とある兄弟のダンジョン攻略準備~双子吸血姫を賭けてオークション偏~
とある兄弟のダンジョン攻略準備~買い物偏~の続きです。
ブックマークしてくださった方、ありがとうございます。
これからも、このとある兄弟のダンジョン攻略シリーズを短編という形で続けるつもりです。
もし、良ければ読んでいってください。
★★★
「あ、主殿……ダメだ、そんな……」
薄暗い室内。ベッドの上でゼネリアが艶しい肢体をくねらせていた。
ゼネリアは、ダークエルフ族で長い銀髪に褐色の肌をしていてエルフ族特有の長い耳を持っている。
その目に毒過ぎる体は、今や面積の小さな下着しか身に付けていない。
「良いだろう、ゼネリア?ちょっとだけだから」
「だ、ダメだ。いくら主殿でもそればかりは……」
「ハア……相変わらずのツンデレだな」
顔を朱に染めて弱々しく手で俺を押し退けようとする。
「まったく……ゼネリアは、ご主人様の言うことが聞けない悪い奴隷だな」
そう言ってゼネリアの両手を押さえつけて一気に押し倒す。
「あっ……ああああぁっ!」
そして、俺の手がゼネリアの豊かな胸を包む下着を剥ごうとしたその時……。
「兄さんっ!一体何時だと思ってるの!?」
ドアを蹴り破るように入ってきたのは、白髪の小柄な少年。
我が弟、カノン・ステュワールだ。
「もう、夜中の2時だよ!?ただでさえダンジョン攻略が大変で疲れてるって言うのに、いい加減静かに……寝かせて……よ……」
最初は、勢いのあったカノンだがベッドの上にいる俺とゼネリアの格好を見て、段々静かになっていく。
まあ、そりゃあそうだろう。
なんたって今の俺は上裸の下着一枚だし、ゼネリアも胸と下半身を下着で覆ってるだけだ。その格好で俺がゼネリアを下に敷いているのだ。
そりゃあ……。
「な、なにをしてるんだっ!兄さんっ!」
マジメ君のあいつには、刺激が強すぎたかな。
「ふ、不健全だよっ!不潔だよっ!不埒だよっ!」
顔を真っ赤にしているカノン。
そんなカノンにゼネリアが必死の弁解をする。
「ち、違うんだカノン殿。これは、主殿が無理やり……」
「ええ?無理やり?そんなこと言ってゼネリアも抵抗してなかったじゃん」
「そ、それは……」
と、そこまで言ったところで俺は部屋の異変に気付いた。
温度が下がっている。
それも、洒落にならないくらい。
「か、カノン……落ち着け……」
「落ち着け……?ボクは、いたって冷静だよ」
そう言いながら右手を前に掲げるカノン。
その手から出現するのは、巨大な氷塊。それも、いつもより5倍くらい大きな奴。
「無理やり、女性を裸にして襲うなんて……もう、死んでいいよ?」
次の瞬間、カノンの右手から放たれた氷塊が俺の頭部を襲い、俺の意識は刈り取られた。
★★★
「嗚呼、死ぬかと思った……」
まだ、痛みの退かない頭を手で押さえながら俺は、愚痴る。
「あれは、主殿が悪いと思うぞ?」
あのカノンと同じくらいマジメなゼネリアは、神妙な顔でカノンの怒りを肯定していた。
「だからって、あそこまでやるか普通?」
納得出来ない俺は、苛立たしげに歩みを進めた。
広場に出た所で聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「さあ、買った買った!今のところの最高額は3800Gですぞぉ!まだ、払えるお方はいませんかぁ!」
いつぞやのゼネリアを売ってくれた奴隷商人だ。
「主殿、あれは一体?」
「ん?あれか?あれは、奴隷オークションだろ」
「オークション?」
今一つ理解できていないゼネリアに追加で補足してやる。
「そ、オークション。この中でも一番高い額を払う奴が商品を買えるって奴だ」
「なるほど」
で、今日は何を競りに掛けてるんだ?
