10日目 晴れた日の水たまり
10日目は奏多様よりツイッターにて、触手ランドセル幼女のイラストをいただきました!
ありがとうごさいます!!
日曜日。
今日はからっと晴れたいい天気だ。
折角だから、掃除とか洗濯とかしたいよな。
しかし、俺の体だと洗濯物を運ぶのでも一苦労なんだよな。
仁葉に手伝ってもらうしかないか。
軽く洗って、洗濯機に入れるだけだしな。
仁葉はよろこんでお手伝いしてくれるからありがたい。
でもベッドの下とか、ほこり溜まってそうなところも綺麗にしたいんだよなぁ。
仁葉に全部やらせるのは、負担が大きい。
ちょっと考えて、また少年を呼ぶことにした。
前に連絡先はもらっていたので電話1つで来てくれる。
「お電話ありがとうございます。今日は掃除ですね」
部屋にやってきた少年は、ジャージを着ていた。
やる気満々のようだ。
“ごめんね、こんなに何度もよびだして”
端末で謝れば、むしろありがたいですと少年は言う。
「俺は触手を持っていないので、できる仕事が限られているんです。お得意様ができて嬉しいですよ」
“どうしてそんなに、キューブを集めているの?”
子供達は、機関から手厚い保護を受けているはずだ。
お小遣いだってもらっている。
自分の触手を持っていて、そのご飯代がかかる場合を除いて、そんなに稼ぐ必要はないはずだった。
「何かあったときのためにです。片親は機関の人間だったんですけど、今はもういないですし」
少年は、この年で大分大人びていた。
俺が感心している間にも、てきぱきと動いてくれて本当に働きものだ。
お昼になったので、少年にも昼ご飯をごちそうする。
今日のメニューは特製グラタンだ。
偶然バターっぽいものが手に入ったからね。
どこでって?
昨日の牛さんへの給料に色をつけたら、手作りバターだからどうぞってくれたんだよね。
牛さんは牛乳やバターを作っていて、あの喫茶店にも卸しているらしい。
《人間が食べても害はないわよ》
そう彼女(彼?)は恥じらった表情で言ってたけど、深くは突っ込まなかった。
バターっぽいものって、とっても貴重だからね。
バターとして使えるなら、何から採れたバターなんだろうとか考えないよ!
とりあえず、小麦粉をバターで炒めて、牛乳を加えて。
支給品のマカロニを茹でたやつと、余ってた具材をいれる。
パンをぐずぐずにして上にふりかけて、オーブンで焼けばグラタンは完成。
ここからもうひと手間だな。
パンを卵と牛乳に浸して、フライパンで両面焼いてフレンチトーストを作る。
砂糖は入れない。
このフレンチトーストにカリカリに焼いたベーコンを乗せ、さらに出来上がったグラタンを載せる。
トーストを作るときに、レンジで同時に作っておいた温泉卵を上に乗せ……お好みで塩こしょうをかければ完成だ。
学生時代はカフェのキッチンにいたから、料理結構作れるんだよな。
柔らかいトーストのとろける舌触りと、濃厚なグラタンがよく合うんだ。
温泉卵のとろーっとした黄身がまた食欲をそそるんだよな!
これは、熱々を食べてもらいたかった。
だから俺はお湯をたらふく飲んで体積を増やし、自分の体の上に料理の皿を置いてみることにした。
保温効果はバッチリだ。
少年は食べ盛りだし、いっぱい食べるかなって大目に作ったんだけど。
かなり美味しかったらしくて、がっついて食べてた。
いい食べっぷりで嬉しいな。
「いつも支給品ばかりでしたから、とっても美味しかったです。誰かが作ったものを食べるのは久しぶりでした」
まぁ、支給品って缶詰とかパスタとか保存が利くやつばっかりだもんな。
簡単にチンしてできる冷凍食品もあるけれど、親のいない低学年に優先して配られているらしい。
“夕飯、何か食べたいものある? お買い物付き合ってくれるならごちそうする”
「いいんですか!?」
仁葉の分だけ作るより、断然2人分の方が楽なんだよな。
少量だけ作って余らせるのも困りものだし。
こうして俺は、荷物持ちの少年をゲットした。
◆◇◆
仁葉の手を、少年が繋いでいる。
こうやってみると仲のいい兄妹みたいだな。
俺はというと、少年が乗っかっていいというので、彼の頭の上にいた。
なかなかいい眺めだなと思っていたら、少年が立ち止まって、俺を胸に抱いた。
「後ろ、つけられてません?」
小声でいう少年は、厳しい顔をしている。
触手でハテナを作って、彼に答えた。
「俺、気配には敏感なんです。視線を感じるというか。ちょっとさりげなく見てみてください」
それだけいうと、少年はまた俺を頭の上にのせた。
言われたとおり、背後に意識を集中してみる。
特に人影はない。
少年の気のせいじゃないかとおもったとき、電柱の下にあった水たまりが動いた。
えっ、なんであの水たまり動いてるの?
というか今日は快晴で、一度も雨なんて降ってないよね!?
“つけられてる。たぶんモンスター。水たまりのふりしてる。知らないふりして”
水たまりに気づかれないよう、体から端末を取り出す。
触手をつかって、少年の方に見せた。
少年がわかりましたというように、俺の端末を指で2回ほどつつく。
そのままスーパーに入り、買い物をすることにする。
こっちを襲うつもりなのかな。
だとしても、人が多い場所では避けるはずだ。
何を思ったのか、水たまりはスーパーの中まで入ってきた。
そして俺達とすれ違いに出てきた、上半身人間で下半身が馬の店員に踏みつけられた。
「ああん? なんでこんなところに水たまりが。誰かモップもってこいよ!」
店員が大きな声を出す。
少年はその声が気になったかのように振り返った。
水たまりは、人の目があるからか動かない。
他の店員が持ってきたモップに吸い取られてしまった。
「これで安心して買い物ができますね」
少年はいい笑顔でそう言い放った。
◆◇◆
《そういうわけで、後をつけられていたみたいなんだ》
『なるほどな。十中八九、機関の人間だろうよ』
今日は少年がいるから、電話は深夜あたりがいい。
そうメールをすれば、その時間にアヤメから電話がかかってきた。
『機関は私を探しているからな。夫である君や仁葉と、私が接触するんじゃないかと考えて泳がせているんだ』
アヤメの口調は断定的だった。
『まぁ、そろそろ痺れを切らす頃だろうけどな。端末を作ったのも私なら、この街の設備を整えたのも私だ。それゆえ、機関は私達に甘い。だからどうにかなってきたが、さすがに限界があるだろうよ』
いざというときのために、備えておけ。
そうアヤメは続けた。
《いざというときって?》
『もしも何かあったら、この街を出る覚悟をしておけということだ。もしくは、早く私を探し出せ』
それだけいうと、アヤメからの電話は切れてしまった。




