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ゾンビキラー

 町単位のゾンビウイルスの感染は絶対に広げてはいけない。俺の使命感は炎の如く燃え上がった。


「アナセさん早く案内を!」


「わかりました。ご案内しましょう。ゴッヘルムの町に」


 俺達は町まで走った。少しでも早く移動しゾンビを倒さなくては。町に到着すると、町人達の助けを呼ぶ声が聞こえる。


「斎藤さん、先ずは襲われてる町人にの救出から始めよう」


「うん。わかった」


 俺はシールドソードを1メートルくらいの長さにして、俺と斎藤さんのシールドを全身に展開した。


「助けて下さい」


「助けてくれ! 何なんだ。この病は噛まれると人を食う化物になっちまう!」


 町人30人前後に全身を覆うシールドを展開した。俺達は町人に当たらないように武器を振り回してゾンビを倒していく。


「ありがとう助かりました」


「皆さんが避難してる場所に案内をしてくれますか?」


「はい。お任せください。私達も避難場所を代えるつもりだったんです。今までの所は感染が広まって全滅したので」


「それはこの建物ですか?」


「はい。そうです」


 俺は避難所だった所に入っていく。広い部屋にはゾンビが溢れている。全員が手遅れのようだ。慈悲による安らかな死を。シールドソードを2メートルにして、ゾンビの中心地に移動し、回転しながら薙ぎ払った。くそ。何でこんな事に。皆、幸せな笑顔がそこにあった筈だ。ここは地獄だ。部屋全てを浄化した時、涙が止めどなく溢れた。


「斎藤さん、皆さんお待たせ。行こう」


「はい。教会はこのまま真っ直ぐ町の中心地です」


 救出した町人の案内で教会に向かう。町の中心地はゾンビでいっぱいだった。俺の役割は斎藤さんを避難所に連れていき、ゾンビに噛まれた人を治療しこれ以上の末期感染を防ぐことだ。顔が紫になっている人は恐らく助からないだろう。だが、その前の段階ならあるいは。


「斎藤さん、ゾンビの群れは俺に任せて合図したら突っ込んで!」


 俺はシールドソードを15メートルに伸ばして、一気に左に薙ぎ払う。50体は倒せたか。更に前進し、返す勢いで右に薙ぎ払う。見えない剣に血が付着し、赤く染まった。半円を描きながらゾンビの群れを斬り進み、回り込まれて囲まれた所でもう1本のシールドソードを作り出す。二刀流だ。そして高速で回転し、扇風機と化した。教会への道が出来た。


「斎藤さん今だ!」


「はい!」


 斎藤さんを助けた町人達は教会の門を叩く。2階から監視していた人の合図ですぐに扉が開き、斎藤さんと町人は教会にスムーズに入れた。誘導した町人30人に斎藤さんが入った後、扉を閉めた。俺は残り、汚れ仕事をする。町人だったゾンビに安息の眠りを与える仕事だ。


「ちくしょう、何でだよ! 何で幸せが壊されなきゃならないんだ!」


 俺は泣きながら両手に持った見えない刃を振り回す。その刃はが真っ赤に染まり5分も暴れるとゾンビの群れは全滅していた。浄化完了。胸がいたい。肉体に傷はないが、胸の奥が刺されたように痛い。


「斎藤さん。終わったよ」


 教会のドアが開くと斎藤さんが出迎えてくれた。


「お疲れさま。マモルさん。町人さんの治療が済むまで休んでいて」


「うん。ありがとう。斎藤さんも辛いだろうけど治療がんばって。俺には出来ない芸当だからさ」


 ゾンビに噛まれた人の傷口を浄化し、癒す斎藤さんの姿は聖母に見えた。紫だった傷口付近がピンク色になっていく。重傷者から次々と治療していく。斎藤さんが汗を流している。俺はその汗を拭きながら彼女の治療を見守る。100人は治療しただろうか。ようやく怪我人の治療を終えて斎藤さんが疲れ果てた。


「ここはもう大丈夫だね。斎藤さんはここで休んでて」


「私も行くわ」


「いいんだ。疲れただろ。休んでて。斎藤さんは俺には逆立ちしても出来ない命を救うというとても大きな仕事をしたんだ。もう充分さ」


 俺は教会の外に出て、無心でゾンビを倒しまくった。救えなかった命を浄化させる。もう悲しみは増やさせない。


「貴様我が軍勢に何て事を!」


「それはこっちの台詞だ」


 俺は両手に持ったシールドソードの赤い血を振り払い、透明に近づけるとネクロマンサーと対峙した。曇りはいい。シールドソードが七色に輝かない。


「この諸悪の根元が! 見えない剣に裂かれて消えろ!」


 俺は高速でシールドソードを怒りのまま、滅茶苦茶に振り回した。乱舞というには余りにも荒々しい。


「何を踊っている。え……俺の腕が……俺の足が……」


 乱舞の速度は加速していき、ネクロマンサーは微塵切りになっていた。これで終わりだ。俺は今まで我慢していたものを全て吐き出した。もう胃液しか出ない。やっと終わった。俺は斎藤さんが待っている大きな教会に向かって走った。


「斎藤さんネクロマンサーを倒したよ」


「お疲れさま。マモルさん」


「斎藤さんほど疲れてないよ。でも、少し眠ろうか」


「うん」


 俺と斎藤さんはお互いを枕にして眠りについた。もう限界だった。数時間寝て、起きると町人に達に代わる代わるお礼を貰い、夜になった。そのまま教会に泊まる事にした。こうして1000人規模の感染は止まり、町人5000人の命は救われた。だが、失われた命の数は余りにも大きく決して戻ってこない。ネクロマンサーに対する恨みの大きさを知る事となった戦いだった。全滅させてやる。俺は決意した。だが、いいネクロマンサーもいる筈だと心の何処かで何かが叫ぶ。もう片方でそれはないと何かが叫ぶ。俺の理性と本能がせめぎあっていた。




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