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せきがえランデヴー  作者: 煤周 昴
3/4

その3

「はいじゃあみんな!席替えをするから、すわってー!」

担任の川谷(かわたに)先生が来た。

先生は今日のために紙に番号を書いたクジを作ってきてくれたみたいで、順番にみんなの席をまわっていく。

スーパーのビニール袋にクジを入れて、目をつむって1人ずつ引く、5年1組のいつものパターンだ。

ぼくといろはちゃんの席は一番前の右端だから、このままいくと…。

「はい、じゃあ最後!優太(ゆうた)くんと色羽(いろは)ちゃんね!」

先生はそういってぼくたちの机の前に残りのくじを置いた。

やっぱり。

ビニールだからちょっと透けて見えちゃったけど、もうくじは2枚しか無い。

ほんとはたくさんあるところから引きたかったんだけど。

「はい、好きな方選んでね」

そう言って川谷先生は袋から2枚を取り出して、机に置いてくれた。

「ねぇ。いろはちゃんは、どっちにする?」

ぼくは、机の上の2枚のくじを見ながら聞いてみた。

「わたしはどっちでもいいよ。ゆうくん、好きな方取って」

いろはちゃんは、優しいなぁ。

「うーん……。でも…」

ぼくが迷っていると、先生がこんなアイデアを出してくれた。

「じゃあ、どっちにするか同時に指差して決めたらどう?」

ぼくといろはちゃんは顔を見合わせると、笑ってうなずいた。

「じゃあ、せーの!」


「「こっち!!」」



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



それから10分くらい経った。

みんな新しい席に移動したり、そこで周りのお友達とお喋りしたり。

でもぼくは、なんだか気恥ずかしくて、うつむいていた。

そして、ぼくの隣の席の子も同じようす。

「ね、ねぇ…」

ぼくは声をかける。

「な、なに…?」

「これからも、よろしくね」

ぼくがそう言うと、真っ赤なりんごほっぺのいろはちゃんは、うん、と恥ずかしそうに頷いて言った。


席替えは、星の動きににている。

たしか、ばんゆーいんりょく、っていう力で近づいたり。

はたまた、遠ざかっていったり。

地球の周りをずっと回っている月みたいに、いつも近い席になる組み合わせもある。

でもたいていの人には、すれ違いすらせずに、あまり仲良くならずにクラス替えになっちゃうような相手もいる。

だから、ぼくといろはちゃんもそうだと思ってた。

でも、それは嫌だっていうぼくの願いが神様に届いたのかな。

せーので選んだくじを裏返した時。

ぼくのくじの番号は4番で、いろはちゃんは5番だった。

それを見たとき、ついつい笑っちゃった。

でも、いろはちゃんも同じだったみたい。

「すごい偶然……2回連続で同じなんて」

嬉しそうに笑ういろはちゃんにつられて、なんだか変なことを言っちゃった。

「うん、すごく嬉しいな」

いろはちゃんは目をまん丸にして、赤かったほっぺをさらに赤くする。

ずいぶん変なことを言っちゃったみたい。

どうしようと困っていると、いろはちゃんが恥ずかしがりながら、小さな手をぼくの耳に当ててきた。

ないしょ話のときのポーズだけど、いったいなんだろう。

どきどきしていると、洗剤のいい匂いと一緒に、いろはちゃんの優しい声が聞こえてきた。


「わたしも……とっても嬉しい!」


それを聞いて、いろはちゃんの最高の笑顔を見て、ぼくは思った。

ありがとう、せきがえランデヴー、って。

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