第十一話 邸内にて
エミリア邸の庭をまっすぐ入口に向かって進む。しかし、広大な庭だ。花が植えられ、噴水まである。贅を尽くしているもんだ。俺のおかげだな。代償を払ってもらおう。
邸内へと入る玄関へとたどり着いた。ノックをするのが礼儀だろうが、そんなことは今は関係ない。ドアノブに手をかけて回す。だが、開かない。内側から鍵がかかっているのだろう。こういうことは想定済みだ。強行突破あるのみ。
「炎よ、現れよ!」
杖を取り出して、おなじみの火の魔法をドアに向けて放つ。ドアの材質は木なので魔法のおかげですぐに燃え上がった。
完全に燃え尽きるのを待って、水の魔法で消火し、突入した。
すると、中で待っていたのはエミリアではなく……屈強そうな男五人だった。
「貴様、アランだろう。エミリア様に手を出そうとしているんだろうが、そうはいかん!」
男の一人が言う。
「ここで死んでもらおう、反逆者め!」
もう一人の男が言うかいなや、五人の男が腰に下げていた剣を抜き、襲い掛かってきた。
俺は、さすがに白兵戦では不利なので、後ろに下がりつつ、必殺の魔法を唱える。
「大火!」
ドアを突破するときの炎より大きな炎が男たちに襲い掛かる。炎が体に燃え移り、苦痛の表情を全員が浮かべ始めた。たが、構わず突進してくる。忠誠心が厚いな。俺は斬撃に備えて、トムにもらった剣を引っ張り出す。
「おりゃあ!」
男の一人が斬りかかってきた。剣どうしがぶつかり合い、音がする。
「エミリアってのは、お前らが想像しているような人間じゃない。俺を裏切った屑女だぞ!」
「黙れ! 裏切り者はお前じゃないか!」
どうやら説得は無理そうだ。他の男たちも次々と斬りかかってきたので、またもや後ろに下がる、だが、さきほどの魔法で相当なダメージを受けたらしい。あきらかに様子でわかる。
「もういいだろう……こんなところで、あいつのために死ぬことはない」
「くそっ、黙れ、黙れ! エミリア様はか弱いお方なんだ! 俺たちが守らないと!」
完全に騙されているようだ。かわいそうだが……まあ、あの外見なら騙されても仕方がない。
俺は警備兵二人に使った、闇の眠りの魔法をもう一度使うことにした。だが、剣を持った男五人に迫られている状況では、危険すぎる。もっと距離を取らなければいけない。
「くっ……これは少し、厳しいな……今回はいったん退却するぜ! エミリアめ、必ず殺してやる!」
即興で作った捨て台詞を吐き捨て、男五人を騙すべく、剣を地面に投げ捨て、背を向けて全力で元来た道を戻り、逃げるふりをする。
「待て! 卑怯者!」
「正々堂々戦って死にやがれ!」
男たちが罵声をこちらに浴びせながら、案の定、追撃してくる。
こんなに面倒なことになる前に闇の眠りの魔法を使っておけばよかったという考えが一瞬、浮かんだ。しかし、それはすぐに消えた。どうでもいいような強さの魔物や外見だけの騎士などなら、あの魔法はすぐに効果を発揮する。だが、それなりの強さの相手にかけようとすると、効かなかったり、かかるまで長い時間がかかったりするからだ。
男たちよりは、俺は足が速い。それなりに距離を取って、俺は魔法を掛けた。
「眠れ!」
だが、男たちに効いた様子はない。
「は? なんだその魔法は?」
「俺たちにそんなもん、効くわけねえだろ!」
と、虚勢を張れたのも少しだけだった。魔法が少しづつ効いてきたのか……男五人はゆっくりと崩れた。
さて、これで邪魔な警備要員はいなくなっただろう。エミリアはどこかな? 早く、探さないと!




