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婚約破棄だ!

 俺は翌日学校に向かいながら、ごちゃんの書き込みを思い出していた。


『使えないって事は無いと思う。物質具現化とか、便利じゃん 名無し』

 説明を詳しく聞いてみると、出した物が悪かったらしい。

 絶対に怪我をさせず気絶だけさせる金属たらい、とは神具の域だという。

 嫌だなぁ、そんな神具……。

『何だったら、普通の品物を具現化してみなよ』

 試しに、普通のボールとか人形とか、剣とか出してみた所、レイプ目にはならなかった。

 時間、場所を問わず対価ゼロで物質具現化は十分チートだ、と荒れた。

 精神力がなくなっても死ぬ訳でもなく、レイプ目になってちょっと病む程度のリスクでは、あり得ない能力らしい。

 感謝しろよ?と上から目線で書き込まれた。ちょっとイラッときた。


 魅了も使い所を間違えなければ相当強力らしい。

 殺意を持った人間に拉致されたとしても、魅了で抜け出し命令を聞かせる事ができるのだから。

 襲われそうになるのは、襲われないような状態、襲われないような状況で使えばいいとの事。

 ボディーガードが居る中で使ったり、本人が護身術でも持てばそれで終わりだと。

 確かにこれもそうだ……。

 使い方によっては便利なスキルかもしれない。絶望的な殺されるというリスクがそのまま襲われるリスクへと変わる。


『永遠の処女はどうなの? 悪役令嬢』

 スレの流れが十分くらい止まった後、緩やかに動き始めた。

『ロマンじゃん……。何がいけないの?処女厨大喜びじゃん?』

『魅了で襲われても、綺麗なままで居られるってのは凄くね?』

 確かに、魅了で襲われる可能性がある以上、いい人生を送るためには必要な能力かもしれない。


『奇跡ってどんなの? 悪役令嬢』

『奇跡は奇跡だよ、超凄いよ カミカ』


 凄い、のか……。能力を露出が嫌だから、と使わないのはもったいない……?

 どういう物なのかだけでも、使い勝手を調べておかないと話にすらならないだろう……。


『露出の定義は……? 悪役令嬢』

『自宅以外の他の人が来るような所で、見られたら恥ずかしい事をする、でいいんじゃないかな。

 見られるかどうかは別の問題で、見られないような小さい露出でもいいと思うよっ カミカ』


 通学中、人が居なくなった所で、そっとスカートを持ち上げて歩いて見る。

 露出ポイントが溜まっていくのが感覚的に解る……。人の気配がするとスカートを戻す。


 ぴら、すと

 ぴら、すと


 学校に着く前に、528露出ポイント溜まった。

「おはよう、ネトア!」

「おはよう、クレア」

 クレアと、クラスの中に居る令嬢達と挨拶を交わす。


 クレアは、初等部からの友人だ。美人で可愛くて性格が良い。前世の記憶が戻った今、まじまじと見ると、クレアのレベルの高さに舌を巻く。

 明るい性格で、美少女で品行方正。この学園で彼女にしたいナンバーワン、らしい。


 私はと言えば……

「ネトアと愉快な仲間達じゃないか。ネトア、今日も綺麗だね」

 しつこい公爵家の三男、アレスに挨拶をされている。

 アレスは現状の私の婚約者でもあった。


 当然、クラスの皆からは、空気が読めない痛い奴として認識されている。

 容姿も、でっぷりと肉が付き、お世辞にも格好良いとは言えない。

 これに攻略されるエロゲ展開だけは、辞退したい物だ。


 公爵家でも三男と言えば後を継ぐ展開は無い。

 そしてアレスには、才能や将来性という物がまるで見えなかった。


 愉快な仲間達扱いされたクラスメイトの女生徒達が顔を顰める。

 クレアだけは、にへらと笑っている。たまに言葉を理解できていないんじゃないのか?というくらいぽやぽやな印象だが、成績は学年で一番だったりする。

 頭の出来が違って羨ましい事で。

 来年になれば、私は絶対記憶能力が付く。もっとも絶対記憶能力が無くても学年二番は私なのだが。


 さて、この露出ポイントでどういう奇跡を起こせるのか……。

 適当に奇跡交換レートを見ていくと、面白い物が見つかった。500ポイントを使って実行してみる。


「婚約破棄だ!」

 急に何を……とクラスの皆が目を剥く。


「俺はもうネトアが嫌になった。婚約破棄だ!」

「それは本当に言っているので?」

「ああ、婚約破棄だ」


 あれだけネトアに執着していたアレスが急に狂ったように婚約破棄だという。

「そ、そんな……」

 俺が泣く真似をすると、アレスを責め立てる声が起きる。

「最低だわ」

「最低ね」


 非難されても婚約破棄だとしか繰り返さないアレス。


 家に戻ると、父親が憤慨していた。公爵家にいきなり婚約破棄を伝えられたのだ。

 身勝手にも程がある、と言った後で父は、絶対にもっといい男を見つけてやるからな!と息巻いた。


「いえ、男性は恐ろしいのでしばらくは婚約したくないのです」

 そう言うと、父は娘を傷つけた公爵の三男を罵り、私を可哀想にと慰めるのであった。


『ぶっちゃけ、奇跡で婚約破棄できてラッキーだと思っている 悪役令嬢』

『だよねぇ! カミカ』


 男の記憶を取り戻した俺には、男に抱かれるという事に抵抗があった。

 男の婚約者とかあり得ないから!


 あるとすれば、女性と見間違えるような男の娘でギリだから!


『百合に見えるけど実はノーマルって展開ですね、解ります ゼウス』

『小倉朝ピーですね、解ります 名無し』

『実は男で女学園への潜伏物ってのもありだったのでは? 名無し』


 好き勝手に盛り上がるごちゃんねる。

 今日のネトアたんjpgに削除依頼を出した後、俺はパソコンの電源を落とした。



婚約破棄だ!の一言が言いたいためだけに、婚約済にするのは良くある事ですよね……。

読んで頂きありがとうございました。


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