8日目 今できること
8日目は佐伯さん様よりツイッターにて、触手ランドセル幼女のイラストをいただきました!
ありがとうごさいます!!
「パパ、ちょっと元気になったね」
《まぁね》
仁葉に答えながら、今日の朝食を用意する。
今日はコーンフレークとミカンみたいな果物だ。
コーンフレークとそれにかける牛乳は、学校からもらった配給品。
ミカンみたいな果物は、昨日の帰り道少年からもらったものだ。
今日の朝ご飯は、お金がかかっていない。
お金っていうよりは、キューブがかかっていないっていうべきかな。
今の状況だと、日本円が全く役に立たないんだよな。
もらったところで使えないから、価値のあるキューブが通貨代わりになってる。
現在持っているキューブはオレンジ2個、黄色4個、白10個。
1日、白いキューブ1個じゃ足りなくて、最近2個食べちゃうんだよな。
少し体が大きくなった気もするし、レベルが上がったのかもしれない。
《仁葉、ちょっとこっち向いて》
パンパンと触手でテーブルを叩けば、仁葉がこっちを見る。
こっちに視線があった瞬間に、端末のカメラで写真を撮った。
「パパ、どうして写真撮ったの?」
“ママにおくるんだよ しゃしんなら みられるから”
端末で答えれば、そっかと仁葉は納得している。
昨日、少年に慰められて俺は色々考えた。
とりあえず、今できることをしよう。
そう思った俺が考えついたのが、写真だ。
俺の端末のデータを、アヤメは見ることができると言っていた。
なら、撮った写真も見られるはずだ。
仁葉と楽しく過ごしてる時間。
それをあいつとも共有したかった。
だから昨日の夜は、仁葉と俺と3人で楽しくおしゃべりをした。
主に仁葉のおしゃべりを聞くだけだったが、それでも幸せだった。
仁葉が寝るより、少し早く電話をかけてほしい。
できるだけ一緒の時間がすごしたい。
そういえば、アヤメもわかったと言ってくれた。
もうちょっと、このままでいたいな……なんて。
俺は思ってしまっている。
なんとなく、そう長くは続かないような気もしてるけどな。
“仁葉、ママとでんわしたり、しゃしんをおくってるのは、ないしょだよ”
念のため釘をさせば、仁葉はわかったと元気よく答えてくれた。
◆◇◆
「ご利用ありがとうございます。昨日言った、奥さんと娘さんが喜びそうな場所でいいですか?」
今日も運び屋の少年を呼び出す。
しかし、今日の目的地はそこじゃなかった。
“それはまた明日で”
「明日もご利用ありがとうございます」
端末で会話してから、少年に買い物を頼む。
それから、指定範囲ぎりぎりまで送ってもらった。
帰りもここに迎えに来てくれるよう少年に頼む。
ちなみに少年の1回あたりの代金は、黄色1個と白1個。
買い物は別料金で黄色1個。
豚肉は1頭分購入したので、オレンジ1個が消えた。
往復分も含めて、黄色3個、白2個を少年にまとめて先払いしておく。
現在の手持ちは、オレンジ1個、黄色1個、白8個になった。
「お客さん、えげつないもの飼ってますね」
少年は蜘蛛を見上げて呟く。
あまり動じてないのは、この街の子達がモンスターを見慣れてるからなんだろう。
まぁねと答えるように、触手で頷く。
それから、蜘蛛に報酬を出すように要求した。
青2個に、オレンジ5個、黄色8個。
これが今回の収穫のようだ。
前に連絡先を交換していたので、桃山さんに電話する。
配分は、俺と桃山さんで青1個ずつになった。
どうやら青は、かなり強いモンスターからしか出てこないレアらしい。
蜘蛛は相当頑張ってくれたようだ。
『でも強いモンスターに挑んで逆に負けたら意味ないからね。蜘蛛にはありがとうと、質より量を優先してねって伝えといて』
桃山さんからのメッセージを蜘蛛に伝える。
それからよしよしと頭を撫でて、今回の分け前を与えることにした。
まずは、少年が用意してくれた豚肉。
その一部を蜘蛛の前に置く。
それから、蜘蛛にあげる分のキューブを食べて。
俺のテイストコピーで、豚肉にいつもの味付けをする。
これでできあがりだ。
別に獲物の形をしてなくても、俺の命令なら蜘蛛は食べるんだよね。
それで豚肉で代用してみた。
蜘蛛は嬉しそうにヘッドシェイクしていたので、問題はなさそうだ。
“今日、これから時間ある? 蜘蛛平気なら、手伝ってほしいことがあるんだ”
オレンジ色のキューブを、少年の前に差し出す。
彼はいいですよと、それを受け取った。
今日は蜘蛛と一緒に、狩りをしようと決めていた。
桃山さんとは話し合って、お互い自由に蜘蛛を使っていいことになっている。
蜘蛛と一緒に外に出た日の報酬は、本人のものという決まりだ。
蜘蛛の背に乗って、モンスターが発生している地域へ移動する。
戦闘している人達が情報を送ってくれているので、どれくらいのレベルのモンスターかを確認した。
うん、蜘蛛なら余裕で倒せそうだな。
ちなみに現在、俺のレベルは5になっている。
蜘蛛はレベル30。
種族的に元々強いので、相性がよほど悪くない限り負けないのだと、桃山さんが言っていた。
「あそこにモンスターがいますよ」
少年が自分の端末を確認して、指を指す。
大きなライオンのような生き物。
赤と黄色の派手派手しい毛色をしていて、その体は炎に包まれている。
あれ、熱くないの?
元々燃えてるたてがみなんて、恐ろしくて近づきたくないんですけど。
「触手系は相性が悪いですね。でも、肉は好きだと思いますよっ!」
俺がテイストコピーして、自分の一部を貼り付けた肉を少年が投げる。
なかなかいい位置に落ちたな。
ライオンは蜘蛛を警戒しているけど、さすがに敵わないのがわかっているのか、こちらを見上げて引け腰だった。
このあたりには、他にもモンスターがいそうだな。
少年に頼んで、どんどん肉を落としてもらう。
白のキューブを8個つかってテイストコピーをし、5つの餌を落としてみた。
後は、獲物が食いつくのを待つばかりだ。
結果、3つの餌に獲物が引っかかった。
これは、かなりいいんじゃないだろうか。
今回は炎系のモンスターばかりが、餌にひっかかった。
全員獣っぽい。
仲間にするなら、昆虫タイプにしておけと桃山さんから言われていた。
スキルの吸収を使おうにも、その前に俺が蒸発しそうな気がする。
蜘蛛に頼んで、キューブに変えてもらった。
オレンジ2、黄色12個、白10個のキューブ。
桃山さんなしの狩りにしては、頑張った方じゃないだろうか。
◆◇◆
夕飯のメニューはうどんだ。
ちなみに支給品の小麦粉を使って作ってみた。
『明日はどこかへ行くのか?』
《仲良くなった子から、いいところ教えてもらったんだ。だからそこに仁葉を連れていこうと思ってる》
電話の向こうのアヤメに答える。
『よかったな、仁葉』
「うん!」
元気いっぱいに、仁葉は返事をした。
今日は夕食時に、アヤメからの電話がかかってきていた。
それもあって、仁葉はごきげんだ。
《お前も一緒に行った気分になれるように、いっぱい写真撮ってくるな》
『あぁ、楽しみにしてる』
そんな会話をしながら、夜は更けていった。




