第七話 パーレスの町
土日更新できず申し訳ありませんでした。できるだけこのようなことがないように頑張りたいと思います。
パーレスの町の門をくぐる。人は、王都や他の大都市ほどではないが、それなりに通っている。
まず、酒場に行こう。俺は、そう思った。この世界における酒場は、ただ単に酒や食事を提供するだけでなく、社交場でもある。俺に関する話ももう伝わっているだろう。話を聞くにはもってこいの場所だ。
俺は、酒場へと歩き始めた。かつて、この町を救ったときにうろつきまくったので、大体の店の位置は覚えているのだ。5分ほど歩くと酒場が見えてきた。マルキー・バーとある。まだ。三、四時だが、まあ誰かしらいるだろう。
扉を開けて、店内に入る。バーテンダーは初老の男。俺が助けた男だ。まあ。今は変装しているからわかるわけないのだが。俺のほかに七、八人いるようだ。
「ウィスキーを」
「かしこまりました」
この世界の食事と俺のいた世界、生物や科学面では、相当な違いがあったが、食事面では、あまり違いがないようだ。
ウィスキーが出てくる。この世界では十八から酒は飲んでもいいらしいので俺は、二年ぐらい前から、ときどき飲んでいた。まあ……ウィスキーは少し強いが。
酒をチビリと飲んで、周りの客の話に耳を傾ける。聞こえてくる話は他愛のないものが大半だが……
「おいおい、聞いたか? 勇者様、仲間を殺そうとして返り討ちになったらしいぜ」
ふと、見ると俺から少し離れたところで、酒のジョッキを持った町人風の男が二人で話している。
「え、なんでだよ?」
「なんでも、名誉を独り占めにしたかったとか」
「ええ? 勇者様は、この町を救ってくれたんだぜ。そんなことをする人には見えなかったけどなあ」
「いや、そういうやつに限って裏でこそこそやってるもんだぜ、屑だったのかもな」
「うーん……」
やはり、屑王はそんなことを言っていたのか……だがまだ、半信半疑といった感じか。まだ、望みはある。俺は、そう感じた。しかし、これからどういうふうに行動しようか。復讐を果たさねばならないのは当然だが……少しほとぼりが冷めるまで待ったほうがいいのか?それとも、準備を整え、すぐ切り込むか……いや、すぐ斬りこんでも、あの、仲間を装っていた裏切り者どもはともかく、王は、殺せないだろう。さすがに、一人で城にいる騎士、兵士たちを全員倒せる自信はない。
あの屑王の統治するフランツ王国の王都にいる騎士団はあまり強くはない。一応一通り、剣術の心得はあるが、魔法は、簡単な回復魔法程度しか使えない。この世界は長らく平和だったため、剣術や魔法の力より、容姿や家柄、教養が騎士にとって重要だったからだ。きらびやかな鎧や兜に身を飾り、民衆にその姿を見せて、王国の威厳を表すのが仕事のようなものだ。軍はまあ、それよりだいぶましだが、精鋭部隊は敵国との国境などにいるので、王都にいるのは、新兵や錬度が低い部隊ばかりだ。
だからといって、いくらなんでも一人で倒せるほどの数ではないのだ。城内には、相当の数がいる。
だったら、信用できる仲間を集めなおすか……だが、どうやって?
俺は、悩んだ。元の姿にもどっても、町民は信じてくれるか?いや、必ず何人かは、憲兵や駐屯兵のだれかに密告するだろう。
俺は、ウィスキーを飲み切り、銅貨を数枚バーテンダーに渡して店を出た。
今日はこの町に一泊して、これからのことはゆっくり考えよう。屑王や裏切り者どもはまだ俺が生きていること気づいているまい。猶予はたくさんある。まあまず、あいつらの居所を突き止めねば……まあ、屑王とその一族郎党は城に住んでいるので、それはまず、間違えようがないのだが。
俺は、宿屋が密集している通りに向かって歩き始めた。