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4日目・夕方 VS蜘蛛

本日3回目になります。

おおまかな世界観説明が終わったので、明日からは回数が少なくなる予定です。

 桃山さんのお仕事は、『人間化復活装置』を探すこと。

 この捜索をすると、給料としてキューブが支払われるらしい。


《他にも仕事はあるよ。他にも子供達の食料を調達したり、授業をする奴らもいる。元々頭のいい奴らは、研究を続行したりしてるね》

 自分に合ったものを選べばいいよと、桃山さんは言ってくる。


《この捜索の仕事は、結構わりがいいんだ。モンスターを駆除してキューブを貯めながら、自分のペースでできるからね》

 端末を見ながら、桃山さんは歩く。

 赤い点の方向へと向かっているようだった。


《この赤い点は、確かモンスターですよね?》

 先生の家に行ったときに、習っていた。

 そうだよと桃山さんが頷く。


《モンスター倒したことある?》

《いえ、ないです》


 素直に答えれば、じゃあ初陣だねと桃山さんの声が笑った。

 ちょっと待ってほしい。

 いきなり戦闘とか、心の準備ができてないんですが!!


《大丈夫。今日は見学だけで、実践しろなんていわないから。触手系には何パターンか戦い方があるんだ。覚えていて損はないし、いざってときに娘さんを守りたいだろう?》


 そう言われて、はっとする。

 確かに今の俺には、戦う術がなかった。


《おっ、俺達の前に誰かが戦闘を始めたみたいだね》

 桃山さんの端末で、赤い丸の側に青い丸が現れる。

 これは、機関に所属している誰かが戦闘中だということだ。


 見れば、小学校高学年くらいの女の子が、モンスターと戦闘していた。

 彼女自身、刀のようなものを手にしている。


 背中のランドセルからは、顔のついた可愛い緑の生物が顔を出していた。

 たぶん、あれも触手の一種なんだろう。


《彼女は有名なハンターで、実力は折り紙付きだ。彼女が攻撃、触手であるパートナーがサポートに回って、モンスターを倒すんだ》

 桃山さんの解説を聞いている間に、彼女がモンスターにトドメを刺す。

 すると、モンスターは悲鳴を上げて倒れた。


 さらにそこにトドメを刺せば、モンスターの姿が消える。

 代わりに小さなキューブが、コロコロとたくさん姿を現した。


《高学年の子は寿命の関係で親がいないことが多い。自分で触手パートナーを見つけて、守ってもらう代わりに、彼らの糧であるキューブを集める子がほとんどなんだ》


 そういえば、子供達の親である機関の人間って短命なんだっけ。

 16歳で子供を産んだとしても、最大で子供が中学生になるまでしか生きられないんだよな。

 高学年の子達の親は、隕石が落ちる前に亡くなってるってことか。


 触手って戦おうにも、移動が困難だからなぁ。

 共存するにはいいのかもしれない。

 妙に納得してしまう。


《まぁ、俺は戦闘向きな能力持ってないから、彼らのような戦い方はできないんだけどね。近くにモンスターが増え始めたから、次見学に行こう》 

 桃山さんに連れられて、次の現場へ行く。


 蜘蛛のモンスターがそこにいた。

 どれくらい大きいかと言えば、五階建てのビルと同じくらいでかい。

 もはや怪獣だ。

 けど、微動だにしない。


《あの蜘蛛なら、うまくいくかも。俺がやってみせるね!》

 そう言って、桃山さんは俺を降ろすと2つに分裂する。

 一方をぶにぶにとした桃色のトンボへと変形させた。


 形だけ変えても色は変わらないらしい。

 ちょっと不気味だ。


《このトンボを、あの蜘蛛に食べさせるんだ。ただ、飛べるわけじゃないから難しいんだよね》

 2分の1サイズになった桃山さんが、俺の隣で呟く。


 蜘蛛はビルとビルの間に巣を張っている。

 トンボ姿の方の桃山さんは、トンボにしてはありえない動きでビルをつたい、自分からわざわざ巣にかかった。


《何してるんですか!!》

《まぁ、見ててよ》

 蜘蛛がトンボ姿の桃山さんを、糸で捕まえ口に含む。

 俺の隣にいる桃山さんが、ガッツポーズをした。


《このまま食べてくれれば、あの蜘蛛は俺の操り人形になるんだ》

 桃山さんの言葉に、触手系モンスターのスキルを思い出す。

 確か【分裂通信】というスキルで、自分の体の一部を食べた相手に、直接語りかけることができたはずだ。


《単純な昆虫系モンスターは、俺達の指令を自分の意志と勘違いしやすい。だから狙い目なんだよ》

 なるほど、自分の身を食べさせてモンスターを手下にするってわけか。

 そんな戦い方もあるんだな。

 感心していたら、蜘蛛はトンボ姿の桃山さんを口からペッと吐きだした。


《やっぱりダメか。触手系モンスター、美味しくないからバレちゃうんだよな。飲み込んでくれればこっちのものなんだけど》


 そこまでいくことは、滅多にないらしい。

 モンスターにとって、食べると操られてしまう触手は毒のようなもの。

 本能でわかるのか、はき出してしまうようだ。


 桃山さんがガッカリした声を出す。

 そこでピンとひらめいた。


《桃山さん、あのトンボこっちに連れてきてくれます?》

《いいけど?》


 使うのは、俺のテイストコピー。

 トンボの味は知らないんだが、多分焼いたカワハギみたいな感じかな?

 過去に食べたものでも、再現できるかが問題なんだけど。


 集中して、カワハギの味をイメージする。

 俺の色が香ばしい茶色に変化した。


 おっ、いけそうだな!

 食欲をそそる香りがする。

 体の一部をちぎって、薄くトンボにコーティングしてみた。


《なんかいい匂いがするね。そういえば、さっきコーヒー飲んだときも、色変わってたっけ。味や匂いをコピー出来る能力なの? はじめて見たよ》

 これならいけるかもと、桃山さんも乗り気だ。


 もう一度、蜘蛛に偽トンボをけしかける。

 そしたら俺達の思惑通り、飲み込んでくれた。


《これでこの蜘蛛は、俺と君の二人のいうことを聞くようになった。蜘蛛、おいで》

 桃山さんが命令すれば、蜘蛛がすぐ側までやってくる。

 でかいし、怖い。


《吸収すれば、この蜘蛛が持っているスキルが手に入る可能性がある。倒してキューブにするのもありだな。こいつなら相当な数のキューブになる。生かして手下のように使うのもよしだ》

 桃山さんはご満悦だった。

 どっちがいいと聞かれたが、悩む。


 今みたいな敵の倒し方だと、襲われてきたとき対処はできないんだよな。

 かといって、こんなでかい蜘蛛だと手下としては手に余る。

 連れてあるく護衛としては、不向きだ。


《こんなでかい蜘蛛を飼う余裕はないんで、キューブにしたほうがいいのかなぁ》

《別に飼う必要はないよ。モンスターを狩って俺達に進呈するよう命令しとけば、勝手にキューブが手に入るからね。君がそれでいいなら、俺と君のモンスターとして機関に登録しておくよ》


 なるほど、キューブを集める要員としてつかうのか。

 桃山さんの意見を取り入れ、俺達は蜘蛛を手下にすることにした。

今回登場している「ハンター」は、9日目にもらった焼魚あまね様のものを参考にさせていただいてます。焼魚あまね様、ありがとうございます!!

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