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11日目・夕方~ エルフ

すみません、予約投稿し忘れて遅れました。

 エルフの女性は、咲子というらしい。

 どうにか、俺達のことをわかってもらえて、警戒心は解けたんだけど。 

 

「私、ようやく再就職決まって、これからだったんですっ……なのにこんなのあんまりじゃないですかぁ!!」

 さっきからずっとこの調子で、泣き崩れている。

 まぁ、気持ちはわかるよ。


「でもよかったじゃないですか、エルフで。美人ですし、若く見えますよ!」

「自分の姿まだ見てない……」

 自分よりずっと年下のヒマリちゃんの慰めに、咲子さんが顔をあげる。

 端末で咲子さんの写真を撮り、手渡してみた。


「……金髪美女だ」

 写真に写っているのは、おかっぱ頭で青い瞳のエルフ。

 自分の姿を見て、咲子さんはまんざらでもなさそうだ。



 少し落ち着いたようでよかった。

 そろそろ時間だしと、テイストコピーした肉を食べたモンスターを呼び寄せる。


 俺の呼びかけに応じて現れたのは、3体。

 人間ほどの大きさがあるフクロウ。

 それと、豚と同じ大きさをしたネズミのモンスターが2体。

 

 他に3つ餌巻いてたと思うんだけど、食べられてないのかな?

 あんなにモンスターいたのに……?

 

 まぁいいや。

 後でまた指示を出してみようかな。


 さてと。

 豚ネズミはともかく、フクロウはできれば手下にしたいところだな。


 昆虫系がいいよって桃山さんは言ってたけど、空を飛べたら便利だし。

 俺の言葉に応じてきてくれたなら、可能性はあるんじゃないかな?


 俺の一部を取り込ませるほど、いうことを聞かせやすくなる。

 フクロウには、追加でテイストコピーした肉をあげることにした。


 豚肉は手元にないけど、ネズミモンスターがいる。

 こいつに、俺の一部をまとわりつかせて、テイストコピーで好きそうな味を張り付けて準備はオッケーだ。


 食べていいぞというと、フクロウは嬉しそうについばみはじめた。

 ちょっとグロテスクなシーンだったので、見ないことにする。


《ついてきて》

 食べ終わったところで命令すれば、フクロウは飛び立っていった。

 ちょっと待て!! 俺、餌のやり損じゃないか!!


 まぁいいさ。

 こういうこともある。

 今日は十分な収穫があったので、これで引き上げることにした。



 ◆◇◆


 ヒマリちゃんと別れて、咲子さんと学校へ向かう。

 彼女の腕の前に、抱きかかえられているんだけど。


 ちょっと胸が背中(?)に当たるんだよな。

 モンスターだからって、そういうあれがないわけじゃないんだけど。


 人を保護したときって、誰に言えばいいんだろうな?

