お出掛け?いいえ散歩です
side康也
日曜日、せっかくの休みだというのにやることが特になく暇な時間を過ごしているわけだが…なぜ暇だと思った瞬間、したいことや眠気など無くなるのだろうか。こんな日にこそ、したいことや眠気など来いと言ってやりたいね。うん
…まぁ馬鹿げた事は頭の片隅に追いやるとして…暇だから町散策でもするか。まだ引っ越して日が浅いからな。
そうと決まればダルい体を起き上がらせてパーカーを羽織り靴を履いて外にでる。もちろん戸締まりも忘れずにする
「さぁって…と。張り切って行こうか!!」
少し暖かくなってきた日差しを浴びながら歩きだす。俺が住んでいるアパートは都会…ではなくどちらかと言えば田舎に近いだろうな。そんなに多くは無いが畑や田んぼなどがあるからな。
アパートから数十分ほど歩くとアニメに出てきそうなグラウンドがあり、そこでは小学生達が野球をやっていた。休みついでに草原の上に座り野球を眺める。点数的に1対1とかなりの接戦だった。すると1人のバッターがボールを打つ…が、そのボールはこちらにやってきてファウルになる。ボールは綺麗に俺の足元で止まる
「すいませ~ん。ボール取って下さい!!」
少年1人がこちらに話しかけてきた。無視するほど冷たくないから足元にあるボールを持ち立ち上がり少年のグローブ目掛けて優しく投げる。俺が投げたボールは綺麗な線を描きながら少年のグローブに収められた
「ありがとうございます!!」
少年は一度、帽子を取って頭を下げるとグラウンドに走っていった。俺は数秒、見たあと、そのまま散歩を続けた。引っ越してきたからだろうか色々なモノを見てしまう。すると目の前に占い師だろう衣装を着た美香が居た。仕事なのだろうと思い話しかけずに違う道を歩く。すると再び知った顔を見た。今度は仕事中ではなく友人だろう女の子と話していたため気にせずに行こうと思った。相手が気づいて話しけてきても数分話たら別れるだろう、と甘い考えをしていると…
「気をつけて下さい!!姫様!!!」
知り合い……綾香の声が聞こえてきた。そして俺は、あいつの厨二は外だろうと変わりないのかと考えながらゆっくり来た道を帰った。来た道を辿り途中で違う道を歩む。
信号機が赤に成ってるため止まっていると反対側に鈴奈とお婆さんが一緒に居た。なにやら困ってる様だったので青信号で渡り話しかける
「鈴奈、どうしたんだ?なんか困ってる様だが……」
「あ…こうちゃん!!そ…それがねぇ。このお婆ちゃんが迷子だったんらしいんだったんだけどね…偶々、見つけた私が道案内をしていたら」
「あぁ…お前も迷子になったんだな?」
言いづらそうにしている綾香に俺が思いついた事を言ってみると凄く驚いた顔をして俺を見てきた
「す…凄いよ!!なんで解ったの?もしかして…こうちゃんって……エスパーなの?」
綾香は首を傾げて言ってくるが、残念ながら、ただの勘だ。このあと綾香だけに任すのが怖かった俺はお婆さんに行きたい場所を聞き偶然、知っていた俺が道案内をした。
別れ際に満面の笑みで礼を言われ凄く良い気分に成りながらアパートに帰るために歩きだす。俺の後ろに綾香が歩く
「お婆ちゃん、凄く嬉しそうだったねぇ。私もなんだか嬉しい気分になれたよ!!ありがとうね。こうちゃん!!!」
「ん…なにがだ?」
突然のお礼に訳が分からない俺は綾香の顔を見ながら訪ねる
「あのままだとお婆ちゃんと私は迷子のままだったし…だから、ありがとうね!!」
「はぁ……それを言うんなら俺もありがとうな」
「なにが…?」
今度は俺がお礼を言ったら綾香は訳が分からないっと首を傾げた。何だが先ほどと真逆だったので笑えてくるなと思いながらお礼を言った意味を伝えようと思った
「俺は今日、暇だったから散歩に出掛けたんだが……お前がお婆さんの道案内をしていたのを見たから俺も手伝ったんだ。そして、お婆さんの心からくる、お礼を聞けた。それだけで俺の暇だった1日は有意義な1日に成ったんだ。だからそんな1日にしてくれたのは綾香だったから…綾香が居たからお婆さんのお礼を聞けた…だから、ありがとう」
俺の暇で終わるはずだった1日…少年からのお礼…お婆さんからのお礼…それらのおかげで俺の1日は有意義な1日に変わったんだ。
俺は笑みを浮かべて歩く。また明日も有意義な1日に成ったらな、と願ながら……