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とあるマニアの狩猟記  作者: 高空天麻
とある少年少女の邂逅
11/21

1-10

一章終幕です。

「あ、二人とも無事だった!?」


 必死にその場から逃げようとする馬を、馬車が横転しない程度の速度で走るようになだめながら走らせ続けて一時間。

 命からがらと言った様子でギルドに戻った二人を見て、リリィが真っ先に駆け寄ってきた。それに、普段は騒々しい酒場が静寂に包まれる。


『おお、アイツら戻って来れたんだな……』

『賭けは俺の勝ちだったな。ほら、今日奢りだぞ……』

『へえ、あっちの子、意外にやるのね』


 そんな小さい声と、好奇心に溢れた視線があちこちから注がれる。

 注目の的になることに慣れてないマークはおろか、レナードさえも居心地悪く感じる雰囲気の中、近付いてきたリリィが口を開いた。


「二人が依頼を受けてここを出た後に、他のギルドから“女王”が例年よりも早く南下してきたって報告が来たの。そのせいで、今あの森は一部の上級ハンター以外立ち入り禁止になってるわ」


 なるほど、道理でいきなり“女王”と遭遇することになったわけだ。

 そんなことを考えながら顔を見合わせた二人に、重ね重ね安心したように息を吐きながら、リリィは続けた。


「でも、間に合って良かったわホント。女王級のワイバーンなんて、上級ハンターでも手を焼くもの。あなた達が会敵してたら、どうなってたか……」

「会ったわよ、“女王”に」

「え?」


 レナードの言葉に、今度こそ酒場が完全な静寂に包まれた。

 その雰囲気に、レナードが勝ち気な笑みを浮かべてこちらを向く。


(うわぁ……嫌な予感……)

「ほら、見せてやんなさいよマーク。今回の獲物を」


 予感的中。

 とはいえ、どのみち報告はしなければならない。背中に滴る汗を感じながら、マークは荷物袋から二つの物を取り出した。

 右手で取り出したのは、真空保存袋に入れられたクックゴアの脊髄。

 左手で持っているのは、激戦の中で偶然手に入れた、何枚かの“女王”の鱗。

 両方とも、狩りをしなければ手に入らない物だ。

 特に、クインバーンの鱗は滅多に生え替わらないことで有名な代物。それを考えれば、彼らが“女王”と会敵したことが嘘じゃないことが証明される。

 そこで、レナードは不敵な笑みを崩さないまま、言った。


「報告するわ。リホリディアに出現したクックゴアは、無事に討伐完了。“女王”はさすがに狩れないから、途中で離脱したけどね」


 その報告に、リリィを初めとする酒場にいた一同の目が丸くなる。そこへ、さらにもう一押しが加わった。


「無事に戻っていたか。良かった良かった」


 後ろから声を掛けられて振り向くと、回復薬をくれた青年が立っていた。その後ろには、他の三人も立っている。


「“玉座を奪う(クラウンラプター)”だ……」


 そんな風に誰かが呟いたのを聞いて、マークは疲労に沈んでいた思考が再活性するのを感じた。

 “玉座を奪う者”は、ホルディアを含めた近隣ギルドの中では三本の指に入ると言われるほどの強豪グループだ。

 所属している者は、一人で並みのハンター十人に匹敵すると言われるほどの実力を持っており、雌飛竜では最強ランクに位置する“女王”や、その番である雄飛竜“王者”など、普通のハンターでは太刀打ちできないような高難易度モンスターを狩っているグループ。

 そして、その強者揃いのパーティを率いているリーダーの名が、


「……ウィリアム・ウェル?」


 小さな声で発されたマークの疑問に、目の前の青年は薄く微笑んだ。

 ウィリアム・ウェル。通称、“紅の英雄”。

 数年前に狩猟ギルドへ参入してから、一気に名を上げていった期待の星だ。“王者”キングバーンの素材で作られた“王者”シリーズの装備を身に纏い、常に最前線で戦うその姿をマークはかつて見たことがあった。

