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再開、そして……プラチナの賢帝

おはようございます。

朝のひと時、楽しんでいただければ嬉しいです。

    ◆

ゴゴゴーッ


格納庫の一番奥。


特別分厚い金属の搬入口で鈍い音がすると、かみ合わせが良かった二つの防壁扉がのんびりと左右にずれていく。


埃の臭いも蛍光灯の人工的な光もない暗闇のなかに奇怪に悪夢の運び屋たるプラチナの輝きが未だ顕然。


「やぁ、久しぶりだね」


ごく自然な会話から僕はプラチナの機体を見上げた。


――プラチナの賢帝――


無機質で血がかよわない刺々しい合成加工のナノ合成金属の塊。


『マスターの生体反応を確認。マスターのご帰還を心よりお待ちしておりました』


 流暢な口調で出迎えてくれた人工知能・月影。

幾重の装甲が咲き誇る華のように開化して僕の肉体を受け入れてくれる。

 

ちゃぽん――


少し狭苦しい操縦席にめいっぱいの真っ赤な液体。


僕の肉体は液体に溶けていく。


細胞のひとかけらまで。


記憶にない母親のお腹の中にいるような擬似安心感と擬似やすらぎ。


液体に含まれる麻薬成分の幻。


原始の世界に帰依した不思議な感覚。


液体のなかでは男も女もない。


ただの情報遺伝子。


そして、この液体こそ地球の海を青から赤にそめかえた原因。


どれだけの機体が落ちれば真っ赤になるのだろう。


沢山『地船』の深紅の液体を地球に沢山注いだ点は僕も貢献している。


僕と機体の最適化が終了。


僕の膨大な各種情報を遺伝子から取り込んだ月影は過去の僕のデータと重ねて更に自己学習していく。


やがて360度クリアーな視界が僕に伝わる。


僕の精神・肉体が人工知能・月影を媒体にしてプラチナの機体と一体化。

各種センサーも感覚の一部。


『マスター。前回のデーターと比較。シスコン度が異常数値。姉貴指数が変態及び残念な人レベルの三倍に膨れ上がっています』


 ほっといてくれ。


それは褒め言葉だから。


『心拍数上昇。マスター、冗談が通じなくなりましたか』


「月影。相変わらずだね」


『はい。しばらくどこぞの優しくないマスターに放置されていましたので国防省のデーターバンクにアクセスしてダークジョークを学習しておりました』


「はははっ」


 イヤミだろうか……いやいや、彼なりの気遣い。


人工知能に心配してもらうほど緊張していたのかな。


『マスター。トイレは済まされましたか? コックピット内での失禁及び脱糞は厳しく罰せられます……すみません、冗談です。そろそろ宇宙(そら)に向かいましょう』


 まったく薫陶の感じない月影の声色に僕はほっとしていた。


 漆黒の闇と真空が彩り重ねる宇宙(そら)


僕は機体をゆっくりと動かしはじめる。


 一歩、一歩、一歩に血塗るられた歓喜を奏でるために。


いかがでしたか?

SFらしくなってきますよ(☆∀☆)

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