その4
今日の学校はひさしぶりの4時間授業。
だから、時間がとっても早く過ぎた。
……もしかしたら、隣の席がいろはちゃんだから、楽しくて時間が経つのが早く感じただけかもしれないけど。
他の小学校だと隣の人と机をくっつけない所もあるみたいだけど、ぼくのところはぴったりくっつける。
隣同士の距離はだいたいリコーダー1本分くらい。
だから、今日もすっごくドキドキした……。
……。
こ、こほん。
と、とにかくぼくたち5年1組は、今日は給食を食べないで下校するんだ。
今まさに担任の川谷先生が帰りの会をしているところ。
「よーしみんな、今週もお疲れ様!また月曜日に会いましょう!」
先生はそう言うと、山盛りのプリントを重そうに抱えて教室を飛び出してった。
きっと、さっき言っていた「しょくいんかいぎ」っていうやつなのかな?
ぼくも、ランドセルの口をひらいて教科書をほいほい入れていく。
さんすうと、こくごと、あとは……道徳っと。
うん、これで全部、かな?
……あっそうだ、3時間目は体育だったから体操着も持って帰らなきゃ。
ひととおり帰る準備をすると、ぼくは隣の席の女の子の方を向いた。
でも、こんなに近い距離だと心臓のドキドキが聞こえそう……。
「………!!」
「あっ……あ、えっと……」
「う、うん……」
偶然かな?
いろはちゃんもぼくの方を見てた。
「えっと…どうしたの、いろはちゃん?」
「う……ゆうくんの話、先でいいよ」
真っ赤なほっぺに手を当てるいろはちゃんも、かわいいなぁ。
…よし、今日こそちゃんと言おう。
だって、ゆうたの勇は勇気の勇なんだから!
「ねぇ、いろはちゃん」
「ど、どうしたの?ゆうくん」
「ぼくと…」
「良かったら、一緒に帰ろう?」
恥ずかしくて熱くて、でも一番言いたかったこと。
断られたらいやだなぁ、って思ってたけど。
「う、うん。いいよ」
いろはちゃんは、最初は目をまん丸にしてたけど、okだったみたい。
「ほ、ほんと!?」
ぼくは嬉しくて、ほっぺたが取れちゃいそうなくらい笑った。
でも、いろはちゃんもすっごくニコニコしてる。
4時間授業だからかな?
「そういえば、さっきいろはちゃん、なんて言おうとしたの?」
いろはちゃんが赤のランドセルを背負うのを待ちながら聞いてみる。
「え、それは……」
「それは…?」
いろはちゃんは照れくさそうに、くすっと笑って、ぼくにだけ聞こえるように耳打ちで教えてくれた。
「ゆうくんと一緒のこと、言おうと思ってたの」
くるっとターンして歩き出すその女の子は、誰よりもきらきらして見えた。
少なくともぼくには、ね。
あまーーーーーーーい