 空を舞い、敵を討つべく爪牙を振るう“王者”。

 それに、真紅の防具と片手直剣を頼みに相対するウィリアム・ウェル。

 その写真を見て、彼はハンターを目指そうと思ったのだから。


「リリィ、“女王”は撃退した。また姿を見せたら、報告してくれ。これ、一応の証拠ね。それと……」


 ウィリアムは左手でリリィに何かを手渡しながら、マークとレナードへ目を向ける。


「僕らがもらう報酬の二割、彼らへ渡してもらえないか」


 それに、マークは大きく目を見開いた。


「……何でですか?」

「それだけのダメージを、君達はあの“女王”に負わせていたのさ。魔力装甲まで引きずり出していただけでなく、その状態の“女王”と戦っていたのは評価に値すると思うよ」


 ウィリアムの言葉を聞いて、周囲のどよめきがさらに広がる。

 “女王”の名は、それほどに強大なのだ。並大抵のハンターでは太刀打ちすら出来ない。だからこそ、彼女と対等に戦ったハンターは相応の実力があると認められる。

 ウィリアムは言いながら、リリィが手渡した袋の一つをこちらへ渡してくる。受け取ったそれはずっしりと重かった。これほどの金額を手にするのは、生まれて初めてかもしれない。

 レナードと顔を見合わせ、一斉に礼をする。それに、ウィリアムはニッコリと微笑みながら、言った。


「君達は未来ある、有望なハンターだ。僕がそれを保証しよう。装備を充実させ、経験と知識を積んでいけば、確実に僕らと同じ所まで辿り着くだろう」


 だが、と一転して静かな、しかしどうしてか耳に残る不思議な声で言葉を紡ぐ。


「勇猛であることと、無謀であることは、もちろん違う。自らの感情を取り違えないことだ」


 その言葉に、マークは視線を落とす。

 あの時、戦場に残って“女王”と戦うことを決めた時、自分は何を考えていただろうか。

 もちろん、死ぬ気はなかった。慢心もしていなかった。

 ただ、目の前の強敵と戦うことで知りたかったのだ。

 自分が飛び込もうとしている世界を。その中で生きている、強者を。

 その考えは、無謀ではないだろうか。初陣であるにも関わらず、自らの実力をわきまえていない行動ではないだろうか。

 今更ながら、そんな風に思えてきて。

 そんなマークに、ウィリアムはクスリと微笑んで肩を叩いた。

 驚いて、とっさに顔を上げる。しかし、青年は既にこちらから背を向け、仲間と共に酒場を去っていこうとする所だった。

 その背中から、「頑張れよ」という無言の声が発されているような気がした。


 その背中が消えてからもしばらく考えていたものの、すぐには答えが出そうになかった。

 勇猛であること、無謀であること。何を持って勇猛とするのか、どこからが無謀であるのか。きっと、それは経験の中で理解していくものなんだろう。

 何となくそんなことを思っていると、パシンと背中が叩かれた。


「やったじゃない、マーク。初陣としては、最高よ」


 そんな風に言いながら、レナードが満面の笑みを浮かべてくる。

 つんとした表情をしているせいでわかりづらいが、彼女は充分美少女の域に入る女の子だ。女子に対する耐性が皆無のマークには、その笑顔はどうにも眩しく感じられて、直視できなかった。


