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Not Found

開いていただきありがとうございました!

『そろそろ、ガチでクレアとの攻略チャート希望 悪役令嬢』

 いつものように、ごちゃんのスレに書き込んだ所……。

【このスレッドはもう書き込めません】


…?


……え?


…………はぁ!?


「ネトア、どうしたの?」

 頭に何も入ってこない。クレアからの呼びかけをどうやらずっと無視していたらしい。

「あ、あ。クレア、おはよう」

「何だか酷い顔をしているけど、何かあったの?」

 心配そうに尋ねるクレアに、首を横に振り答える。何でもないよ、と。


『そろそろ書き込める? 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


『tst 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


『みんないないの? 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


『これが書き込めたらエロい写真うp 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


 掲示板は、朝から全く書き込みが反映されない。

 カミカや他の神々達の書き込みも全く増えていない。


 総書き込み件数、1674万4999。半端すぎる位置でのスレッドストップだった。


 新スレになったか、と検索してみたが、新スレも見つからない。

 ごちゃんにいくら書き込んでもはじかれる。


 他スレッドにいるのかと探してみたが、他スレッドは使われている言葉が違うのか読めすらしない。

 記号の列挙にしか見えない掲示板をスクロールさせながら、俺はスクロールを諦めた。


 何だよ……


 何なの?これで終わりなの……?


 チート能力はそのまま残っているし、日常に変わりはない。

 声が届かなくなっただけだった。


『ぜ、ぜんぜんさみしくなんてないんだからねっ! 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


 毎日が新しい出来事があり、クレア、ラレア、アロワと馬鹿な事をしながら過ごす毎日。

 アスーとも仲良くなった。毎日押しかけて来て、相手をしているうちに言動から棘が取れ、普通にデレたのだ。


『クレアが俺を誘っていると思うんだ 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


『ヒロインのアスーがデレたら割と可愛かった 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


『……かゆ……うま… 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


 何か変わった事があるたびに、俺はごちゃんスレッドに書き続ける。

 無駄だと思っていながらも、いつか書き込めるんじゃないか、と。


 やがて、俺は学園を卒業する事になる。


『今日が卒業式な件 悪役令嬢』

【このスレッドはもう書き込めません】


『ワロタwww ゼウス』

『そのままビッチ化してダブル卒業ですね解ります 名無し』 

 そんな書き込みがあるんだろうな、と空想しながら。

 習慣のように、起きた出来事を書き込む。


 俺は毎日のように書き込めないスレッドへの書き込みボタンを押し続けた。


『クレアが婚約するらしい』

『ラレアが女性初の騎士団に入った件』

『アロワが領地を継いだらしいんだけど』

『アスー、アレスとくっついたわ』

【このスレッドはもう書き込めません】


 いつか復旧されるんじゃないか、と。


 そして、何年もの時が流れる。ルーチンワークのように書き込む俺。


「クレア、結婚おめでとう」

「ありがとう、ネトア」


 クレアは第三王子と結婚した。

 ラレアは騎士団長と結婚した。


 二人には子供も生まれ、俺はおうちのお荷物でニート生活をしていたら、

 お見合いの話がやたらとやってきて仕方なくアロワと婚約した。

 男の娘だし、長い付き合いだから、まあどうしても結婚しないといけないのなら、と。


 届かない。こっちの世界で記憶が戻ってから毎日のように書き込んだごちゃん。

 軽口の煽りレスや、馬鹿話のレスしか無かったけど、俺はそのレスに随分と依存していたらしい。


 その後も何度も書き込みをするが、ごちゃんが動く事はなかった。


『今日からアロワの家に行くし、ごちゃんに書き込むのはこれで最後にするわ 悪役令嬢』

【Not Found このレスは過去ログに入りました。閲覧するためには、100万奇跡ポイントが必要です】


 何年かかるんだよ……。

 俺はふざけんな、と書き込みしかけて、そっと端末を閉じた。

「ネトアお嬢様、アロワ様の家の馬車が到着しておりますよ……」

 そして俺の神々の掲示板、ごちゃん端末をそっと机の奥にしまった。


「あの、泣いていらっしゃいましたが、いつでも嫌になったら帰ってきていいと思いますよ」

「ううん、大丈夫。別に結婚が嫌って訳じゃないから」


『おめでとーっ カミカ』

『結局男の娘エンドかよ ゼウス』

『男の娘と美少女の組み合わせはノーマルでありながらある種の倒錯感があるよね ミスリル』

『スタッフロールの後の、その後描写までがエンディングですよ ゼウス』


 あいつらなら、こんな事を書きこむんだろうな、と。

 そんな事を考えていると、侍女のマリエが、あらっ、と声をあげる。


「ネトアお嬢様はそう、笑っている顔の方が素敵ですよ」

「うん、ありがとう、マリエ」

 ありがとう、ごちゃんねる……


 俺のごちゃんねらー生活は幕を閉じた。

読んで頂きありがとうございました!

あと1話(明日投稿予定)で完結予定です。

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