~全米ですよーだ、WORLD DADANDOWN~
ふん。一先ず放水事件は一段落したのだが、僕的な大事は終わっておらぬのだ。何せ日曜日にはジャイロたけしとの直接対決なのだからな。
R1-M1によるミッションが終了次第、「再び師匠の元へ来たれ」との事であったが、よくよく考えてみると、師匠はまだ渡米中ではないか。
ふん。なので指南を仰ぐ為に、いざいざ国際電話をば致し候だよ。「ふんふんのふん」と鼻歌交じりで、お電話をば差し上げる事と致しましょうかいのう。
「ふん。もしもし師匠ですか? 今もまだ米国でお仕事中ですよね? ふむ。お忙しいところ恐縮ですが、至急ご対応のほどお願い申し上げます」
『ふむう。はろはろー、その通りなのである。今はハルウッドにあるレトロゲームショップに立ち寄って遊びまくり……うむう。いやいや、絶賛お仕事中なのである』
「ふん。R1-M1の指示するプロジェクトは全て終えました。ですが結局、僕達ダダンダウンは誰にも勝利する事は叶いませんでしたけどね」
『ふむう。放水魔逮捕の瞬間は、モアイチャンネルの生放送を通して、吾輩も参加をしておったのである。うむう。それはそうと、吾輩の孫娘こと響子殿って、とてもとてもプリチーであったろう? なのである』
「ふん。僕も彼女達には父性を感じさせて貰いました。それに関して否定はしませぬ」
『ふむう。結果、響子殿達を助ける形になったのは、紛う事なき事実なのである。煜には心から礼を言うのである』
「ふん。基本的に僕は何もしていませんよ。実質動いたのは、僕以外の高校生芸人共ですから。彼・彼女らに最高の賛辞をば送って上げて下さい」
『ふむう。吾輩が帰国したらば、ハグ&ハグパーリィにてもてなす予定なのである』
「ふん。そこは、もっとちゃんとしたお礼の品でも贈ってやれよ。ふん。それよりも師匠よ。ジャイロたけしと事を構えるのは明後日なのです。是非にも必勝法を教えて頂きたい」
『ふむう。実はその事なのであるのだがな、これって響子殿を煜に会わせる為の盛大な茶番劇だったのである。R1-M1には予め吾輩が細工を施していたのであるよ。二つ目までの指令何ぞは単なる振りで、最後のS.O.B.だけが正に本命だったのである。うむう。尤も、途中であの様な放水騒動が起こってしまう事は、吾輩も想定外ではあったのである。ふむう。だからこそ、R1-M1のAI予測分析機能が、御膳上等である証明になった訳ではあるのだがね。うむう。哀れな煜よ。無自覚なままにR1-M1の実証実験モルモット役を、ほんとにほんとに御苦労さんだったのである』
「ふん。……ふん? ちょっと待って下さいよ師匠。コミック漫画の進撃○巨人で、ラ○ナーとベ○トルトが世界の真相を明かした場面位に唐突過ぎて、思考が追い着いて行かんのですが」
『ふむう。要するにR1-M1の命令だとか、対ジャイロたけしのS.O.B.には、何ら意味のない事だったと言う訳なのである。うむう。だがしかし、付き合いの長い煜と吾輩との仲なのである。笑って許してくれると信じておるのである』
「ふん。知り合って一週間も経っていないこの期間で、一体お互いの何が分かるってんだよ。遂に師匠もお笑い的ボケではなく、ガチンコのボケが始まったのですかね?」
『ふむう。どうせ正規の手続きでダダンダウンにS.O.B.を申し込んでも、へそ曲がりで人格破綻者の煜は素直に応じなかったのである。だからこそ、この様な回り諄い手法を取ったのである』
「ふん。別に僕はそこまで唐変木では無いのですが。つか、あんたのその言い方、すっげぇ失礼だしね!」
『ふむう。まあ、付き合ってくれたお礼と言っては何であるが、一応取って付けた様な助言をば、これより伝えるので参考にされたしなのである』
「ふん。清々しい位の開き直りだな。最早正直なのか嘘吐きなのか、道徳が行方不明になる迷走っぷりだぞ」
『ふむう。人気があるダダンダウンでも、今回は色々と負けを認める場面が多々あった筈なのである。これは即ち、何事も驕り高ぶるなと言う戒めなのである。人生は何が起こるか分からないのである。一寸先は闇なのである。とどの詰まり、何を伝えたかったのかと言えば、お笑いに正解などは無いと言う事なのである』
「ふん。そして今回の事で何物にも代え難い、様々な人達との出会いもありました。これこそ、人生に於いての宝物だと、師匠はこう言いたいのですね?」
『ふむう。紛う方無しに、その通りなのである。それこそ吾輩が言いたかった事なのである』
「ふん。嘘を付きやがれ。それらしい事を言って得意顔なのだろうが、何も解決していないんだよ。しかも、今回のジャイロたけしとのS.O.B.は勝たなければ意味が無いのだよ。ふん。こんなのは創作物に於いて、終わり方が夢落ちだった時と匹敵する酷いクオリティぞ」
『ふむう。そんじゃまあ、己の笑いを貫けって事で良いんじゃね? なのである』
「ふん。おい、師匠。いや、このハルウッド雑魚師匠が。さては貴様飽きたな。ふん。こいつは温厚な僕が思わずブチ切れんばかりの所業だぜ」
『ふむう。この展開も想定の範囲内なのである。ネタばらしの後、煜に罵詈雑言を浴びせられるのを見越し、逃亡も兼ねて国内に居なかったと言った面もあるのである』
「ふん。こうして電話では、僕から暴力を振るわれないしな。ふん。しかし帰還してからの身の安全は考えもしなかったのかよ。帰って来たら只では済まさないからな」
『ふむう。そこは鶏の記憶力と張り合える煜なのである。うむう。三日もあれば忘れているであろうと言う腹積もりなのである』
「ふん。ほら又しれっと悪口を言う。悉く失礼しちゃうわ。ぷんすこぷん!」
『ふむう。うふう。ふむむむう……ふっふっふむう……(これでも一応笑い声)』
「ふん。なに笑とんねん。しかも笑いの壺に嵌まりやがってからに。たっくるさりんどー!? (沖縄県の言葉で、「ぶっ殺してやるぞ」の意)」
『……ふむう。ふぃん。ふふむう……あー、笑い過ぎて息苦しいのである。そして、ここで都合の良いイベントが到来なのである。うむう。この電話番号は現在使われておりませんなのである』
「ふん。今現在無茶苦茶に通じているじゃないか。あんまり僕をおちょくるんじゃねーぞ」
『ふむう。ではこちらはUSAなので、電波が混線中っちゅう事で宜しくなのである。お後がよろしいようでなのである。うむう。ではでは、さらばだサラダバーなのである』
「ふん。こっちは陸すっぽ準備も何も整っていませんってんだよ。って、あっ! ……糞が……本当に電話を切りやがった。そして、お約束の着信拒否設定発動ですかよ、あんにゃろう。……ふん。今度から師匠では無く、支障か死傷と呼んでやる事にしよう。それから借りているレトロゲーム一式だって借りパクしてやるんだから。ふんだ。もう絶対に返してあげないんだもんね! ばーかばーか!」