「??? どうしたのよ、目を逸らして」

「おや、おやおやぁ? レナードってば、マーク君の呼び方も話す感じも、狩りに出る前と全然違うじゃない? どうかしたのぉ?」

「な、なんでもないわよ!」


 幸い、深く突っ込まれる前にリリィがレナードに話しかけてくれたおかげで、こちらの顔が赤くなっていることには気付かれなかったらしい。

 深呼吸をしながら顔色を悟られないようにしていると、ひとしきりいじられた様子のレナードが疲れた口調で言う。


「何でもないっての……それより、エール二つちょうだい。あと、なんか適当に食べられる物もね」

「はいは〜い、後で席まで持っていくわね」


 イタズラっぽい笑みを残して、リリィは厨房の方へと歩いていった。フン、と鼻を鳴らしてレナードは空いている席の方へ向かっていく。

 その顔がほんのりと赤らんでいるのは、言わない方がいいだろうか。多分、言った所で何かしら面倒なことになるのが目に見えているから、知らないフリをした方が得策かも知れない。

 自分のことは棚に上げた思考を巡らせながら、マークもその向かいに座る。


「……エールって、僕アルコール飲めないんですけど」

「ああ、大丈夫よ。ギルドのエールは、アルコール無しだから」

「それって、ただの麦で出来た炭酸飲料なんじゃ……」


 そんな軽口を叩き合っている内に、リリィが銀のトレーに二つのグラスと大皿を乗せてこちらへ戻ってきた。


「はい、どうぞ。追加オーダーがあったらいつでも声を掛けてね。あと……」


 金色の液体がなみなみと注がれた杯と、チョコからハムまで多種多様な一口つまみが盛られている皿を置いてから、二人へ聞いてくる。


「今回の報酬はどうする? 今すぐ入り用なら、現金で渡すけど」

「あ〜、私はいいわ。装備の更新はまだ先だし。マークは?」

「……あの、受け取らない場合ってどうなるんですか?」


 その質問に、リリィとレナードは二人して一瞬きょとんとした表情になる。が、すぐに理由が思い当たり、今度は小さな笑みを浮かべた。


「そういえば、マーク君ってギルドに登録したばかりだったわね。“女王”なんてごっついやつと戦ってきた、なんて言われたから、忘れてたわ」

「そう笑うもんじゃないわよ、リリィ。あのね、マーク。ギルドはハンターのお金を管理する仕事も請け負っているのよ」

「利息はないから、純粋にサービスね」


 クスクス笑ったまま、リリィが説明を始める。

 ハンターはその仕事の性質上、たびたび家を空けることが多い。一応ハンターが使っているハウスには防盗機能があるものの、それとて完璧ではない。

 そうした状況の中、狩猟ギルドが作った制度がハンター財産保護制度だ。

 素材や装備といったものは足が付きやすく(特にオーダーメイドの装備は使用者本人の魔力刻印が行われるため、盗む者は皆無だ)、こういった場合に狙われやすいのは金だ。

 ならば、ギルドが一手に保管すれば、そういったトラブルを未然に防ぐことが出来る。


「ま、他にも現金を片っ端から酒と食べ物に注ぎ込んで、生活に行き詰まるのを防ぐ一種のセーフティにもなったりしてるわね〜」


 麦から作られた金色の液体(ノンアルコール)を一気にあおって上機嫌なレナードが、リリィの説明にさらに追加補足する。

 あまりに短絡的に聞こえるかもしれないが、そんなハンターがいないというわけでもない。

 ハンターになろうとする人間には、二つのパターンがある。

 食い詰めてならざるを得なかった者か、何かしらの目的があってなった者。

 後者の方はわりと計画的に収支を整えていく者が多いが、前者の方はなかなかの割合で目前のことにしか興味がない者も多い。


「ちなみに、ギルド内での買い物は、基本預金から引き落とすわよ」

「……じゃあ、預けておきます。今のところ、すぐに買う必要がある物もありませんし」


 ついでにこれも、と先ほどウィリアムから手渡された金も一緒に渡す。りょうか〜い、と答えて、リリィは席を離れていった。

 二人きりになった途端、会話がなくなってしまう。

