命令?いいえ我が儘です
side康也
オレンジジュースを飲み干して数回、話したあと美香と別れ最後の部屋に来た。
「ねぇ、康也って我が儘な子をどう思う?」
「ん……いきなりなんだ?…まぁ我が儘な妹が居たから大抵の事は可愛い事って思うな」
質問の意味はいまいち解らないがとりあえず答えておく。因みに俺の妹は2人いる…が、まぁそれは後にしておくか…
「ふぅん…なら大丈夫…かな?」
「さっきからなに言ってんだ?」
さっきから七海はブツブツと独りごとを言うが声が小さすぎて聞こえない
「え…?ん~…まぁ直ぐに解るよ。すぐにね」
何故だろ。凄いデジャブを感じるのだが……まぁそんなこんなで部屋の前にやってきた。もう何度も聞いたピーンポーンという音が鳴りいつもの如くドアが開く。現れたのは金髪金眼の如何にもお金持ちって感じの女の子が出てきた
「あら、七海さんじゃないですか。何か用でも…ん?そちらのお方は……」
「ん……俺は今日、引っ越してきた笹木 康也だ。よろしく」
女の子がこっちを見て首を傾げたから自己紹介をする
「そう。私は五条島 鞘ですわ。特別に執事としてなら接してあげますわ」
執事?執事ってあの…?俺はとりあえず七海を見ると目を背けた。ああ…なるほど、さっき言ってた質問はこのことだったんだな。
「う~ん…執事か」
「ムッ……私の執事が嫌なのですか?」
五条島は頬を膨らませて不機嫌オーラをだしていた。
「いや…まぁ嫌じゃないんだがな…俺なんかで勤まるのか?」
「そう言うことですか……ムムッ…まぁ容姿は良いから大丈夫でしょ」
容姿?良くて中の上だと思うんだが…なんだ、案外優しい子じゃないか
「ん…ありがとう。俺なんかで良ければ執事に成ってあげるよ。お姫様」
昔、妹達とやったおままごとみたいに跪き右手を差し出すと五条島と七海は何故か顔を背けた
「ま…まぁ、よろしくお願いしますわ」
五条島は戸惑いながら俺の手を掴む
「フフっ…お任せください。お姫様」
五条島を見ていると昔の妹達を思い出して、かなり面白いな
「鞘…鞘で構いません」
「名前で良いのか?」
鞘っていうと五条島の名前だろ?
「良いのです。特別に許可をしますわ」
「…そうか。ありがとうな、鞘」
また顔を背ける鞘。俺なんかしたか…?
「か…変わりに私もこ…康也…と呼ばせて貰うますからね!!」
「ああ」
チラッと見えた鞘の顔は照れているのか赤かった。そんな所も可愛くて、つい笑ってしまった。今日、挨拶に行った全員は何故か女性で個性的な人ばかりだったが…かなり可愛いってのと変わり者ってのは解った
「(うぅ…何時まで繋ぐのでしょう?で…でも何故か繋いで貰ってると…こう…安心する。だからあと少しだけ……)」
少しだけ、ほんの少しだけ鞘が手に力をいれたが俺は考え事をしていたから気づかなかった
「(フフっ……康也ならみんなとも仲良くなれるわね。ここに居る人たちは大から小まで問題を抱えてる……私も……でも康也なら……)」
そして、そんな俺を見つめる七海の目線にも気づけなかった。だけど気づいていたとしても、その時の俺では何も出来なかっただろ。…まぁそれはまた後の話だ。