能力チェック
掲示板に書かれた俺の能力をまとめてみる。
・永遠の処女 再生
・魅了 びろーんびろーん
・奇跡 露出でチャージ
・物体具現化 使いすぎるとレイプ目になる
・絶対記憶能力 十八歳から
結構なチートではある。が、どれも微妙なチートではないだろうか……。
侍女のマリエを眺めてみる。
「どうしました?ネトアお嬢様?」
可愛らしく首を傾げるマリエ。褐色の肌の男爵令嬢で、俺の侍女だ。
ちょっと試してみようか……。
「マリエ、びろーんびろーん」
「……」
自分で言ってみて、何言ってんだろうと落ち込みそうになる。
効果が無かったらどういう風に言い訳をすればいいんだろう。そう考えていると、急にマリエの目が渦巻き状になった。
そして、顔をあげたマリエの目の中にはハートが浮いていた。
魅了した!?
「ネ、ネトアお嬢様……」
ハァハァ、と足をモジモジさせながら、頬を赤くしてにじり寄ってくるネトア……。
「ちょ……!?」
目が怖いんですけど、マリエさん……?
「も、もう我慢できません、ネトアお嬢様……」
「ちょ、ちょ?」
いきなり組み伏せられ、頬にキスされ、流れるように耳を甘噛みされる。
片手で俺の手を抑えると、そのまま、逆の手で俺の服のボタンをはずして脱がそうとする。
やばい、十八歳になる前なのに俺やばい!
「物質具現化!物質具現化!」
マリエの後方、組み敷かれているので天井、に向けて、物質具現化能力を発動させる。
金属のたらいが現れ、マリエの頭にゴン、と落ちた。コントでしかみないようなたらいの直撃に、マリエは白目をむいて気絶した。
物質具現化で作ったのは、気絶するようなたらい、と念じて作ったためか、比較的小さい衝撃なのに、あっさりと気絶してくれた。
つか、これ解除できるんだよね……?
このままのマリエと居たら、私の貞操が危ないんだけど……。
まあ永遠の処女だけどね。
掲示板に向けて、俺は書き込んだ。
「魅了後の解除方法希望 悪役令嬢」
「魅了解除は、くぱぁ、だよっ カミカ」
くぱぁ!?これ魅了解除されたら。いきなりくぱぁという変な人だと思われないだろうな!?
気絶しているマリエに向けて、くぱぁ、と唱えてみる。
これで解除完了か、と振り向くとレスが伸びていた。
「手の平と手の平を腰の位置につけて、ゆっくりひらきながら、くぱぁ、だよっ! カミカ」
「んな事できるか!? 悪役令嬢」
できるか、といいながらも、気絶したマリエに向けてくぱぁ、と唱える事にした……。
だって、魅了解除できてないと怖いんだもん……。
魅了は滅多に使わないようにしよう……。
「ネトアお嬢様?」
気が付いたマリエは、頭を押さえて立ち上がった。
「申しわけありません、なぜか眠ってしまったようですね……」
そして、マリエは少し怯えた顔をした後、そそくさと出て行った。
「なんで怯えられてたんだろう……」
その日の入浴時間で理由に気付いた。
目からハイライトが消えた……レイプ目の自分の姿が写っていた。
「こ、怖ええええええ!!!?」
鏡に向けてにこり、と笑ってみたが、おぞましい病んだ微笑みだった。
物質具現化の弊害だった……。
翌日、俺は目がきちんと戻っている事を確認して、外に出た。
後は奇跡か……。
露出……。するの?え、露出するの……?
いいか……別に奇跡が必要な事は無いし……。
永遠の処女 →要らない
魅了→魅了すると襲われる。解除も恥ずかしい呪文を唱えさせられる
物質具現化→レイプ目……恐ろしい目に変わる。
奇跡→露出しないと使えない
絶対記憶能力→年齢制限で使えない
そして俺は、五つも付与されたチートと思われる能力が一切使えない事に気づき愕然とした。
『ダメ神から授かったチートが全然使えない件 悪役令嬢』
そう書き込みをすると、速攻削除されていた。
『不適切な発言のため、削除しました。 ごちゃん管理人カミカ』
お前が管理人かよ!?アク禁とかされたら、本気で終わる……。謝罪いれとこう。
『すみません、少し熱くなってしまいました。ご迷惑をおかけしました 悪役令嬢』
俺は涙を流しながら、謝りたくもないカミカに対して、謝罪の書き込みをする。
『いやいや書き込みするネトアたん萌え ゼウス』
ゼウス……。あ、そういえば俺は監視されているんだった……。
もういいわ……どうでもいいわ……。
やさぐれた俺は、その日、一日中部屋にこもって惰眠を貪った。
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