未熟
沢原はベッドの中で携帯のベルを聞き、サイドテーブルにある携帯を取った。
そして相手の名前を見て、電話を取った。
「タダイマ、コノオデンワハ、オキャクサマノゴツゴウニヨリ…」
「亮!ふざけるな!」
秋本が電話の向こうで、笑っている。
「なんだよ。」
沢原が不機嫌に答えた。
「女が傍にいるのか?」
「まあな」
沢原が裸の半身を起こした。しかしベッドには独りだ。
「さっきまでな。」
「帰ったのか。」
「帰したんだ。名が売れたおかげで、こっちの方も体が空く日がなくてね。」
「腹の立つ奴だ。」
「なんだよ、それ確かめるのに、電話してきたのか?」
「そうだ」
「!?なんだって?」
「うそうそ。副社長に代わるから…。」
秋本の言葉をきいて、沢原は目を見開いた。
「もしもし…北条です。ゆっくりしてたところをすまないね。」
「い、いえ!…こちらこそ…こんな恰好で。」
沢原がそう言うと、明良が笑った。
「どんな恰好してるの?こちらからは見えないけど…」
「あ、そうか。…すいません。何か動揺して…」
明良がくすくす笑っている。秋本が横で笑っているのも聞こえた。
(あいつー…後でお仕置きしてやる…)
亮は独り顔を真っ赤にしている。それに気付いていない明良が、明るい声で言った。
「実は、前に高級車のCMで作ってもらった曲なんだけど…。」
「はい。」
「それを、うちのオーケストラ連れて、テレビ番組で演奏して欲しいんだ。」
「何の番組ですか?」
「うちもお世話になってるんだけど、夜中にやってる音楽番組なんだ。圭一も『ライトオペラ』で特集を組んでもらったことがある。」
「ああ!知ってます。副社長達も引退の時に、特集組まれてましたよね!」
「!よく知ってるね。」
「見てたんですよ。絶好調のアイドルユニットが引退するなんてって驚きましてね。」
「そう…そう言われるとうれしいけど。」
「副社長の「モルダウの流れ」は、今でも忘れられませんよ。」
「よしてくれ…。沢原君に言われると一層恥ずかしい…。あれは本当に身の程知らずだったよ。」
「そんなことないですよ。」
明良は「ありがとう」と言ってから本題に戻った。収録は2週間後にあるという。また秋本もソリストでバイオリンの演奏をし、圭一も『ライトオペラ』で歌うという。その伴奏もオーケストラでやりたいので、指揮の練習をしておいて欲しいということだった。そして4曲目に、沢原が作ったライトオペラの曲を3人で演奏して欲しいとのことだった。亮は承諾した。
「じゃ、頼んだよ。あ、ちょっと待ってね。」
明良がそう言うと、秋本と何か話しているような声がした。
秋本が出た。
「じゃ亮またな。ちゃんと服を着ないと風邪引くぞ。」
「優!!」
沢原がどなると、秋本の笑い声と共に、電話が切られた。
……
翌日-
「で、優は何を弾くんだ?」
防音室で、沢原は秋本に尋ねた。
秋本が言った。
「作ってよ。」
「はっ!?」
「亮、作ってくれよ。」
「えーと…よく聞こえないんだけど…」
「作れよ!!」」
「作れるわけねぇだろがっ!!」
圭一は、独りおかしそうに笑っていた。2人の会話はいつもおもしろい。
2人とも男前だから、そのギャップがまた面白いのだ。
秋本が本当に困り果てたような表情で言った。
「だってさー…相澤オーケストラって小規模じゃない。…クラシックができないんだよなぁ…」
「うーーん…」
「弦楽器各パートが3人ずつしかいないオケでさ…。よくあれだけ迫力のある曲が作れるなぁって思ってさ。」
「ありがとお」
「だから作って。」
「無理言うなっ!あと2週間しかないんだぞ。演奏の稽古を考えたら3日で曲作って、1日で楽譜作らなきゃならないじゃないか。」