 さっきまでニコニコと会話をしていたレナードも、視線を落としてしまっている。気まずさを紛らわすために、自分のグラスを手にとって思いっきり口に含んでみた。

 ……苦い。

 自分が子供舌気味なのは知っているが、それでもこんな飲み物を好んで口にするのだから、全くもって大人の世界とは未知の領域だ。

 若干だけ残っているプライドを総動員して表情を変えないようにしながら、グラスをテーブルへと戻す。その時、レナードの方から声が聞こえた。


「ねえ、マーク。あんたは、その、本気なの……?」

「へ?」


 視線をやるも、レナードは目を合わせようとしてくれない。

 よく見れば彼女の方が震えていることに気付いたかも知れないが、それに気付けなかったマークを責めるのは筋違いだろう。それほどに微細な変化だった。


「だから……もっと多くの世界を知りたい、もっと多くの世界を見たいから、ハンターになった。それは、本気なのね?」


 その言葉に、マークは思いっきり眉を潜めることになった。

 彼女の質問の意図がまるで掴めなかったから。彼がそういう理由でハンターになった、というのは狩りを始める前にも既に話した。マークにとってハンターになった理由はそれ以上にもそれ以下にも存在せず、本気もクソもありゃしないのだ。

 だから、彼は自分がバカにされているのかと思った。


「本気、ですけど。それがどうかしましたか?」


 横目でじろりと少女を見つめる。

 その視線には、ありありと怒りが見えていて。

 けれど、レナードはそれを見て再び笑みを浮かべた。


「……なんですか」

「ごめんなさい、バカにするつもりはないわ」


 言いながら、レナードが頭を下げてくる。

 それに、マークの怒りはアッサリと引っ込んだ。むしろ、そんなアッサリと頭を下げられたことに若干慌ててしまう。

 そんな彼の『焦っています』とわかりやすく書いている表情にもう一度クスリと笑って、レナードは彼の目を真正面から見つめた。


「私がハンターになったのは、もっと強いモンスターに会いたかったから、なの。より多くのモンスターと戦いたい、さらに強い敵を狩ってみたい。“女王”や“王者”のような、より高みにいる敵を見たいのよ」


 恥ずかしげにそういう彼女の瞳は、けれど輝きに満ちていた。

 結局、彼女もマークと同類だったらしい。何かしらの夢があって、ハンターを目指した者。

 自分の推測が間違っていなかったことを理解し、マークは思わず噴き出しそうになった。


「……何よ」

「ちなみに、レナがパーティーを組んでいないのって、もしかして……」

「最初は組んでたけどね。パーティーメンバーが、生活費を稼げればそれで良い、なんてぬるい奴らばっかだったから、抜けたのよ」


 フン、と鼻を鳴らして言う彼女に、マークは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 確かに、彼女の夢とそのパーティーメンバーの方針は真逆だ。合わないのが当然と言える。


「でも、あんたは違うんでしょ?」


 そういってこちらを見る彼女の瞳には、僅かな不安と緊張が入り混じっていた。


「あんたはこれまで見たことがない物を見ていきたい。でも、それには色んな所に行く必要があるし、その為にはモンスターと戦う必要も出てくる。私は色んなモンスターと戦いたい。互いの利害は一致してるはずよ。……だから、」


 マークの前に、手が差し出される。


「私と、一緒に組まない?」


 そういうレナードの顔は、僅かに赤くなっていた。差し出された手も、よく見てみれば微かに震えている。

 彼女と自分の戦闘スタイルの相性がいいのは、もう既にわかっている。目標の利害も確かに一致しているし、戦いの中でお互いの考えていることを何となく共有出来はじめているというのもある。

 それに加えて、これまで見たことがないような美少女が、自分を誘ってくれているのだ。

 断る理由など、どこにもないだろう。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 微笑んで、その手を握る。

