生徒会長!
「大変に気分が良い」
「どうしたの?ネトア」
昔やったゲームの影響が口調に出てしまっていた事に気づき、口を噤む。
危ない危ない。ごちゃんの会話から、はまったゲームの事を思い出していたのだ。
『
女子校潜入物エロゲに、男の娘が混ざるという背徳的なストーリーは、露出に通じる物があるかもしれない。
バレたらどうしよう、という潜入物。
見られたらどうしよう、という露出。
どちらも、見つかると変態と呼ばれる。どうかね?
露出していると女子校潜入物をプレーしている時のような快感があるだろう?
ゼウス
』
『よく解らんが、何となく長文で適当な事を言って俺を丸め込もうとしている事は解った 悪役令嬢』
言われるまでもなく、毎日の通学で露出ポイントを貯めるのは続ける事にした。
たまに、たまにだよ。エロゲの世界だし、露出を足掛かりにズルズルと堕ちる展開だけは勘弁して貰いたい。
「では、今季の学園の生徒会長を決めたいと思う。立候補者があれば挙手を」
生徒会長か……。そこまで言ってふと思いつく。
物質具現化も慣れると便利で、イメージ通りの物が作れるようになった。
物質具現化で作成したごちゃんねる端末を開き、書き込んで見た。
『生徒会長決めるらしいけど、なった方がいいの? 悪役令嬢』
『立候補しろ! ゼウス』
『生徒会長萌え! カラス』
『生徒会長はロマンですな ミスリル』
『エロゲの女主人公で生徒会長って……やるじゃんお前 名無し』
掲示板なのにツィート並みの即レスだった。この神々達は本当に仕事をしているんだろうか不安になる……。
まず、百合な会長と副会長のイメージが浮かんだ。 この路線ならいいかも。
エロゲ転生で、前世ではできなかった美少女副会長といちゃいちゃしながら百合な世界へと旅立つのだ。
立候補します、といいかけて、ごちゃんに書き込んでみる。
そもそもこの世界について誰よりも詳しく知っているのは、このごちゃんの住人なのだから。
『会長になったら権力使った百合展開以外にどんなのが考えられる? 悪役令嬢』
これも即レスだった。
『生意気な生徒会長を堕とすゲームしか浮かばなくね? ゼウス』
『むしろ百合展開とかの方がレアじゃね? 名無し』
『屈服する、抵抗するの選択肢でどっちもアウトな奴じゃね? カラス』
さっきまでなれなれって言ってただろ!?何なんだよお前らは……。
「立候補者はいませんか?」
教師が立候補者を募る。ちらちらとこちらを伺うような視線が来ているのは違うと信じたい。
主人公補正とかか?なんちゃらレコードとかで俺が生徒会長になるのか……?
「立候補者が居なければ推薦でもいいんですけど。一クラスから一人は候補者を出したいとの事ですので」
クレアの方を見ると、目が合った。
クレアを売る、もとい立候補させれば俺が生徒会長にならないんじゃないか?
クレアに、『推薦していい?』と口パクで言うと、クレアは大きく頷いた。
よかった、これで無意味なプレッシャーから逃れられる。
そして、俺が推薦しようと手をあげる前にクレアから手が上がった。
「ネトアさんを推薦します」
クレア!?なんで。なんで俺を推薦してんの?クレアの方を見ると、グッと親指を立てていた。
「なんで私を推薦したの!?」
「え、推薦してって言ってたんじゃないの?」
『クレアを』推薦していい?
『私を』推薦して、いい?
二人のすれ違った意思疎通により、ネトアの推薦が決まったのであった。
『推薦されてしまった件 悪役令嬢』
『いいじゃん、やっちまえよ 名無し』
『やっちゃえよ、やっちゃえよ 名無し』
まあ、生徒会長ってそんな簡単になれるものじゃないよね。
俺はどちらかと言うと目立たないキャラだし、絶対記憶能力もまだないから、成績もそこまで良くない。
クレアの方が頭が良いし、リーダーシップと言えば他にも優れた人は一杯いる。
どちらかと言えばコミュ障寄りで友達はクレアだけという俺なんかが生徒会長になれる訳が無いよね。
そうクレアに伝えると、クレアは、
「ネトア人気あるよ?頭も悪く無いし、実は美人だし」
「は?」
俺が美人だと言うのは初めて聞いた気がする。
あれでしょう?男が言う美人と女が言う美人は違うんでしょう?
激ぽっちゃりの力士みたいな女子でも、『KAWAII!』って叫ぶんでしょう?
「いや、美人だよ?婚約者が居たから騒がれなかっただけで、絶世の美少女だよ」
クレアが、何を馬鹿な事を、とため息をつく。
部屋に戻り、ごちゃんに書き込みをする。
『俺が美少女とか嘘を言われたんだけど、どう思う? 悪役令嬢』
『何を解りきった事をて言ってほしいのかなっ? カミカ』
『エロゲの女主人公で美人じゃないキャラって居ると思う? ゼウス』
『ありえないくらいの美少女だよ? カラス』
そう、なのか……?
鏡で見てもいまいち良く解らなかったが、これはエロゲ転生の弊害らしい。
自分で自分を見る場合は、前世の俺はそこまで容姿が優れて居なかったため、前世の感覚で美少女度にフィルタされているらしい。
『絵師が同じで顔も同じで似たような性格だけど、プレーするときちんとキャラの区別がついて、そしてなんだか感動してしまう。そんなエロゲあるじゃん? ゼウス』
『鍵、あるあ……ねーよ!?全部上手く個性出てんだよ!人生馬鹿にすんな!? 悪役令嬢』
あの人の絵は癒されるんだよ。
『魂の込め方が違えば、そのキャラは輝くんだよ ゼウス』
『魂とか良く解らんが、つまりどういう事なの? 悪役令嬢』
『お前が今までエロゲに向けた愛とか情熱。それがエロゲ世界で反映されて、容姿に反映されて見えるって事だよ カミカ』
数々のエロゲをライフワークかのごとくプレーしていた俺のエロゲへの愛……。
エロゲ博士と呼ばれ、エロゲをプレーした時間なら誰にも負けない、とブログを運営していた俺。
エロゲ先進国の日本で、攻略サイト運営のトップを走り続けていた俺。
もしかして。俺、すげー美少女だったりするんじゃね……?自分で鏡を見て盛り上がれないのが難点だがな。
開票結果、圧倒的多数の得票で、あっさり生徒会長に決まってしまった。
インフルでダウン中でしたので、少し間が空いてしまいました。
読んで頂きありがとうございました!