「…無理かぁ…」
「無理無理…」
「じゃぁ、オケバックあきらめるかー…。バイオリンだけでもつ曲となると…。」
「ピアノだけじゃだめか?俺弾いてやるよ。」
「おお!いいかも!」
「やっぱり「チャルダッシュ」かな?」
「待て待て待て!!」
秋本が沢原の言葉を遮った。
「簡単に「チャルダッシュ」って言うなよ!」
「弾けないの?」
「弾けるけどっ!!」
「あれインパクトあるじゃない。素人さんにはあまり知られてないけど「すげー」って思われる曲だし。」
「…うーーーん。じゃそれで行くか。」
「俺も、しばらくピアノ弾いてなかったから練習しとくよ。」
沢原がニコニコとして言った。
「で、圭一君は何歌うの?」
「「タイムトゥセイグッバイ」を歌いたいんです。」
「あーそれならうちのオケでもいけるな。」
「でも「タイムトゥセイグッバイ」も俺の作った曲も、かなりの声量がいるぞ。連続で歌うのは無理だな…。」
「最初に沢原の曲でバーンと行って、圭一君が「タイムトゥセイグッバイ」歌って、3曲目が俺のバイオリンで、最後に3人で亮の作った曲だね…」
「俺、休みないじゃないかっ!!」
沢原が、やっと気がついて言った。秋本が笑いながら言った。
「あたりまえじゃないか。お前の特集だぞ。」
「えっ!?『ライトオペラ』の付け足しじゃないの?俺。」
「違う違う!!」
圭一と秋本が笑った。秋本が言った。
「逆だよ。俺たちがお前の付け足し。」
「…なんで?」
「お前、今「時の人」なんだってさ。セレブな奥様方が「亮様」のお顔が見たいんだそうだよー」
「人妻には興味ないなぁ…」
「仕方ないだろう。人妻に好かれる顔なんだから。」
「ちなみに優は?」
「俺はティーンエイジャーらしいよ。」
「圭一君は?」
「圭一君は20代から30代のお姉さま方。」
「幅ひろっ!なんで?」
「守ってあげたい男ナンバーワンなんだって。雑誌にあった。」
「…だから俺たち3人なのか…。女性をお茶の間に釘付けってわけね。」
「そこまで考えてるかねぇ…。」
秋本が苦笑して言った。
……
音楽番組-
いきなり、真剣な表情の沢原の横顔がアップで映った。
カメラがズームアウトし、相澤オーケストラを前に手を上げている沢原の全身が映る。
沢原が手を振ると、オーケストラが演奏を始めた。最初から激しい弦楽器の動き。
それと同時に、沢原の指揮の動きも激しい。少しも表情を緩めず、最初から最後まで厳しい表情で指揮をする沢原の姿が、ズームイン、アウトを繰り返しながら映された。
曲が終わると、女性司会者に映像が代わった。
「こんばんは。今日は沢原亮さんの特集をお送りいたします。」
女性司会者がそう言うと、指揮を終えてオーケストラから離れた沢原の傍へ行った。
「今夜はよろしくお願い致します。」
沢原が「よろしくお願いします。」と言って、頭を下げた。
「今日は『ライトオペラ』のお2人にも、ご共演いただきます。私に近い方から「北条圭一」さん「秋本優」さんです。」
「よろしくお願い致します。」
圭一と秋本が、沢原の横に並び頭を下げた。全員が、ライトオペラ風の衣装を着ている。
沢原が照れ臭そうに、額を手で拭った。
「どうしました?」
司会者が沢原に尋ねた。
「いや…こうやって3人で出るのは初めてなので、何か照れ臭いですね。」
「なるほど。…こう見ますと、皆さん、ほとんど同じ身長でらっしゃるんですね。」
「そうですね。」
「すごい威圧感があります。」
女性司会者がそう言って笑った。
沢原達も笑った。
「年齢は…沢原さんと秋本さんが、ご一緒の23歳なんですよね。」
「そうです。」
「で、北条さんは19歳…。お兄さん達怖くないですか?」
