学園の権力
『生徒会長就任おめでとうっ カミカ』
『消えろ！ 悪役令嬢』
凌辱生徒会長、というフラグを立ててしまった事に落ち込んでいた俺に追い打ちをかけるレス。
あ、でも……ごちゃんの神々にヘルプを求めて書き込めば何とかなるんじゃないか？
『助けて、ガチで助けて！ 悪役令嬢』
少しスレの流れが止まり、やがて一つのレスが更新される。
『とりあえず、お前のおっぱい見ないとどうしていいか判断つかんだろ ゼウス』
……なんでだよ。
『おっぱいおっぱい！ 名無し』
『下着でも可 カラス』
微妙なレスが高速で付いていく。
「仕方ねえな……」
部屋にあった下着のカタログから、自分の体形っぽいモデルをスキャンし、うｐしてみた。
『ねえ、ＩＤは？ＩＤつけてよ カミカ』
こいつ……。お前、前に嘘うｐしてた癖になんで追い込んできやがるんだよ……。
「物質具現化！」
それっぽくＩＤの紙を持った水着写真を具現化して、うｐすると、異様に盛り上がっていた。
『ネトアたんの水着ハァハァ カミカ』
『オンライン盗撮サイトで見て偽だと解っているが、これはいい物だ 名無し』
そして、賢者タイムに入ったかのように、対策がちらほらと出始める。
『ようは、自分が思うようなエロゲにしてしまえば良くね？ 名無し』
伏線やフラグが張られてくるのを止めれば、違う形に収束しようと世界は動き始めるらしい。
俺を拉致して凌辱する変態がいるゲームだったとして、その変態を逮捕させたり学園から追放すれば浚われなくなる、と。
それ採用。
ただ、生徒会長というポジションでできる事はそう多くないだろう。相当な力を持たないと排除も難しいだろうな……。
貯めていた奇跡を使って、俺は一つのスキルを取る事にした。
コンコン。学園長室とプレートがかかった部屋をノックする。どうぞ、という声を聞いて、中に入る。
「ああ、今回生徒会長になった伯爵家のネトア君か。何の用だね？」
嫌らしい笑みを浮かべながら俺を舐めまわすように見る学園長に、俺は作り物の笑顔を浮かべる。
「学園長、びろーんびろーん」
学園長の目が渦巻きになり、その後でハートに置き換わる。魅了は完璧のようだ。
「ネトア君、私は学園長だが、君の事を一番大切に思っていたんだよ……」
俺が魅了の呪文を唱えると、学園長が荒い息をしながら、こちらへとにじり寄ってくる。
「汚らしい豚ね」
「！？」
学園長は、俺の罵る言葉を受けて、愉悦の表情を浮かべて座りこんだ。
貯めていた露出ポイントを使って、『女王様の命令』を手に入れたのだ。
自分に好意を向ける対象に発動、呪文は『汚らしい豚ね』だった。
何だかフラグを建築しているような気がしないでもないが、学園の権力は必要なのだ。
「ネトア様、この汚らしい豚に、この汚らしい豚にご命令を！」
ハァハァと息を荒げる豚、学園長に蔑んだ視線を送ると、すごく喜んでいた。
「まず学園内にカメラの設置しなさい」
この学園は、普通の学園である。もちろんカメラなんてない。
「カメラ……ですか」
「隠しカメラじゃないわ、堂々と通路や非常口に大きなカメラを設置するの」
まず、学園物でまずいのは治安悪化だ。
不審者が忍び込んだり、生徒が怪しい行動をとるのを防ぐという目的である。
ここは十八歳未満禁止の世界だ。
危ない取引をするような、クレイジーな学生が出てこないとも限らない。
もちろん抑止力として働けばいいのだから、隠す必要は無い。
生徒達や生徒達の親から反対が出そうだが、それは全てこの学園長に抑えて貰おう。
「できるわね？」
「はい、ネトア様のために必ず成し遂げて見せましょう……」
どうやら、こっちは上手くいったようだ。これで手に入る情報が多くなる。
「後は、学園が持っているデータベースの閲覧許可」
「それは無理です」
女王様の命令は、本人に軽く後押しする程度にしか働かない。本当に嫌がる事は無理にさせる事ができないのだ。
ビルから飛び降りろ、と言った強引な命令をした場合、ビルから飛び降りると面白そう、と思わせる事しかできない。
死にたくない、という意思には勝てる訳がないから、命令は守られないだろう。
「なら、調べたい情報を訪ねた時に、出していいか貴方の判断の元、出せない所は削除して私に渡すのはどう？」
「それくらいなら……しかし」
渋る学園長。色々と条件を変えてみるが上手くいかない。神々の知恵に頼るか……。
『なかなか折れてしないんだけど、どうすればいい？ 悪役令嬢』
『上目使いで、お願い！って言えば一発じゃね？ ゼウス』
そんなバカな事があってたまるか……。と、学園長の方を向いて、上目使いで言ってみる。
「お願い……学園長」
「ネトア様の頼みですから、仕方ありませんな。解りました」
『魅了されている人から、お願いされると理を超えて叶えたくなっちゃうよね ミスリル』
そういう物なのか。
そういう物なんだろうな……。
そして俺は生徒会長という権力と、学園長権限に近い権力を手に入れる事ができたのだった。
読んでいただきありがとうございました。
インフルエンザで頭が痛いです……。
