第一話 憔悴
ウィンデンブル城内
進が二人目の復讐を果たした次の日の夜、王とトーマスが人払いをした城内で話し込んでいた。
「どうなっているのだ、トーマス! アランに続き、エミリアまでも殺されたとは!?」
「ハッ、襲撃に備えて警備兵を二人、派遣しておいたのですが……役に立たなかったようで」
アランが殺されてからもまったく焦らず、むしろ口封じができてよかったと考えていた王ではあるが、エミリアの死は想定外だった。その顔には、少し焦りが浮かんでいる。
「見つけたときの状況はどうだったのじゃ?」
「ハッ、派遣した警備兵二人が帰城しないのを不審に思い、エミリア邸に向かわせたところ、門の前で寝ている二人を発見、問いただしたところ、昨夜に不審な男に襲撃され、眠らされていたと申しまして……それで急ぎ邸内に入りましたところ、エミリアの直臣の護衛がこれまた眠っておりました。くまなく、屋内を探索すると、二階で死んでいるエミリアが見つかったそうでございます」
「して?」
「剣でメッタ切りにされていたそうです。氷の魔法で錬成した革鎧を着ていたそうですが、錬成が無効化されていたようです」
「錬成が無効化? それはつまり……火系統の魔法を使ったということではないか!」
「左様でございます。しかも相当、強力なものを使って……」
王は、玉座に深く沈んだ。これはもしや、本当にススムが復讐をしているのかもしれない。そしてそうなら、次に狙われるのは、確実に自分だ。そう、彼は考えていた。
「トーマス、おぬし、確実にススムめを始末したのではなかったのか!? これはどう考えても復讐としか思えぬ!」
常に冷静沈着な彼であったが、この時ばかりは感情をあらわにした。トーマスは黙ってうつむいている。
「……ともかく、この城の警備を強化するのじゃ。殺されてたまるか」
「……承知いたしました」
トーマスはうつむいたまま玉座の間を出て行った。
一人になった王は考えていた。魔王軍の進撃を食い止めることができず、民衆からの信頼が失墜していくのを防ぐべく異世界から勇者を召還、役目が終わったら死んでもらう。完璧な計画のはずだった。もしかして今、復讐を行っているのは生身のススムではなく、怨霊なのかもしれない。彼の心にはそんな考えさえ浮かんでいた。




