ヒロイン
開いて頂きありがとうございました
「ネトアって人はどこ?」
放課後、生徒会室に一人の少女が現れた。
「はい……って、うわ」
いかにも悪役のような勝ちの顔だちの整ったツインドリルだった。
「何よ、うわぁって。失礼ね」
不機嫌そうに鼻を鳴らし、少女は俺の席の横にあるパイプ椅子を広げ座った。
「私は一年、普通科のアスーよ。で、ネトアって人は誰なの?」
そういって、態度悪そうに大股を広げて座るツインドリル少女。
「えっと、ねえ。パンツ見えてるよ?」
アロワが忠告をすると、ツインドリルはアロワを睨み付けながら言った。
「あぁ?女しかいないのに、何を気にしてんの?」
「た、確かにそうだけど……」
そう言って俯くアロワ。
いや、違うからな。お前は男だからな……?
……本当に男だよな?
「パンツを履いて無かったら恥ずかしいかもしれないけどぉ?パンツは中身を見せないためにあるんでしょう?隠れてるじゃん」
パンツがあるから恥ずかしくないもん、か。
「クレア、パンツがあるから恥ずかしくないわ。ちょっとだけめくりあげてみない?」
「ネトア、お茶おかわりする?」
おかわりもってくるね、とクレアが席を立つ。
最近、クレアが冷たい。俺へのスルー能力がどんどん磨かれている気がする。
『クレアの攻略チャート希望 悪役令嬢』
『もうルートから外れてるだろ 名無し』
知らない間に攻略できなくなっていた。
『攻略不可能キャラだったのかよ、クレームいれるぞ! 悪役令嬢』
『エロゲマニアなのに何で選択肢おかしいの選ぶの? ミスリル』
『フラグ折ったのはアレだろ?先週遊びに行った時に、クレアの私服を似合うって聞かれてたアレだろ? ゼウス」
足を強調するような私服を着てきたクレアに対して俺は……。
・似合うね、と褒める。
・太ももがムチムチしててエロい、と褒める
どっちが正解か。考えれば解る。
だが、間違った選択肢を選んだ時のクレアの怒ったイベントCGの方が重要だったんだ。
怒ったクレアたん可愛いもの。
「だからネトアは誰よ、あんたなの?」
そう言って、ラレアを威嚇するツインドリル。
騎士科の体力担当のラレアが涙目になっていた。
せっかくできた剣を使う仕事なのに、なんで働いてくれないの?
「……ネトアは私だけど」
そう言って俺は手をあげる。
「そう、貴方がアレス様の婚約者の令嬢ね!貴方、アレス様と別れなさい!」
アレス……?ああ、公爵家の豚か。
「えっと、もう既に婚約破棄してるんだけど?」
「アレス様が優しいのを良い事に。アレス様を解放しなさ……え?」
ツインドリルは咳払いをして、俺を睨み付けた。
「そう、どうしても別れないつもりね!貴方の悪事を告発してやるわ!」
『何、このいらつくツインドリル 悪役令嬢』
『ヒロインじゃね?悪役令嬢って告発されるものじゃん? 名無し』
ヒロインなの?
こんな最後まで攻略されずに残りそうなキャラなのに?
ツインドリルなのに?
全員攻略しないとおまけシナリオ見れないから、仕方なくCTRL押しっぱなしで飛ばす奴じゃん。
特定キャラ不快ってタグ打たれる奴じゃん……。
改めてじっとアスーを見つめてみる。
「な、なによ?べ、別にあんたのためじゃないんだから。私のために告発するんだからね!」
勘違いしないでよ、と言うアスー。
おい、こら。ツンデレっぽい事を言わせればツンデレだと思うなよ?
「お茶入ったよ」
クレアがそっとお茶を持ってくる。お茶の中に不衛生な黒い虫が浮いていた。
「クレア、虫が」
「えっ、ネトア。私は無視なんてしてないよ。太いって言われても笑って相手してあげてるよ」
ぞくりとする笑顔を浮かべるクレアに、ありがとうと言ってお茶を横にどける。
「飲み干したら言ってね、洗わないといけないから」
「……うん、早く飲めって事ですね、解ります」
横にどけた虫入りのお茶をアスーが奪い取り……警告する間もなく口を付けた。
「学園を私物化して色々してるそうじゃない。いい気になってるんじゃな……え」
ブッ、と言い終わる前に口からお茶を吹き出す。
「な、なに?何だか動く変な物が……」
そして、コップの中の虫を見て……覚えてなさいよ!
とテンプレ捨て台詞と共に去っていった。
『俺を黒い虫から守ろうと現れたヒロインに感謝 悪役令嬢』
『ヒロインの攻略ルートも消えたんじゃね? ゼウス』
いや、それはいい。ツインドリルだったし。
「クレア、飲み終わった!」
「そう、じゃあネトア、洗ってきてね」
視線を合わせないように、嘲笑うクレア。
「……はい」
もうダメだ。じわじわとくる嫌がらせに俺のライフはゼロだよ……。
『自業自得すぎる カミカ』
『奇跡使えば? カラス』
なけなしの露出ポイントを使って、『相手に選んだ最悪の選択肢を変更する』を実行する。
「ネトア、お茶片づけるねー」
ふにゃん、とした癒される笑顔を見せて、クレアがコップを片づけはじめる。
やった、癒し系クレアが戻って来た!
『選択肢はきちんと選びましょうって事だね! カミカ』
『改めて攻略ルート希望 悪役令嬢』
その後、クレアの膝枕で、肉付きがあって気持ちいい、という選択肢を選んだ俺は、もう一度奇跡を使う事になったのであった。
お久しぶりです、一週間以上開けてしまいました。星馴染です。
実は、アロワですが、名前がワロアだったのです……。
本小説では、
ネトア(主人公)
ラレア(女騎士)
アレス(婚約者)
クレア(主人公の親友)
アロワ(ワロアと間違い、年上の男の娘)
アスー(ヒロイン)
と、六人のメインキャラを出すつもりでした。
アロワが、年上の男の娘。
兄貴と姉貴の間なので、『に』と『ね』の間であぬき。
『あ』を抜くんです。
繋げると、ネトラレ、レスクレ、ワロスー
と繋げる予定だったのですが、アロワって、ロワになっちゃう。
ロワスー……無茶あるよね……。
そんな事で、先週ずっと悩んでしまった星馴染でした。
掲示板の神様の名前も、言葉遊びを混ぜかけで辞めてます。
どんな言葉遊びかは聞かないでください。恥ずかしいので……。