ゼネリアに説明を終えた俺は、再び広場に視線を戻す。
そこでは、相変わらず奴隷商人が声を張り上げていた。
「さあ、どうです?今回の商品は、ヴァンパイアの双子の姉妹!貴重な吸血種の双子ですぞぉ!これ程の上玉は、滅多に手に入りませんぞっ!」
へえ、ヴァンパイアか……。
俺は、広場中央の舞台の上に鎖で繋がれて立たされている二人の少女を見る。
二人とも外見は、14歳くらいの幼さを残す顔つきだ。
片方は、青灰色の髪を頭の右側で束ねたサイドテールにしている垂れ目の大人しそうな娘だ。
もう、一方は金髪の髪をさっきの娘と逆の頭の左側でサイドテールにしていて、目付きは少しつり目で気の強そうな雰囲気を醸し出していた。
そして……二人とも結構な美人だ。
「……結構いいじゃん」
俺は、不適に笑って広場に向かう。
「主殿、あの娘たちをお買いになるんですか?」
「うん。なんだ、ゼネリア嫌か?」
少し、気になって聞いてみた。
「……いえ、別に」
少し顔を曇らせる。
どうやら、あまり賛成してはいないようだ。
そんなゼネリアの肩を掴んで俺は、優しげに言う。
「安心しろ。新しい娘が来ても、俺の一番の奴隷はお前だから」
「なっ!!そ、それなら別に構いません……!」
一気に顔を赤くするゼネリア。
これなら、大丈夫そうだ。
「さて、俺も参加するか」
そう言いながら競りをやってる広場に足を踏み入れる。
そして、周りの顔ぶれを見ながらニヤリと笑う。
「運がいい」
今は、平日の真っ昼間。
俺のようなサボり魔以外の冒険者は基本的にダンジョンに籠っている。
つまり、今競りに参加しているのは冒険者以外の人間。商人やちょっと儲かっている職人たちなどだ。
基本的に冒険者は、他の人たちより儲けがよくて金に余裕がある。
まあ、その一方で危険も大きいのだが。
ともかく、今はライバルが少ないと言うことだ。
「3800G!これ以上はいませんかぁ!」
「4000」
俺は、奴隷商人に声が聞こえるくらいの声で言った。
広場にいた人たちが一斉にこっちを見る。
「聞こえなかったか?4000だ」
その一言で前の方にいた、髭面の男が顔を青くしだした。
どうやら、あの男が今のところの一位だったようだ。
「よ、4100G!」
焦りを含んだ声が聞こえてきた。
俺は、いたって冷静に次の額を提示する。
「4300」
「よ、4400!」
「4500」
「4600っ!」
結構粘るな。
しゃーない。
「後でこいつを売るか」
そう言って俺は、腰に提げている数本の剣のうちの一本を鞘ごと外す。
俺は、いつも魔法剣(偽物)を買いまくってるため、大量の剣を所持することになっている。
「まあ、偽物でも一応魔法剣だからそこそこの値段で売れるんだよな」
今俺が外したのは、爆破の付呪刀(爆破の力を宿しているが爆発するタイミングが分からないロシアンルーレット的な剣)だ。
「4900」
「な、なに!5000……G」
まだ来るか。
なら、こいつも売るか。
今度は、白い鞘に包まれた剣を外す。
これは、氷結の魔剣(即死級の氷魔法を発動させられるが自分ごと巻き込んで発動する自爆テロ的な剣)だ。
「5500」
「ろ、6000G……」
よし、もう一本いくか。
三本目は、金色の刀身を持つ剣。
不死鳥の英雄剣(敵を切ると自信の体力が回復するが、この剣に斬られた相手も回復する能力があるので、悪い意味で超公平な剣) だ。
「こうして見ると、主殿の魔法剣って本当に使いどころに困る物ばかりですね……」
やかましい。
「7000」
「ぐ、ううぅ」
「おっと、終わりですかい!?………では、このヴァンパイア姉妹は、7000Gで冒険者の旦那が落札ぅ!!!」
★★★
「いや~、可愛いなぁ。ロリに目覚めそう」
手に入れた吸血姫の双子を見て俺は、最高の悦びに浸っていた。
だが、もちろん突然襲いかかったりしない。
ちゃんと関係を築いてからだ。
俺は、女性には紳士なんでね。
まずは、当たり障りのない……。
「ねえ、君たち名前は?」
すると、金髪の気の強そうな娘の方が答えてきた。
「あたしは、シュトリー。一応あたしが姉」
今度は、青灰色髪の娘が名乗る。
「ウルセラ……。それが、名前……」
随分と対照的な姉妹だな。
「よしっ!シュトリーにウルセラだな?俺は、デリク。デリク・ステュワール。で、こいつが……」
「ゼネリアだ。一応、デリク殿に仕えている奴隷だ」
軽く自己紹介を済ませる。
そこで、姉のシュトリーが口を開いた。
「ねえ、あんた。あたしたちを何に使うの?戦い?愛玩用?」
そんな、シュトリーに俺は苦笑して答える。
「別に何かを無理強いするつもりはねえよ。まあ、ダンジョン攻略の手伝いくらいはしてもらうけど。嫌がるならいいぜ?愛玩つっても、嫌がることはしないよ」
他意はない。
誰かに何かを強要するなんて間違っている。
他の誰よりも俺自身がそう思っている。
なら、それを誰かにさせるつもりはない。
「あんた、今までの人間と違う感じかする。悪意を……感じない」
「ウルセラ……あなたになら……仕えても……いい」
そう言って二人は、はにかむような笑顔を浮かべた。
「ウルセラ……あなたのことを……兄様……て呼んでいい?」
「あたしも、お兄ちゃんって呼んでいい?なんか、ホントにそんな感じがするし♪」
そんな二人に俺は、笑顔で。
「もちろんっ!」
そう答えた。
★☆★☆
「兄さん、起きて。朝だよ」
いつものように兄を起こしに来たカノン。
「いつまで寝てるの?いい加減におき……て……」
しかし、デリクのベッドの上を見てカノンは凍りつくことになる。
「んん……主殿」
スタイル抜群の体をデリクに絡ませるゼネリア。これは、まだ予想できた(したくなかったけど)。
しかし。
「ううん……お兄ちゃん。まだ、ねむいぃ……」
デリクの左腕に体を絡ませるシュトリー。
さらに。
「……兄様。ウルセラ……は……まだ……兄様と……寝てたいです……」
デリクの胴体に乗っかって寝ているウルセラ。
完全にカノンの予想の斜め上を行っていた。
そこで兄、デリクが目を覚ました。
「んん?おっ?おはよう、カノン」
「兄さん……なに……その子たち?どこから拉致って来た……?」
目の前の光景が信じられず、思わず良からぬ想像をしてしまったカノン。
「ん?ああ。シュトリーとウルセラのことか?こいつら、昨日オークションで競り落としてきた妹奴隷」
「妹奴隷って、兄さん……一体どんな趣味してるの!?」
両手にそれぞれ特大級の氷塊を生み出すカノン。
どうやら、今日も朝からキツイ一撃を食らわなければならないようだ。