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35/89

―35― 交渉

「おはようございます、アベルくん」


 教室に入るとミレイアが笑顔で出迎える。

 昨日はずっと怖い顔をしていたのにな。


「どっちがホントのお前なんだ?」


 思わず聞いてみる。


「えっと、なんの話でしょうか?」


 と、ミレイアは言いつつ、さり気なくスネを蹴ってくる。

 普通に痛い。

 目でミレイアに抗議をすると、すごい睨み返してきた。余計なことを喋るな、とでも言っているんだろう。


「その、アベルくんに相談したいことがありまして、チーム戦のことなんですけど」

「ああ、そういえばそんなのあったな」


 異端のことばかり考えていて、そんなことあったの正直忘れていた。


「朝、二人に声をかけたんですが、やっぱり協力的になってくれなくて」

「ぶっちゃけお前一人が戦えば、負けることはないんじゃないか」


 昨日の異端の力に敵うやつなんてこの学院にはいないだろ。


「アベルくん、それ以上変なこと言ったら怒ります」


 ミレイアの表情から笑顔が消えていた。

 すでに、怒っているだろ、というツッコミは野暮だろうから言わないでおく。つい、思ったことが口をついてでただけなのに。


「すまん」

「ホント気をつけてくださいね」


 許してもらえたのか、ミレイアは快活な笑顔に戻った。


「それで、協力してもらうにはどうしたらいいですかね?」

「それは、強硬手段とか?」





 昼休み。

 まず、長髪の男の方に向かった。

 こっちのほうが攻略が楽に思えたからだ。


「こいつの名前なんだっけ?」

「ビクトル・フォルネーゼくんですよ」


 ミレイアに教えてもらう。

 ああ、そういえばそんな名前だったな。

 そのビクトルといえば、俺の存在に気がつくと「チッ」と舌打ちをしてきた。

 やはり歓迎されていないみたいだ。


「不満かもしれないがチームでやっていく以上最低限の意思疎通をしてくれないと困るんだが」


 そう言うと、ビクトルの眉がピクリと動く。

 一応、こっちの話は聞こえているらしい。

 しかし、どうしたものか? このまま相手が黙ったままだと、なにも進まない。

 今まで学校に通い、コミュニケーション能力を培っていた人なら、この状況でもうまく交渉することで事態を改善することができるのかもしれないが、あいにく俺は元引きこもりだ。

 いい方法なんて思いつかない。

 よし、強硬手段をとるか。


「そっちがその気なら、こっちにもやりようはある」

「アベルくん、なにをする気ですか?」


 ミレイアが不安そうな目をする。

「〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉」


 容赦なくビクトルに向かって魔術を放った。


「ちょ、なにをしているんですか!?」


 ミレイアの絶叫が響いたが気にしない。


「おい、てめぇなにしやがる……ッ」


氷の槍(フィエロ・ランザ)〉が直撃したんだろう。血だらけになった左腕を抱えながらビクトルが噛み付く。


「やっと口を開いてくれたな」

「てめぇ殺すぞ」

「いいぞ相手してやるよ」

「ちょ、ちょっと待ってください!?」


 せっかくやる気になったというのに、それに水を差すかのようにミレイアがそう叫んだ。


「どういうつもりなのか、もっと説明してください!」

「言うことを聞いてくれないなら、力でねじ伏せて言うことを聞かせる。交渉の基本だろ」

「そんなの聞いたことありませんよ!」


 ミレイアはなにかが不満なようで、抗議するが、


「お前だって、昨日俺のこと殺そうとしたのに、なにいい子ぶってんだよ」


 と、周りには聞こえないよう配慮した声量で俺はそう言った。

 途端、ミレイアは血走った目を見開き、一瞬だけ怖い顔をした。けど、俺の言っていることに一理あると思ったのか、これ以上抗議したら自分が墓穴を掘ることになりそうだと判断したのか、詳細まではわからないが、ミレイアは元の表情に戻って、こう口にした。


「やるのはいいですが、せめて外でやりましょう」


 見ると、教室中にいた生徒たちが俺たちを凝視していた。

 確かに、外でやりあったほうがよさそうだ。



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婚約者を殺された冤罪で、ダンジョン奥地に投獄された俺は、ヤンデレ勇者がくれた〈セーブ&リセット〉のスキルで何度やり直してでも、このダンジョンを攻略して、村人全員に復讐することを誓う


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魔力ゼロの最強魔術師〜やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?〜

魔力ゼロ
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