司会者の言葉に、圭一が笑って2人を交互に見た。
「怖くはないです。」
「怖く「は」なんですね?」
「どちらかというと楽しいですね。いつもプロダクションの階段で追いかけっこしてるし。」
「えっ!?」
沢原が「こら」と圭一に言った。圭一が「すいません。」と言っている。秋本は下を向いて笑っている。
「どうして追いかけっこを?」
「楽譜を作るのを、秋本に手伝ってもらうんですが、時々、嫌がって逃げるんですよ。」
沢原が秋本を指さして言った。
「5階から1階まで駆け下りて、しまいにはバイクに乗って家に帰っちゃうんです。」
「それを1階まで追いかける沢原先生もすごいと思いますけど…」
圭一が言って笑った。全員が笑っている。
……
2曲目の「タイムトゥセイグッバイ」は、沢原の指揮するオーケストラをバックに圭一が「ライトオペラ」で歌った。すべてを1人で歌うのは初めてだったが、最後まで声量が変わらずに歌いあげた。 歌い終わった時、圭一は沢原に振り返った。沢原は満足そうに圭一に拍手していた。 しかし、この圭一の歌の時も、映像はほとんど沢原の真剣な表情で、指揮をする姿だった。
……
CMが終わると、司会者、沢原、圭一、秋本の順番で4人は椅子に座っていた。
「曲はどのように作られるんですか?」
女性司会者が沢原に尋ねた。
「ほとんどが「ハミング」です。それか楽譜を手書きするか…」
「えっ!?コンピューターミュージックがお得意と聞いたんですが…パソコンとかで作られるんじゃないんですか?」
「なぜかそういうことは「アナログ」なんですよ。」
沢原が笑って言った。
「ハミングからどうやって?」
「…だから秋本が逃げるんです。」
秋本がまた沢原に振られて笑った。
「俺のハミングを聞いて、秋本がキーボードで弾いてくれるんですよ。」
「え?沢原さんが、直接キーボードをお弾きにならないんですか?」
「何故かキーボードを前にすると、今まで浮かんでたのが消えちゃうんですよ。だからいつもICレコーダーかメモ用紙を持って歩いているんです。歩いている時とかはICレコーダーにハミングで入れるんですが、ひどい時は電車の中とかで浮かぶんで、その時はメモ用紙で楽譜を書くんです。」
「えーー!?じゃぁ、1曲目に演奏してもらった曲は、今おっしゃったハミングと手書きの楽譜で作られたんですか?」
「そうです。僕がICレコーダーに入れたハミングを秋本が、手書きの楽譜は北条君がパソコンにつながったMIDIキーボードから入力してくれました。」
「じゃその間、沢原さんは?」
「寝てました。」
スタッフの笑い声がした。皆、沢原が事故にあったことは知らされていない。
「まー…楽なこと。」
女性司会者が笑った。圭一がフォローするようにマイクを持って口を開いた。
「でも編集は沢原先生しかできないので、その編集されている時は僕らも休みましたよ。」
秋本がうなずき、沢原が苦笑した。女性司会者は「なるほど」とうなずいてから言った。
「じゃぁ、3人で協力して作り上げた…という感じなんですね。」
「そうです。この2人がいてくれなかったら、楽譜を作成することはおろか、コンピューターに入力するだけでも大変だったと思います。」
圭一と秋本が、ふと顔を見合わせて照れ臭そうに下を向いた。
「このあと、秋本さんがバイオリンを演奏されますが、沢原さんがピアノを弾かれるとか。」
「はい。ピアノで伴奏します。」
「待ちきれないので、準備をお願いします。」
女性司会者がそう言うと、沢原と秋本が笑いながら立ち上がった。
スタッフが拍手している。
残された圭一に、女性司会者が言った。
