その1
ぼくの通う小学校は、改築してまだ間もない。
例えば、ほら。
校門をくぐるときれいな人工芝の校庭が見えてくる。
なんでも、ここらの小学校の中じゃあ一番大きなグラウンドだそう。
もうすぐ登校時間だけど、ぼくは足を踏み入れた。
もちろん鉄棒をやりにいくわけじゃない。
目的はその脇にある飼育小屋。
3匹のウサギは、ぼくが近づくとみんな気付いたみたい。
嬉しそうに網の近くに寄ってきた。
ふわっふわの体に触りたいのを、外から眺めるだけに我慢する。
「今はご飯の時間じゃないんだ。ごめんよ、また放課後にね」
ウサギたちが元気なことを確認したぼくは、またねの挨拶をする。
ちょっと前に最後のニワトリさんが病気で死んじゃってから、ぼくは毎朝ウサギたちに顔を出すようにしているんだ。
ウサギさんも寂しそうにこっちを見ていたけど、放課後にいっぱいお世話をするから許してね。
なんていったって、今日は飼育委員の当番なんだから。
ビニールの広野を通り過ぎると、今度はガラス張りのイカした校舎が見えてくる。
校舎の中まで日が当たるように、っていう校長のアイデアらしい。
上履きに履き替えて教室に向かおう。
ぼくの教室は、4階のはじっこ。
だからけっこう遠いんだけど、もう5年生だから仕方ない。
1階、2階、3階。
朝日が当たってとっても気持ちがいい。
なんだか今日は良いことがありそうだ。
いろはちゃんとたくさん喋れるかな。
そんな気持ちで教室の扉をあけた。