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あなたが何事もなくお家に帰れますように


 憂鬱な月曜日、いきたくない学校。

 授業費を溝に捨てているのだと考えると更に気が重くなる。それでも、どうしたって大学と同じ方面の電車には乗れず、私は成先空港方面の電車を待っていた。


 咲良駅への電車に乗って広い公園にでも行こう。そこで時間を潰して家に帰ればいい。さぼりの予定をたてていた。

 「スミマセン」


 片言の日本語であーとかう~とか困った様子のお兄さんがそこにはいた。ソーダカラーのキャリーケースに手をおいて携帯の画面を差し出してくる。「成先空港に行きたいです」の文字がおどる画面とお兄さんの「なる、なー、なるさ、」みたいな言葉で私は理解した。


 「成先空港に行きたいんですか?」

 

 こっくりとうなずくお兄さん。

 韓国語なのか中国語なのか…私は言語はさっぱりダメダメな人間なのでわからないけどお兄さんは自国の言葉で一生懸命、私になんて言えばいいのか考えている。私もどう伝えればいいのかわからなくて乗換案内のアプリを開いた。言語の壁って難しい。私は日本語ばかりの自分のスマホに悩む。成先空港行き、11時45分。乗り換え無し、第2ターミナルについて、歩いて12分で成先空港。これを伝えればいいってわかってるけどどうしたらいいのだろう。とにかく画面を差し出すと、お兄さんはやっぱりうーとかなんとかって呟きながら私が差し出したみたいな画面を開いた。

 やっぱり言葉が違うから全然わからなかったけど、お兄さんは私の画面と見比べながらタップしたり消したりして、うんうんとうなずく。


 「だいじょうぶですか?だいじょうぶ?」

 何度か似たようなやり取りを繰り返して、お兄さんはこくこくとうなずくと「だいじょうぶ、だいじょうぶ!」と答えてくれた。いやほんとに大丈夫かな〜〜〜!!!

 なんだかとっても申し訳ない気持ちになってくる。だって私が英語とかわかったらもうちょっと説明ちゃんとできたかもしれないし……。咲良行きの電車が来てしまって慌てて乗る私にお兄さんはひらりと手を降ってくれて、私はペコリとおじぎをした。


 あのお兄さんが無事に成先空港にたどり着けますように。そしてどうか無事にお家に帰えることができますように。

 神社にいってお願いもしてこよう。それでその後は、私もちゃんと大学に行かなきゃ。




 「お兄さんが何事もなくお家に帰れますように!」

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