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9日目 家族サービス

9日目は焼魚あまね様よりツイッターにて、触手ランドセル幼女のイラストをいただきました!

ありがとうごさいます!!

「おい、アヤメ。お前こんなところで何してんの?」

「どうしてここにいるとわかった」


 掃除用具入れを開けたら、そこにはアヤメがいた。

 無表情に見えるけど、落ち込んでるなと俺にはわかる。


「それくらいわかる。で、どうして隠れてたんだ?」

「私がいると、皆が不愉快になるからだ」


 アヤメは落ち込んでしまってる。

 黒くてサラサラした前髪が、目を隠していた。


 また皆に何か言われたんだろうなって、すぐにわかった。

 いつでもツンとすましているように見えるから、相手にされていないような気がするんだろう。

 面倒な奴らに絡まれやすかった。

 

「アヤメって、皆から見えないけど近いところに隠れるよな」

「……そうかもしれない。たとえ私が人間として半端者でも、側にいたいという気持ちがあるからな」

 

 また、わけのわからないことを。

 そう思いながら、アヤメの手を引く。


「じゃあ、次から俺の後ろに隠れたらいいだろ。掃除用具入れは臭いし、俺の後ろなら皆俺を見るから、お前は何も気にしなくていい」

 大きく目を見開いて、それからアヤメは笑った。


「あぁ、そうする!」

 掃除用具入れから飛び出して、アヤメが抱きついてくる。

 そこで、目が覚めた。 



 ◆◇◆


 懐かしい夢を見てたな。

 小学生の頃周りになじめなくて、あいつよく隠れてたっけ。


 初日はグラスの中で寝ていたけれど、今では仁葉のベッド上にある皿か、もしくはランドセルが俺の寝床だ。

 今日はランドセルの中で眠っていた。


 もしも何にでも変身できるとして。

 あいつなら、どこに隠れるだろう。


 俺達から近くて、見えない場所……。

 そんなことを考えて、端末を手に取る。

 画面を見つめれば、土曜の朝8時の表示。


 ……もう少し寝ててもいいかな。

 久々にアヤメの夢を見たし。


 なんとなく、端末を抱きしめる。

 冷たくて気持ちいいというか、抱き枕に丁度いいんだよな。

 

 そういやこの端末、ビデオ電話はできないのか?

 ちょっといじってみるか。


 あれ、できそうな感じだな。

 あいつ多分、知ってて言わなかったんだろうな。

 この端末作ったの、あいつみたいだし。

 自分だけ、俺達の映像を見れるようにしてそうだ。


 二度寝しようかと思ったけど、やめておくことにする。

 仁葉とでかけるために、支度をすることにした。



 ◆◇◆


 サンドイッチを作って、それから外に出る。

 マンションの前には、牛くらいの大きさをしたモンスターが待っていた。


 少年のおすすめで、例の喫茶店で1日レンタルしてみたのだ。

 ここでは足代わりに使われているらしく、人気があるらしい。

 彼とは友人なので特別に確保しておきますねと、少年が気を利かせてくれたのだ。


 少年にとって、俺はお得意様になると思われたんだろうな。

 まぁ、正直助かった。

 仁葉の足じゃ、おでかけにも限りがあるからな。

 車とか使えたらいいんだけど、触手だとアクセル踏む足がない。


《今日一日、よろしくお願いします》

《えぇ、まかせておいて!》

 頼んだら、牛モンスターからは頼もしい返答がきた。

 口調は女性的だが、声は男っぽいな。

 あまり考えないようにしよう。


 彼が引く牛舎に乗る。

 思っていたよりも早い速度で、俺達を乗せた牛舎は街を駆け抜けていった。



 ◆◇◆


 最初に訪れたのは、廃墟となった子供服の店だ。

 少年が教えてくれた穴場スポットで、たくさん種類が残っていた。


 “すきなのえらんで かってあげる”

