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5日目・朝~夕方 はじめてのお買い物

5日目はシロイチアキ様よりツイッターにて、触手ランドセル幼女のイラストをいただきました!

ありがとうごさいます!!

(すでに12人の触手ランドセル幼女のイラストをいただきました。ありがとうございます)

 仁葉ヒトハがご機嫌斜めだ。

 昨日、桃山さんの後を追いかけたとき、

 仁葉に「いってくるね」の一言を忘れたのが原因だった。


 どうやら仁葉は、俺に普段の授業の様子を見てもらいたかったようだ。

 仁葉の授業が終わる前に、教室についたんだけど。

 明らかにむくれていた。


 そんな仁葉をなだめて、ご飯を食べさせて、寝かしつけて。

 その日は俺も疲れていたので、アヤメの電話が来る前に寝てしまった。


 体を分裂させたからか、疲労が半端なかったんだよな。

 キューブを3つも食べたから、体積は回復したけど。

 食べたところで、疲れは寝ないととれないみたいだ。


 桃山さんによれば、仕事は好きなときに参加していいということ。

 基本的には日払い制のようだ。

 今日はまだ疲れを引きずっているのもあって、仁葉と教室に残ることにした。


 授業は、小学校1年生の授業って感じだな。

 普通のものと全く変わりない。


 国語も算数も、仁葉は得意みたいだ。

 アヤメに似たのか、とても賢い。

 今もまた先生の問題に答えて、正解を出していた。


 “さすが 仁葉だね”

 ノートの端に書けば、嬉しそうに仁葉は笑う。


 なんだろうな。

 仁葉が笑うと、こっちまで幸せな気分になる。

 たわいないやりとりなのに、不思議だよな。


 父親なんだから、何かしてあげなきゃ。

 ちょっと気張っているところが、俺にはあった。


 父親になったことがなかったから、こう理想像みたいなのがあって、身構えていたんだと思う。

 してあげることって、こういうたわいないものでいいんだな。

 すっかり機嫌が直ったようでよかった。



 給食が終わった後の昼休みも、仁葉は俺といたいようだった。

 でも、折角だから友達と遊んでおいでと背中を押す。


 俺は俺で、やることがあった。

 触手になって日が浅いから、先輩方から情報を集めようと思ったのだ。


 しかし、俺の教室に触手はいなかった。

 なので隣のクラスへと足を運ぶ。


 都合よく、紫色の触手を発見した。

 初登校のときに、横断歩道で手を上げて渡っていた子の触手だ。

 しかも、1人で次の授業の準備をしている。


《はじめまして、小野おのです》

《あっ、どうもごていねいに。僕は沢村さわむらといいます》


 紫色の触手である沢村くんは、声が大分若かった。

 高校生くらいの男の子だろうか。


《お父さんにしては、声がずいぶんと若いんですね》

《僕、なゆちゃんの叔父なので》

 ウララちゃんのパパといい、桃山さんといい、出会った触手は皆父親だった。

 だから、彼もそうかなと思ったんだけど。

 どうやら、違うみたいだ。


 沢村くんは、歳の離れたお兄さんと一緒に機関に入っていたらしい。

 隕石が落ちる前にお兄さんは亡くなってしまったらしく、代わりになゆちゃんを守っているようだ。


《兄の妻は普通の人だったので、モンスターになって自我をうしなっちゃったんです。だから、なゆちゃんには僕しかいないんですよ》

 ちょっぴり暗い身の上話を、そう感じさせない軽さで語る。

 芯のしっかりとした子みたいだ。


《俺、機関の人間じゃなくて、最近触手になったばかりなんだけどさ。娘に冷凍食品以外のものを食べさせてあげたくて。食材ってどうやったら手に入るかな?》

《冷凍食品や缶詰、パスタ等は機関で前々から準備してあったものです。配給品というやつですね。それ以外は自分で取ってこなくちゃいけません》


 沢村くんによれば、にわとりやブタ、牛が野生化しているらしい。

 自我のあるモンスターの中にはそれらを集めて飼い、キューブと引き替えで売ってくれる者もいるそうだ。


《隕石が落ちて、1年経ちましたからね。外の畑を物色して野菜を売るモンスターや、家畜を売るモンスターも出てきているんですよ。子供達には必要なものですし、栄養にならないと知っていても僕達だって食べたくなりますから》


 なるほど、必要とされていると商売する奴が出てくるんだな。

 たしかに自分でモンスター倒してキューブ稼ぐより、いいかもしれない。


 モンスターになろうと、結局人間社会とそう変わらない。

 なんだか、それがおかしかった。



 ◆◇◆


 沢村くんもお買い物にいくというので、学校が終わってから同行させてもらう。

 俺の持っているキューブは、ウララちゃんからもらった白が5個と、昨日の報酬としてもらった黄色のキューブ3個だ。


 白は一番よく採れるキューブで、栄養価が低いらしい。

 黄色は次によく採れるようだ。


 どうやら、スーパーマーケットでお買い物ができるらしい。

 ただし、その棚ごとに主というか、モンスターがいた。


 卵を売っているモンスターの所へ行く。

 白いキューブ1個と卵を3個交換してもらった。


 缶ジュースを売っているところもあった。

 白いキューブ1個で、3缶もらえるようだ。

 卵と比べてしまうと、大分安い気がする。


《自動販売壊すと、沢山手に入りますから。日持ちもしますし。生き物から採れるやつのほうが高いんですよ》

 気になって沢村くんに尋ねれば、調達のしやすさで値段が変動するようだ。


 自動販売機壊すの、犯罪じゃないか?

 そうは思ったけど、販売主もモンスターになっているのでという回答がきた。

 持ち主がいないなら、自分のものにしても罪には問われないらしい。

 

 ちなみに、一番高いのは米だった。

 主食だから皆食べたがるという理由で、高くても売れるようだ。


 黄色のキューブを1つ、米1袋に変えてもらう。

 コーラも買ったので、これで残りは白いキューブ3個だ。


 夕飯に俺が1個食べるから、残りは白2つか。

 明日、桃山さんと蜘蛛のところへ行く約束をしている。

 蜘蛛がいっぱいキューブを持ってきてくれるのを期待するしかない。


 しかし、米って重いんだよね。

 人間のときだったら、簡単に持ち運べたからうっかりしてたよ。

 店員のモンスターがいい人で、家まで運んでくれたからよかったけど。


 家に帰って、卵を使ってオムライスを作ることにする。

 フライパン重くて、俺の手じゃ支えきれないことに今更気づく。


 しかも、炎って触手には大敵なんだな。

 水分が削り取られていくよ。

 お肌がすぐカサカサになる。


 対策として、水をいっぱい飲んでおけばいいと知った。

 しかも、気づいたんだけど。

 水を大量に飲むと体積ふくれるっていうか、体が大きくなる。


 ただ、その分密度が薄くなるのか、色薄くなったけどね。

 俺の意志が体に伝達しにくいようで、動きも鈍くなる。


 まぁ、それでもどうにか、仁葉に手伝ってもらって。

 とうとう、オムライスが完成した。


 “おいしい?”

 スマホで尋ねれば、仁葉は大きく頷く。


「うん、おいしいよ! ありがとうパパ!!」

 喜んでくれたみたいでよかった。


 明日の朝ご飯は、残ったご飯でおにぎりをつくろう。

 そんなことを考えながら、仁葉とのひとときをすごした。 

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