「お2人の練習風景はどんな感じなんですか?」
「掛け合い漫才みたいです。」
圭一の言葉に、女性司会者が笑いながら「え?」と言った。
「漫才ですか。」
「ええ。お互い何故か、けなし合いながらやるんですよ。それなのに、演奏はぴったり合ってるんです。」
「本当に仲がいいんですね。」
「そうですね。ちょっと妬けちゃうくらい。」
圭一がそう言って笑った。司会者が「まぁぁ」と言って笑った。
「では、準備が整ったようです。「チャルダッシュ」です。どうぞ。」
沢原が「チャルダッシュ」の前奏をピアノで弾き始めた。秋本が途中からバイオリンで入る。聞かせどころのところは沢原がピアノを止めて待った。その待つ顔も映されている。
この3曲目も、ほとんどが沢原の表情だった。
……
「では最後の曲です。沢原さんが作曲された、ライトオペラの曲ですね。」
「そうです。」
「テレビ初公開ということで、リハーサルもされなかったので、私もどんな曲かはわからないんですが…これはシングルだけを出されているんですよね。」
「はい。」
「今まで、テレビで演奏されなかったのはなぜでしょうか?」
司会者の言葉に、沢原が圭一を見て苦笑した。圭一も下向き加減に苦笑している。
秋本が、圭一を指さして言った。
「こいつ喉切ったんですよ。この歌、歌って。」
「えっ!?」
「血吐きました。」
圭一が、笑いながら言った。
「ええーっ!?」
司会者が頬に手を当てて言った。圭一が笑っている。
沢原が申し訳なさそうに説明した。
「最後のところのブレス…息継ぎが難しいんですよ。それで息継ぎをしやすいように、詞を書きなおそうと思ったんですが、圭一君が「このままがいい」って言ってくれましてね。…ただ、やっぱり息が続かなくて、酸素吸入しながら3回取り直して、最後に喉切っちゃったんです…。」
「…今日は…大丈夫ですか?」
「喉は切らないと思いますけど…頑張ります。」
圭一がそう言って、沢原を見た。沢原が圭一の肩を叩く。
「…では、スタンバイお願いします。」
女性司会者に言われ、3人は頭を下げてスタジオに向かった。
「笑ってらっしゃいますが…本当に大丈夫なんでしょうか。」
女性司会者が、苦笑しながら3人を見送っている。
「では、ちょっと心配ですが最後の曲です。お聞きください。」
司会者が曲名をアナウンスした。カメラが3人を映す。
一番奥にオーケストラ。その前で沢原が指揮台に立って圭一の方を見ている。まだ手は上げていない。
圭一が、中央に低めのスタンドマイクの前に立っており、秋本は圭一よりも前の上手寄りでバイオリンを構えている。
最初に動いたのは、秋本だった。静かにバイオリンだけの音が響いた。悲しげな響きである。
そのバイオリンに乗せて、圭一が歌い始めた。英語だ。いつもより低めのトーンで、今までの圭一のイメージとは違っている。
オーケストラが、2人をフォローするように途中から入る。
詞の内容は、愛する女性と死に別れた青年が、その女性に対して何もしてやれなかったと嘆く曲だった。詞も沢原が書いた。もしかすると実体験ではないかとも思えるような、切ない詞だった。英語にしたのは沢原の照れからかもしれない。
最後に向かうにつれ、圭一の歌と、秋本のバイオリンの音が激しくなった。オーケストラは静かな演奏で2人をフォローしている。
圭一が歌いあげ、秋本がバイオリンの弓を思いっきり引いたと同時に、沢原が両手を振り下げた。最後の音は「ガン!」と何かを落としたような音で終わり、後に静けさが残った。
スタッフが拍手を忘れている。司会者も、何か驚いたような表情で立っている姿を、カメラが捉えていた。