 途端、レナードの表情がパッと明るくなった。今度こそその笑顔を直視することになって、マークの顔が逃れられないほどに赤くなる。

 が、その直後にレナードが何かに気付いたかのように手を引っ込めた。


「あら、あらあらぁ? レナードってば手なんか繋いじゃって、随分と積極的ねぇ。もしかして、もしかして……?」

「だ〜、そんなんじゃないっての! るっさいわねぇ!」


 リリィがニヤニヤしながら聞くと、レナードは先ほど以上に頬を紅潮させながらそう答えた。その表情があまりにも子供っぽく見えてしまって、マークも思わず噴き出してしまう。


「ちょ、何笑ってんのよマーク! それとリリィ、あんたも早くあっち行きなさいよぉ!」

「はいはい、邪魔者は退散しますよ〜。あ、マーク君、これメニューね」

「あ、ありがとうございます」

「それと……」


 と、そこでリリィはマークの耳元へ唇を寄せてきた。

 耳へ届くかすかな吐息に、健全な少年の身体が強張る。


「レナードをよろしくね。あの子、見た目に反してシャイなのよ」


 けれど、掛けられた言葉は予想に反して心配に満ちていて。

 何も言えないまま見上げるマークに「頑張ってね」とだけ言い残してから、彼女は去っていった。

 大人の色香に惑わされた思考は、言葉の意味をいまいちきちんと理解できず、何も答えられないままにリリィの姿を見送る。

 すると、軽い音を立てて何かが飛んできた。

 見てみれば、ナッツを片手に持ったレナードが心なしか頬を膨らませてこっちをジトーっと見つめている。


「今、リリィに何を言われたのよ?」


 そう尋ねてくる彼女に、マークはああなるほどと納得してしまう。

 これは、ずっと見ていれば心配かも知れない。リリィの年は知らないが、多分ちょっと生意気な妹のように見えてしまうのだろう。

 その感覚は、マークにも理解できた。

 とは言え、彼には良い兄になる気など毛頭ない。

 ほんの少し意地悪な笑みで、レナードの方を見て答える。


「レナは恥ずかしがり屋だから、優しくしてあげて、ってさ」


 んなっ!? とレナードの顔が一気に真っ赤になった。

 それを見て、マークは堪えきらずに大口を開けて笑ってしまう。

 夜は、まだまだ長くなりそうだった。




「ふうっ……これでレナードも義務が終了、っと」


 書類にサインとギルドの判を押し、分厚いファイルへしまう。

 小さく息を吐くと、後ろから同僚に声を掛けられた。


「お疲れ様、リリィ。これで問題児の件は解決?」

「ええ。それに、パートナーも見つけられたみたいだし、本当に良かったわ」


 一瞬だけ、あのこれからが楽しみな二人組を思い描いて楽しい気分になる。

 けれど、そうしてばかりもいられない。背後の同僚の方へ目を向け、口を開く。


「今回の“女王”の件、何か掴めたかしら?」


 声は低く潜められていたものの、相手にはきちんと伝わっていた。

 だが、もしかしたらというリリィの期待は、首を横に振られたことで儚く潰える。

 クインバーンは、数年に一度住処を変える習性を持っている。

 だが、昨日マークとレナードが会敵し、ウィリアムが撃退した“女王”は去年リホリディアを離れたばかりの個体だった。

 無論、人はモンスターの習性を全て確認しきっているというわけではないから、これまでと違う習性が現れただけの可能性もある。

 だが、リリィはどうにも不安を拭いきれずにいた。

 今回の一件には、何か裏がある。そう疑わずにはいられない、何かが。

 同僚にも同じような感覚があったのか、その表情は浮かない。


「悪いけど、少し探ってもらっても良いかしら?」

「ええ、構わないわ。少しの間、ホルディアを空けるけど」

「問題ないわ。……気を付けて」


 もちろん、と頼もしく答えて同僚は去っていった。


(これで何かを掴めると良いのだけれど……)


 もう少しで夏だというのに、ゾクリとリリィの背筋が震えた。

 寒気の正体は、彼女にもわからなかった。


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