報告書
人身事故報告
事故発生時刻は午前1:50頃。
被害者は近くに住むフリーター (19歳) 以下、被害者と記す
加害者はトラック運転手 (35歳) 以下、加害者と記す。
事故発生当時。被害者は突然車道に飛び出し、加害者の運転する大型トラックに正面衝突。数メートル引きずった後、停止した。
この様子は近くのコンビニエンスストアの防犯カメラ。トラックのドライブレコーダーにも鮮明に記録されている。
救急隊が駆け付けた時にはすでに被害者は死亡。遺体は原型を留めておらず、即死だった。
事故原因は被害者の自殺とみて間違いない。加害者への罪は軽いとみられる。又、自殺の要因と結びつく幾つかの事例が出ているのでここに記す。
事故後、家族同伴で被害者の住むアパートに調査に入ったところ、幾つか奇妙なものが発見された。
1つ目は原稿用紙。
ゴミ箱の中に丸められた、何も描かれていない白紙の漫画用原稿用紙で溢れ返っていた。
被害者が事故に遭う数日前、ある出版社に送った原稿用紙も同様に白紙だったことがわかっている。
2つ目はノート。
文章と絵と思われるものがびっしりと書き込まれていた。
文章は文字列、文字の大きさ、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットが入り乱れ、滅茶苦茶に書かれていた。殆ど文として成り立っていない。唯一、読めたのは最後のページに書かれた『また繰り返せばいい』という文のみだった。
絵には人が描かれていた。人としか表現できない。子どもが描き殴った絵と言うには余りにも鮮明で、有名な画家が描いた阿鼻叫喚の地獄絵図、人間の負の部分を題材にした作品と言うのが近いかもしれない。人のような何かが描かれていた。
被害者が勤めていた飲食店の店員の話によると、被害者はきちんと業務はこなしていた様だ。ただ、1月ほど前から突然、心ここに非ずといった様子になり、うわ言のようにぶつぶつと呟くようになったとのこと。
心配して声をかける者も何人かいたようだ。その際、被害者は受け答えに応じるものの、直ぐに元のように呟きだしたそうだ。中でもよく呟いていたのが『また繰り返せばいい』だった。
上記の事から推測するに、被害者は精神的にかなり参っていたと考えられる。
自殺の原因とみて間違いないだろう。
ある意味、幸せかもしれませんね。自分のやりたい夢をずっと追い続けられるんですから。
作者は嫌ですけどね。