第十二話 二人目
とりあえず、一階を満遍なく探してみたが、いない。裏口や抜け道の類も無いようだ。この家のつくりから考えるに、さすがに俺の襲撃は想定していなかったようだ。まあ、それは当然といえば、当然だ。俺は、死んだことになっているんだからな。
エミリアを探すために、二階へ上る。部屋の扉をかたっぱしから開け、中に入り、くまなく探す。その結果……最後の一室まで来てしまった。二階から、飛び降りて逃げるには高すぎるし、ドアを開けて、一回の玄関から逃げようとすれば、俺が絶対に気づく。絶対、ここにいるはずだ。
ドアノブに手をかけ、回す。すると、開いた。え?
「凍てつく氷の剣よ、斬り裂け!」
ドアを開けた瞬間、エミリアの奇襲で、氷の魔法が炸裂した。体に痛みを感じ、思わず、倒れる。
「キャハハハ! 表にいた護衛は倒せても……私には勝てないわ!」
ふふふ、そんなことを言って、油断していると……
「甘いんだよ! こんなところで死ねるか!」
俺は、腰に下げていた剣を引き抜き、エミリアを斬りつける。これで死ぬとまではいかずともダメージは与えられるはずだ……。
だが、そんな様子はない……なぜだ? なぜ、なぜだ?
「キャハ、ハハハ! そんな剣ごときで私を殺せるとでも? 甘いのはそっちよ!」
もういちど、斬りつける。だが、まったく効果がない。
「だから……無駄っていってんのよ! 凍てつく氷の剣よ、斬り裂け!」
エミリアの氷の魔法が、俺の体にもう一度、炸裂する。元勇者の俺でもさすがに、エミリア自慢の氷の魔法を二回喰らったら、キツイ。味方の時は、あれほど頼もしかったものが今になって、自分に仇するとは……皮肉なもんだな。
「元勇者もこれまでね! おとなしく、生きていればよかったものを……変に復讐なんて、考えるからよ!」
「……聞かせてくれ。なぜ、俺の剣の一撃が効かなかったんだ?」
「アランが死んだと聞いたとき、万が一と思って、防具を作っておいたのよ……私の氷の魔術で練成してね!」
氷の魔術で練成? そこまでのことができたのか……甘く見すぎていたな。アランの時があまりにも簡単に成功してしまったから。ん? 氷の魔法? もしかして……
「さてと……無駄話もこれまでよ、もう一度、死んでもらうわ!」
エミリアがとどめを刺そうと、俺に杖を振り上げてきた。
その一瞬の隙に、俺は杖を取り出した。
「大火!」
俺の最後の抵抗ともいえる、渾身の魔法を唱えた。杖から放たれた炎は、エミリアに直撃した。
「キャッ! くう、やったわね!」
エミリアはそれなりにダメージを負ったようだ。氷の魔法で練成したものなら、火の魔法で攻撃すれば……と一か八か、唱えてみたら、成功した。まだ、こんなところで死ぬわけにはいかない!
エミリアが俺を攻撃しようと、杖をこちらに、もう一度向ける。だが、俺はそれよりも早く、魔法をまた唱えた。
「大火!」
エミリアは炎をまともに食らい、倒れた。
「ざまあない、ここで死ぬのは、お前だ!」
「ま、待って! 助けて!」
「この期に及んで、命乞いとは……おとなしく、死ね!」
俺は、剣を振り下ろした。




