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脚本家の彼女  作者: 午後 之風
2/4

そのに

「今度生まれる時は鳥か犬がいいわ」

めずらしく弱気になった彼女に翻弄されながらの

夏の終わりの一日

「今度生まれる時は鳥か犬がいいわ」

夜風が涼しい8月の終わり

夏の終わりは嫌いだなんて考えていたら彼女が話しかけてきた

「それはまたどうして?」

パソコンに向かったままの彼女は

わざと髪の毛をグシャグシャにして

そのうえ祈る様な仕草で僕に言った

「考え過ぎるとどんどん変になるの悪い癖なの」


思えば彼女がぼくの部屋で

脚本を書くようになってから一ヶ月になる

いつも楽しそうに

時には歌って踊るように彼女は脚本を仕上げていった


でも今夜の彼女は落ち着きがなくて

いつもはビートルズを聞くのに

ローリングストンズやジミヘンドリックスやジャニスジョプリンで

このままだとピザとビールじゃなくて

日本酒を飲みながら焼き鳥でも食べ始めるんじゃないかってぐらいの勢いで

何か出来る事はないかなって

僕までオロオロしてしまって

これじゃまるで本当に彼女の望み通りの

雨にうたれた小鳥の君と

飼い主に見捨てられた子犬な僕だなんて考えていたら

突然彼女が立ち上がった


着ている服を全部脱いで

グシャグシャにした髪の毛をマフラーみたいにした彼女は

僕に抱きついてきて

「ワン」と鳴いた

僕は可笑しくてたまらなかったけれど

彼女はいたって真面目だったので

「ワン」と答えた


犬になった僕らは次に何をすべきかって考える間もなく

いつもは朝に抱き合う僕らだけど

夜に抱き合うのはやっぱり素敵で

一度目が終わって一緒にピザを食べて

ピザとビールでじゃれ合った後の二度目の彼女は鳥みたいに自由で

三度目が終わってしまうと

彼女は眠ってしまった


彼女の寝顔を見ていたら

なんだか僕まで鳥になったみたいで

コオロギとか色んな虫が鳴いていて

彼女の寝息もコロロコロロと鳴いていて

世界は僕らで回ってるんだなんて

夢みたいな事も信じてみたい夜で


近頃は夜風がやたらに涼しくて

夏が終わるって事に

ビクビク怯えながら

悪い予感の欠片なんて何も無いんだって

強がってみた


彼女の肩を抱きなから

強がってみた

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