「いいの!? やったぁ!」


 仁葉すぐに店内に入ると、服を選び始めた。

 結構、可愛いのが多いな。

 

 持ち主がいないといっても、気は咎める。

 なので、一応お札を置いておくことにした。

 使い道はないし、アヤメのお金なんだけどな。

 

「パパ、この服とこの服、どっちが可愛いかな?」

 仁葉ならどっちも似合うよ。

 心からそう思ったが、選んでほしそうにしている。


 “ももいろのふく。りぼんかわいいから、仁葉ににあう”

「本当!? じゃあこれにするね!!」


 楽しそうに仁葉は試着室へと向かっていった。

 やっぱり女の子なんだな。

 はしゃいじゃって、可愛い。


 そんなことを思っていたら、背後で布の擦れる音がした。

 誰かいたような気がしたけれど、気のせいだったらしい。


 気を取り直して、服を着ておすましした仁葉の写真を撮っておく。

 折角なので、もう1着の服も買うことにした。



 次に出かけたのは、果実園。

 ここのオーナーはモンスターになったけれど、自我を保っている珍しい人らしい。

 果物の多くは、ここから仕入れられているということだ。


 奥に行けば、黄色の触手が苺の手入れをしている。

 俺なんて比べものにならないほど、でかいモンスターだ。

 人間型で、腰から上が100本近い触手になっている。


 へたに人間っぽいほうが、怖いんだな。

 仁葉が少し怯えて、後ずさったのがわかった。


《すみません。ここで苺狩りできるって聞いたんですけど》

《珍しいお客さんだな》


 黄色の触手が、1本伸びてくる。

 水をかけるホースのような形状をしていた。


 声はしわがれていて、お年を召した方のようだ。

 自分がモンスターだって自覚がある機関の人達は、30歳までに死んでしまうから若い人達が多い。

 このおじいさんは、俺と同じで機関の人じゃないようだ。


《この子に苺狩りを体験させてあげたくて》

《ふむ、めんこい子じゃな。いいぞ》


 少年からは子供好きだと聞いていたけど、本当だったみたいだ。

 子供だからということを利用して、ここで苺をときどき分けてもらうんですと彼は言っていた。

 結構したたかな子だ。


 苺は結構高い。

 米と同じく、黄色3個くらいは渡したほうがいいかなと思ったけど、おじいさんは黄色1つでいいと言ってくれた。


 おみやげの苺ももらって、夕食は学校近くの喫茶店で食べる。

 久々の外食に、仁葉はご満悦だ。


「今日、私お姫様みたいだね!」

 なんて可愛いこと言うんだろう。

 それだけで今日という日が、とてもいい日だったと思えてしまう。


 “仁葉は パパのおひめさまだよ”

 親バカ丸出しのセリフを伝えれば、仁葉は照れたように頬を染めた。


 何この生き物。

 可愛すぎるんですけど!!

 なぜ俺は今のやりとりを、動画に残しておかなかったのか。

 それが心底悔やまれる。



 家への帰り道も、おまけだと牛モンスターが送ってくれた。

 もう夜も遅い。

 疲れたんだろう、仁葉は眠ってしまった。


 その顔を写真に残す。

 あどけない顔を見ていると、俺が守ってあげなきゃという気持ちが湧いてくるから不思議だ。


 ふいに、端末にメール機能がついてることを思い出す。

 せっかくだから、アヤメに今日の写真を送ることにした。


 メールの文面に、「ここにお前もいたらいいのにな」と書きかけて消す。


 代わりに「今度はみんなでどこに行こうか」と書いて送信する。

 すぐに、アヤメから電話がきた。


『今日は楽しかったみたいだな』

《あぁ、幸せな1日だった。お前もそう思うだろ?》

 アヤメに聞き返す。


『そうだな。幸せな1日だったよ』

 少しの間の後、アヤメが電話の向こうで笑った気配がした。

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