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ネットの不調、期末試験と重なって、投稿が遅れました。
すいません。
音が聞こえた瞬間、とっさにマークは右手を背中の剣にやっていた。レナードも片手を得物にかけながら崖の下を覗いている。
足音を立てないように極力配慮しながら、かがんで歩いていく。左右に敵がいないのを何度か確認してから、下をのぞき込んだ。
そこにいるのは、六体の亜人種。
「ゴブリン……ですか」
「ええ。魔法を使えるヤツは……いなそうね」
そう呟いて、レナードはこちらを向いた。
「新入り、あんたは左から行きなさい。私は右から。ノルマは三体、OK?」
「了解です」
答え、マークは崖を左から回って少しずつ下っていく。
ゴブリンは暗所で生活するせいか、視力は低いが、耳が良い。なるべく音を立てないように坂道を降り、ゴブリン達の左側へ着く。
見れば、レナードも反対側の物陰へ辿り着いたようだ。敵は、どこからか運んできた草食の幼竜を解体していて、こちらへはまるで気付いていない。
もう一度レナードの方へ目をやる。すると、彼女はこちらへ開いた手を見せていた。意図が掴めずにいると、親指が折られた。
残りは四本、もしかしてと思いながら見ていると、予想通り人差し指が曲げられる。
つまり、あれはカウントダウンだ。
背から盾を外して左手で持ち、右手を背中の長剣へやる。同時に、レナードの伸ばしている指が三本になった。
あと二本。
静かに、深く、思いっきり息を吸っていく。
あと一本。
息を止め、足を曲げながら前傾視線を取る。
ゼロ。
同時、マークは息を吐き、突撃した。
「お、オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
吼えながら一気に接近し、一番近くにいたゴブリンへと長剣を抜きざまに斬り付ける。さすがに不意を打たれたらしく、その右腕はあっさりと斬り飛ばされた。
そのまま、悲鳴を上げる事も許さずに、ゴブリンの首を横薙ぎに叩き斬る。
「ゴォウ、グゥガァアア!」
「ギュウア、ギィガァアア!」
ゴブリン語だろうか、マークには理解できないやり取りを交わし、五体のゴブリンが一斉にこちらを向いた。
が、その隙をついて後ろからレナードが突っ込む。
「で、っやぁああああああああああああああああああああああ!」
左右の剣を閃かせ、一番後ろのゴブリンへと斬りかかる。左の剣がゴブリンの背を切り裂き、右の刃が背中から心臓を貫く。
仲間が二人同時に倒された事で、ゴブリン達は完全に浮き足立ってしまっていた。レナードとマークは、それを逃さずさらに攻め込んでいく。
レナードから目を離し、次の標的へと駆け寄った。
「グォウ、グァアアアア!」
一声吼え、手に持っていた棍棒を振り下ろしてくる。が、まだこちらへ目標が定まりきっていないのか、その勢いは大したことない。
左手の盾でその一撃をいなし、返しの一閃を放つ。だが、ゴブリンも後ろを気にするより前の敵を先に倒すべきだと判断したようだ。
左側へ流したはずの棍棒が、予想以上の速度で振るわれ、剣と激突する。無理な体勢で放ったためか、刃の勢いに負けた相手の得物が手からすっぽ抜けた。
今度はマークも剣を振るえる態勢ではない。そして、ゴブリンは武器を持たずとも人間を殺せるだけの爪と牙がある。
敵の口元に笑みが浮かび、爪が怪しく輝いた。
だが、マークは臆さずに、さらに一歩踏み込みながら円盾を突き出す。盾は丁度ゴブリンの顔面に叩き込まれ、敵の身体がふらついた。
斬撃によって生まれる隙を、盾攻撃で埋める事で、一回一回の攻撃で止まることなく、流れるように動き続けられる。
攻防一体、且つ動き続ける事で相手のターゲットをずらし続ける。それが、マークの基本スタイルであり、最大の武器である。
頭・腹と、とさらに二度盾を叩き付け、一歩出ながら左から右へ袈裟懸けに剣を払う。胸の辺りを浅く抉り、ゴブリンの口からか細い悲鳴が漏れた。
さっきからゴブリンは全く攻撃できていない。どうにか動こうとはしているものの、連続して脳を揺さぶられているためか、身体が美味く動かせないようだ。
マークが、一方的に有利だった。
更新は7/27を予定しています