側に付くって事も必要だからさ」


 そうなるか……俺の嫁や側付きになったとはいえ、今だに近衛だったりするからなぁ……予備役みたいな扱いらしいけど。


「了解だ」


 話が終わったのかサヨとクレアが座布団から立ち上がった時に、丁度メイド長のエンゼがお茶をお盆に乗せて帰って来た、タイミングが少しずれちゃったな……それとも……。


「えっとお茶の用意をしたのですが……もうお帰りでしょうか?」


『ええ、今日はシマ様の休暇ですので私共は下がる事にします』

「ごめんねエンゼさん、お茶はまた今度、じゃシマ君ばいばい」


「ああ、所でよサヨにクレア」


 別れの挨拶に相槌をしつつ、サヨとクレアに声を掛ける俺だ。


『どうしましたシマ様』

「聞き忘れとかあるのかな、シマ君?」


「それほど緊急な要件では無いのだし、データ送信で良さそうな物だが、わざわざ休暇中の部屋に押し掛けたのは何でだ?」


 今すぐ返事が必要な内容って訳じゃなかったしな。


『……』

「……」


「……」


『クレアさんが『シマ君とエンゼさんがどんなロールプレイをするのか直で見たい』と申しましたので』

「あ! サヨさんずるっこいよ! サヨさんだって生で見たがってたじゃないの!」


「ほほーーーーーーう?」


 俺が少し長めにそう言ってやると。


『これから会議があるので失礼しますシマ様』

「そ、そうだったねサヨさん! じゃまた後でねシマ君~」


 二人は部屋から逃げていった。


 まったくもうあの二人は……仲が良いのはいいのだが、どうにもクレアがサヨに毒されつつある気がするな。


 まぁ可愛い嫁だから許すんだけどさ。




 サヨとクレアが居なくなったのでエンゼが近付いて来た。


「遅くなって申し訳ありませんご主人様」


 エンゼが俺にお茶を出しながらそう言っているが、その表情は……。


「お客が帰る段になってから茶を持って来るとはな……」


「申し訳ありません、お許し下さいご主人様」


 申し訳ないと言いながら、エンゼの顔は何かをすごく期待しているのが判る。

 なので俺はその期待に応えるべく。


「これはお仕置きの追加だな、さきほどのと加えて倍だ!」


「ああぁぁ……これも私の不徳の致すところです、甘んじて罰を受けますねご主人様」


 エンゼは、嬉しそうに背中の翼をパタパタと細かく動かしながらそう言って来るのであった。


 やっぱりわざと遅れたのかよ……最高のタイミングだなエンゼ!


 後で花丸をあげちゃおう。








 あ、勿論休暇じゃない時にエンゼはこんな失敗しないからね? 今日はほら、休暇中だから。






お読みいただき、ありがとうございます。


そして誤字脱字報告もありがとうございます、すっごい助かっています。




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― 新着の感想 ―
[一言]  研究バカならマッドが相場だけど、データ取りたいからサクラの根っこを少しくれとか言いそう俺なら言うなぁ生体細胞を調べるのに自身の・・・ゲフンゲフン。
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