2日目・夜 別の触手に出会いました
本日3回目です
俺の目の前には、俺以外の触手。
しかも桃色のやつが3本、ランドセルから生えている。
思わず俺は思わず固まった。
1本の触手の先には、丸い穴。
その内側にそって、ぎざぎざした歯があった。
2本目は先が棍棒のようになっていた。
とげとげ付いてて痛そう。
3本目は手に似てる。
触手の先から、5本ほどさらに細い触手が出ていた。
目こそないが、3本の触手達が俺を品定めしている。
うねうね、にょろにょろ。
なんとなく動きから、3本で1つの個体なんだろうなと思った。
俺の嫌な汗が噴き出す。
この場合、汗っていうより汁かな?
緑の液体が体からちょっと漏れ出していた。
「パパ、それ仁葉のだから食べちゃダメよ」
《仁葉、ウララの友達。ウララの友達のもの、オレ食べナイ》
ウララちゃんが触手に注意してくれる。
わかっているというように、触手は上下した。
本当かよ。
口っぽい触手の先から、よだれ垂れてたぞ!!
思いながらも、ツッコミ入れるほど命知らずじゃない。
その桃色の触手は、ウララちゃんのランドセルへ戻っていった。
《さっきの触手、君のパパなの?》
ウララちゃんに問いかけてみたけど、やっぱり俺の声は聞こえないらしい。
しかたない。
俺の触手を舐めさせて会話を……って、これはやめとこう。
人様の子に、なんか犯罪ちっくだし。
さっきの触手を怒らせそうな気がする。
そうだ、スマホがあったじゃないか。
仁葉にねだるように、触手を動かす。
「もしかして、スマホ欲しいの?」
さすが我が娘、賢いな。
スマホを俺に手渡してくれた。
“さっきのしょくしゅ、きみの パパなの?”
スマホで文字を入力して尋ねてみる。
そしたら、そうよとウララちゃんが頷いた。
“どうして、あんなすがたをしてるの? もとは、にんげん?”
お前自分を棚にあげて、何を聞いてるんだ。
そう思われそうだったけど、ウララちゃんに聞いてみる。
「そうよ。あたしのパパも元々人間だったわ。一年前に隕石が墜ちてきて、大人達は皆モンスターになっちゃったじゃない」
当たり前のことのように、ウララちゃんは答えた。
隕石?
そういえば、モンスターとして目覚める前……テレビで隕石が降るとか言ってたっけ。
お昼に彗星がとか、そんな会話を誰かがしてた気がする。
あれが墜ちてきて、街中の大人達がモンスターになった。
そういうことでいいのかな。
ウララちゃんの話が本当だとすると。
この世界で人間の姿をしているのは、子供だけってことか。
面倒なことになってるなぁ。
というか、パニック映画みたいだよ……。
「ウララちゃん、パパお腹が空いてるみたいなんだけど、何をあげたらいいのかな?」
心配そうに、仁葉が本題を切り出した。
まるでペットの体調を心配する飼い主のようだ。
まぁ、似たようなものだが。
「電話もらったときに、そんなことだろうなと思って持ってきたわ!」
ウララちゃんが取り出したのは、さいころくらいのキューブ。
硬質で石みたいなんだけど、青く発光してる。
「さぁ、食べて」
俺の体に、ウララちゃんがキューブを埋め込む。
いや、そんな堅そうなの食べられるわけ……あれ、いける。
ビーフみたいな味がする。
美味いな。
空腹感が消えたと思ったところで、俺の体積が元に戻った。
凄いなこのキューブ。
こんなに小さいのに!
「パパが元に戻った! ありがとう、ウララちゃん!」
「ふふん。もっと感謝しなさい!」
ウララちゃんは得意げに、ファサァっと髪をかき上げる。
「しばらくは自分じゃ採れないでしょうから、あたしのわけてあげる。1日1つくらいあげれば大丈夫よ!!」
「ウララちゃん優しい!」
「でしょ? もうちょっとおまけしてあげる!」
ウララちゃんは、おだてると調子に乗りやすい……いや、とてもいい子みたいだな。
感謝の気持ちが伝わるように、とりあえず触手をバタバタさせておいた。
◆◇◆
キューブを食べた後、仁葉はウララちゃんとおしゃべりに花を咲かせていた。
話題はアニメのことだったな。
どうやら、DVDで魔法少女アニメを見るのが彼女達のブームらしい。
ウララちゃんと別れた後、家に戻った。
仁葉は夕食を食べて、お風呂に入る。
それから、俺と仁葉はいっぱいおしゃべりをした。
どうやらアヤメは外国の研究所で働きながら、ずっと一人で仁葉を育てていたらしい。
ママがね、ママがね。
そう言って、仁葉は俺が知らないアヤメのことを話してくれた。
「それでね、明日はね……」
明日の予定を語りながら、仁葉は眠そうだ。
ベッドへ行くよう促せば、スマホが鳴った。
『やぁ、元気にしてたか?』
「ママ!!」
『仁葉、まだ起きていたんだね。よかった。おやすみを言いたくて電話したんだ』
嬉しそうな仁葉。
アヤメにおやすみの挨拶をして、それからすぐに寝てしまった。
もういい時間だし、起きているのが限界だったんだろう。
《それで、どういうことか色々説明してもらおうか》
『あぁ、いいだろう。約束だからな』
俺が問いただせば、電話の向こうでアヤメが笑う気配がした。
ウララちゃんは、3日目のアイコンで銀月様からもらった幼女になります。
銀月様キャラ使わせていただき、ありがとうございます!