カメラが3人を映したと同時に、スポンサーの紹介の画面になったが、息を弾ませていた圭一が、突然力が抜けたように崩れた。後ろで見ていた沢原が駆け寄り、圭一の体を背中から抱きとめた。秋本が携帯用の酸素ボンベを受け取り、苦しそうに息を弾ませている圭一の口に当てたところで、CMに入った。
CMが終わると、圭一はまだ息を弾ませて座りこんでいるが、沢原に微笑みながら首を振っている姿が映った。そしてカメラに気づき、謝るように手を合わせて頭を下げたところで、番組が終わった。
……
このあと圭一のことを心配する電話が殺到したという。
これで更に「守ってあげたい男」の株が上がったかもしれない。
……
相澤と明良が社長室のソファーで、沢原、圭一、秋本を前に、少し厳しい表情で3人を見ていた。
「…まさか、喉を切るほどの歌とはね。今日は切らずに済んだが…。」
沢原が、気まずそうに下を向いている。秋本も神妙な顔で座っていた。平気な顔をしているのは圭一だけである。相澤が圭一に「本当に大丈夫か?」と言った。
「大丈夫です。今日みたいに呼吸困難になったり、喉を切るのは、僕がまだ未熟だからなんです。」
「シングルで聞いた時は、あの迫力が少し失せるからなぁ…それで、まさかそこまでとはわからなかったんだが…」
明良はただ黙っている。相澤が続けた。
「おかげでネットでも、あの番組からダウンロード数が、うなぎ昇りに増えているが…沢原君…今後の曲は、もうちょっと考えてもらえるかい?」
「はい。申し訳ありません。気をつけます。」
沢原が謝ったが、圭一が慌てて言った。
「僕は先生の曲…特にこの曲は好きなんです。…僕のせいで、沢原先生の曲調が変わるようなことはして欲しくないです。」
「と言ってもなぁ…」
「圭一…」
黙っていた明良が、やっと口を開いた。表情は固いままである。
「…はい。」
「喉を切るのは、本当におまえが未熟だからか?」
「そうです。今までの呼吸法では、最後まで歌えない。もう1度、発声と呼吸法の勉強をしなおさないといけないかもしれません。」
「それなら、そうしなさい。」
明良の言葉に、相澤も沢原達も驚いた表情で、明良を見た。
「私も、この曲は好きだ。…でも、圭一が未熟なせいで、この曲の良さを殺してしまうのならば、沢原君に申し訳ない。」
沢原は驚いて、首を振っている。明良は、厳しい表情のまま続けた。
「実は「もう1度聞きたい」というメールも殺到しているんだ。さっき社長が言ったように、シングルでは迫力が失われていることに、視聴者も気がついたらしい。あの番組での迫力は、先に曲を聞いていた人にも、驚きを与えたようなんだ。だから圭一…いつかまたテレビで歌わねばならないことが、あるかもしれない。その時は倒れないようにしておくんだ。」
「はい!」
圭一が嬉しそうに返事をした。明良がやっと表情を緩めてうなずいた。
……
「お前が何で泣くんだよ。」
秋本が、家のダイニングテーブルに突っ伏して泣いている沢原をあきれ顔で見ながら、缶ビールを一口飲んだ。
「感動しちゃってさー…」
沢原が伏せたまま言った。
「圭一君も副社長も、なんていい人なんだー」
「今まで知らなかったのか?」
「すいません。知りませんでした。」
秋本が苦笑して「ほら飲め」と言って、沢原の肩に手をかけ、揺らした。
沢原が顔を上げ、目を拭って缶ビールを飲んだ。
「息子が倒れたんだぞ!それなのに、俺のことを責めるどころか謝られてさ。あんな親いるー?」
「いるんだから仕方がないじゃないか。」
「俺もあんな人になろう。」
「無理だよ。お前だったら、怒鳴りつけてるだろう。」
秋本が言った。沢原は「ん。怒鳴りつけてるな。俺を。」と認めた。
秋本が笑った。