真夏の羊歯型結晶
「ねえ あなた?」
真夏の炎天下。外の気温は40℃近くもあり、道路ではミミズが干からびていた。
「暑くないかしら?」
べったりと肩を寄せ合い腕を絡める女。しかし男の顔は青ざめ歯はガタガタと震えていた。
「さ、寒いです……少し離れて頂いても……?」
真夏にマフラーをし、コートを着ている男の左半身は凍り付いた様に寒く、右半身は逆に熱くとろけてしまいそうだった。
「ふふ、流石にこの暑さじゃ冷気全開にしないと私が溶けちゃいそう♪」
全身に冷気を纏う白銀の彼女は、見た目からして妖々しさに溢れていた。
家へと戻ると男はすぐさまに左半身を温め始めた。
「半分寒い……! そして半分暑い……!!」
彼女に触れられていた左半身は言う事が聞かず、何とか手を握り血液を巡らせるので精一杯だった。
「あなたー? 水風呂に入りましょう~!」
意気揚々と水風呂浸かる彼女は、大量の氷を浮かべながら水風呂を楽しんでいた。
(死んじまうよ……!!)
アラスカの極寒の様な水風呂は男を心臓麻痺で殺すのに適した温度になっていた。男はさっとシャワーを浴びてそそくさと風呂を後にした。
「ご飯出来ました♪」
デデデンと運ばれた冷やし中華。白い冷気が立ち込める氷の器に盛られた冷やし中華。器に張り付き食べるのにも一苦労だ……。
「それじゃあ、寝ましょうか♡」
厚手のコートにマフラー、手袋、ホッカイロ、目出し帽とフル装備の男は布団を三枚重ねて床に就く。
彼女が居るおかげで、男の部屋は真夏でもマイナス4℃を保っている。気を確かに寝ないと凍死していまいそうなくらいだ!
「今日は……エッチ……する?」
開けた彼女の肩からは霜が降りており見事なまでの雪の結晶が輝いていた。
「……寒くて出来ません」
男は奥歯を鳴らしながら今日も生死の境を彷徨い続ける……。
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