3日目・夕方 先生
★2017/02/05 先生の設定をわかりやすく追加しました。モンスター同士は喋ることができます。
「どうぞ、お父様。お茶です」
《ありがとうございます》
仁葉が俺をテーブルに置けば、先生がお茶を出してくれた。
温かい緑茶だ。
ちょっと一口いただこうかなと、湯飲みをぷるぷると支えながら傾ける。
そしたら、先生が湯飲みを取り上げた。
「仁葉ちゃんのお父様は、触手慣れしてないんですね。先をこの中にいれて、吸えばいいんですよ」
触手慣れとか、はじめて聞く単語だな。
なるほどと思いながら、触手を湯飲みに伸ばす。
熱くないかな。
少し表面に触れてから、温度を確認して触手を湯飲みに突っ込んだ。
先から吸うイメージをすれば、俺の体内に緑茶が入ってくる。
ふう、体が温まるな。
というか体温が上がった気がする。
「パパ、温かくなったね!」
やっぱり仁葉が触ってみても温かいらしい。
そっと顔を近づけてきて、お茶の味がするかなと確かめようとしていたので、触手でおでこを軽く叩く。
《今は先生がいるからダメだぞ》
「はぁい、パパ」
叱られたというのに、仁葉はおでこを触って嬉しそうにしている。
ちなみに仁葉には、出かける前に俺の触手を少し舐めさせている。
なので、俺の言葉は伝わっていた。
「仁葉ちゃん、パパの言うこと聞いておりこうさんね。パパは優しい?」
「はい!」
先生の質問に、仁葉は即答する。
なんていい子なんだろう。
「お父様、仁葉ちゃんはお勉強も毎日頑張っていますし、ひとりで色々とできるんですよ」
《そうですか。嬉しいです》
何だか、三者面談みたいだな。
先生の褒め言葉に、仁葉が照れているのが可愛い。
「さてと。仁葉ちゃん、2階の共有スペースで遊んでおいで。お父様とお話が終わったら呼ぶから」
「はい、先生! パパ、終わったら約束覚えてる?」
先生に答えてから、仁葉が俺を見てくる。
《もちろんだ。公園で一緒に遊ぼう》
「うん!」
触手を伸ばして頭を撫でれば、仁葉は嬉しそうに部屋を出ていった。
◆◇◆
「仁葉ちゃん、パパと一緒だからか子供らしい顔をしてますね」
仁葉の後ろ姿を見送って、先生は好ましいというように言う。
《いつもあんな感じじゃないんですか?》
「アヤメさんが忙しい方でしたから、わがままを言って困らせてはいけないって思ってたんでしょうね。我慢しているというか、聞き分けがよすぎる感じでした」
だから、甘やかしてあげてくださいね。
そう先生は言いたいようだった。
ちなみに、先生に俺の言葉がわかるのはモンスター同士だからだ。
モンスターになっているらしいアヤメと会話ができるから、先生ももしかしたらと思っていた。
まぁ、先生はモンスターよりも、人間に近い外見だけどな。
コスプレしてる日本語が流ちょうな外国人のお姉さんって感じだ。
「アヤメさんから貴方の事は聞いてます。もっと早くに現れるかと期待していたんですが、こればかりは仕方ないですね。人間化が解けた後、モンスターとして覚醒するまでに差がありますから」
《隕石が墜ちてから、すぐに街がモンスターだらけになったわけじゃないんですか?》
質問すれば、違いますと先生は答える。
「人間化を解かれた後、しばらくは概念だけになってその場にとどまる者が多いんです」
《すみません、概念だけになって漂うってどういう意味です?》
「意志のない幽霊みたいな感じです。それがそのうち、モンスターとしてこの世界に実体を持って現れるんです」
俺が目覚めたとき、1年すぎていたのはそのためらしい。
「ただ、モンスターが実体化する際に、周りに漂っている者達も影響を受けます。モンスターが1匹現れたら、次々と現れる可能性があるわけです。前にモンスターを退治した区域なら、それもないんですがね」
そういえば、俺が目覚めたとき。
近くでは巨大なハチのモンスターと、サーベルタイガーみたいな奴が戦ってたっけ。
あいつらに影響されて、目覚めたってことか。
「私達がいる指定区域は、モンスターをすでに退治し終えた場所なので、基本的には安全です。お父様は端末をお持ちではないですか?」
《端末……スマホのことですかね?》
俺がスマホを取り出せば、先生がそれですと言って受け取る。
「これ、研究所が作った端末なんです。こちらの地図アプリを見れば、指定範囲がわかるようになっています。他には、ご自身の能力を解析してくれるアプリもあります。こういう日がくることを想定して、アヤメさんが開発していたんですよ」
さすがアヤメというべきか、かなり便利だな。
使い方を教えてもらって、能力解析アプリを見る。
種族:触手
レベル:3
特徴:水っぽい
触手本数:2
触手太さ:細い
触手特性:器用
【種族スキル】
★分裂通信
体を本体より分裂させて、相手の体に取り込ませることで、相手の意識に語りかける事ができる。強化すれば相手を操ることも。
★吸収
相手を捕食することで能力を取り込み、自分のものにする。
★固さ自在
現在は少し固くなる程度。訓練すれば持続、もっと固くなることも可能。
【固有スキル】
★テイストコピー
吸収したものの味を再現。強化すれば、記憶だけで再現できるように。
へぇ、俺ってこんな感じなんだ。
種族スキルは、触手モンスターが元々持ってる能力ってことでいいのかな。
触手を舐めさせることでおしゃべりできてたのは、【分裂通信】スキルのおかげか。
本来は、俺の体の一部を食べさせて使うスキルみたいだな。
なんかモンスターじみてるな……。
というか、俺の固定スキル。
全く戦うには適さないな。
味が変わるだけとか、意味ないだろ。
使いどころがわからないわ!
外はモンスターいっぱいだしさ。
自分や仁葉を守れるようなやつがよかったよ。
まぁ、愚痴を言ってもしかたない。
引き続き、端末の使い方を教えてもらう。
思ったより時間がかかってしまって、仁葉がお話まだ終わらないのと部屋に戻ってきてしまった。
「続きは今日の20時にでも。うちを訪ねてきてくれれば、夕飯をご一緒しましょう」
《わかりました。ありがとうございます!》
自分のことが知れてよかった。
後でまた来ますと約束して、俺と仁葉は先生の部屋を後にした。