 俺のときは、すぐ仁葉ヒトハと生活はじめちゃったからそのあたりがわからない。

 こういうときは、桃山さんかなと連絡をとってみる。


『誰かを保護したなら、局長のところへ報告したほうがいいかな。たぶん校長室にいると思うよ。ところで、その子の種族は何?』

 電話をかければ、桃山さんはすぐに出てくれた。

 事情を話せば、咲子ちゃんの種族を聞かれる。


《エルフです》

『それなら歓迎されるんじゃないかな。局長もエルフで、エルフは同族をとても大事にするからさ』


 局長というのは、たぶん機関で一番偉い人なんだろう。

 種族は触手じゃなくて、エルフなんだな。


 そんなことを思っていたら、ようやく小学校にたどり着いた。

 校門をくぐったところで、ふいに咲子さんが躓く。


「きゃっ!?」

 その勢いで、俺はぺしゃっと地面に投げ出された。

 すぐに形を整え、咲子さんを見れば足に触手が絡みついている。


《咲子さん!!》

 助けにいこうとした俺の体を、誰かがひょいと持ち上げた。

 大きめのガラス瓶に押し込められ、ふたを閉められる。


《いきなり何をするんだ!!》

 叫びながら瓶の中で体勢を変える。

 どうやら俺は、漬物用のガラス瓶に入れられたらしい。

 ホームセンターで買ったのか、瓶のラベルには梅のマークが書かれていた。


《何でこんなことを!? 出せ!!》

 瓶についてる取っ手を握っているのは、女のダークエルフだ。

 彼女は黙ったまま何も答えない。


 頭をよぎったのは、昨日の夜にアヤメが言っていたこと。

 機関は俺を泳がせて、監視しているのだと言っていた。

 あまりにもアヤメが現れなくて、しびれを切らしたんだろう。


 咲子さんを見れば、やってきた研究員達に取り押さえられている。

 せっかく安心させたのに、涙目でおびえきってしまっていた。


《その女性は俺が街で保護した人だ!! 手荒に扱うな!!》

 叫んだけど、無視されてしまう。

 そのまま俺と咲子さんは、校長室へと連れていかれた。



 ◆◇◆


 校長室へ行けば、ショタエルフがいた。

 眼鏡をした知的なインテリオーラを放つ、銀髪の少年。

 年は7歳くらいだろうか。


「離してぇ!! 離してくださいっ!!」

 叫ぶ咲子さんに目をやって、ショタエルフは大きくため息を吐く。


「おい、アヤメではないじゃないか。どういうことだ」

 ショタエルフが、キッと近くにいた青いスライムモンスターを睨む。

 するとそいつは縮こまって透明になり、床にどろりと広がった。

 まるで水たまりみたいだ。


《す、すみません局長!! 対象がエルフと接触したので、アヤメ様だとおもったのです》

 この水たまり、前に俺たちを尾行してたやつだな。

 少年とスーパーに行ったとき、モップに吸われたけど生きてたのか。


 そしてこのショタエルフが、局長。

 どう見たって子供だけど、実際の年齢は違うんだろうか。



「おい、お前。アヤメの夫を名乗っているが、本物なのか」

 ショタエルフが、俺の入った瓶を手に取る。

 目線の高さで振られたかと思えば、馬鹿にした調子で尋ねられた。


 っていうか、人の妻を呼び捨てか。

 いやまぁ……結婚してないし、恋人かどうかもよくわかんないけど。

 でも、知らないやつにアヤメを呼び捨てにされるのは腹が立つ。


《そうだよ。俺がアヤメの夫だ》

 だから、堂々と言ってやった。

 するとショタエルフの顔が悔しそうに歪む。


「胡散臭い。悪いが僕は、最初から君でアヤメが釣れるとは思ってなかったんだ。やっぱりなと思っているよ」

 こいつ、失礼な奴だな。

 俺でアヤメをおびき寄せようとしてたことを、隠そうともしない。

 それどころか、やっぱり期待外れだったなという態度が鼻につく。


「そもそもだ。アヤメが僕より、この緑の液体や人間の子供を選ぶわけがないんだ。だからあの置き手紙も何もかも、間違っている」

 自分に言い聞かせるような、強い言葉。

 男の勘で分かった。

 こいつはどうやら、アヤメのことが好きだったらしい。


「エルフはエルフ同士が幸せなんだ。お前のような一般の触手など、およびじゃない。何をしてアヤメをたぶらかした」

《残念だったな。俺がたぶらかしたんじゃなく、俺はたぶらかされたほうだ》

 売り言葉に買い言葉。

 むっときて返したが、余計な怒りを買ってしまったのは明らかだ。

 ショタエルフの眉がぴくぴくと動いている。


「山田!! その瓶づめを地下の倉庫に入れておけ。ちゃんとふたを閉めて、鍵をかけておけよ」

「はい、局長」


 山田と呼ばれたダークエルフがお辞儀をし、俺をショタエルフから受け取る。

 キュッとさらに強く蓋を閉められ、木箱に入れられて。

 地下の倉庫に閉じ込められてしまった。 

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