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北条家の禁断

圭一は、明良と菜々子と一緒に大型ショッピングセンターにいた。

以前、ゲリラライブをした所だ。


正直圭一は恥ずかしかった。親と一緒に買い物に行くのは、小学校以来だからだ。

それも明良と菜々子が並んで歩いているだけでも目立つ。

圭一は、その2人の後ろに隠れるようにして歩いているが、もちろん見つからないはずはない。そもそも圭一の身長は明良とほぼ同じなのだ。

あちこちで「北条圭一」と囁かれる。だが、握手やサインを求めてくる人はいなかった。

皆、節度をわきまえているのだ。


「圭一」


明良が圭一に振り返った。


「何か買っておくものはないか?」


菜々子も微笑んで振り返る。圭一は「別に…」と首を振った。


「何もないわけないでしょう?圭一君。あっそうだっ!」


菜々子が圭一の腕を取った。


「ねぇ!服買いに行きましょうよ!こういうショッピングセンターで息子の服とか買うの夢だったのよ!」

「えっ!?」

「それはいい。私も行こう。」

「行きましょう!」


圭一は菜々子に腕を取られて歩き出した。顔が赤くなっている。

今度は明良が2人の後ろを歩く。


(本当の親子みたいだな。)


明良は顔が緩みっぱなしだった。


……


明良の家では、圭一の服がソファーに積み上げられていた。


「ショッピングセンターって、本当に何でもあるのねー。どっかのブティック行くよりはずっと安いし、結構生地も悪くないわー。」


菜々子はその圭一の服を1枚1枚広げてみながら言った。圭一は、ダイニングテーブルで明良とコーヒーを飲みながら、苦笑している。


「片っぱしから買ったって感じだな。」


明良も呆れている。


「父さん、すいません。父さんのものは全然…」


圭一の言葉に明良が笑った。


「別に私が買おうと思うものはなかったから構わないよ。ただ…お前と菜々子さんと一緒に買い物に行きたかったんだ。…本当の親子みたいにね。」


圭一は照れくさそうに笑って、下を向いた。


「ねぇ!圭一君、これとこれ着てみてよ!」


菜々子がストライプのシャツと、ジーパンを持って、圭一に言った。


「えー?今ですか?」

「今よ!もちろん!ファッションショーするの!」


菜々子の言葉に、明良が吹き出すようにして笑った。

圭一は困っている。明良が言った。


「着てやってくれ。これも菜々子さんの夢だったんだろう。」


圭一はうなずいて、照れくさそうに立ち上がった。


……


圭一はベッドで寝ていた。

眠れない。

今日は明良のところで泊まると決まっていたので、気持ちの準備はしていたが…。


まだ圭一は、明良達と一緒に住む決心はついていなかった。

何か遠慮があるのだ。今日のショッピングでも、どうしても明良達に気を遣う自分がいた。


「…そうだ。明日は僕が朝ごはん作ろう…」


圭一はそう決めると、眠ろうと目を閉じた。


……

翌朝-


圭一は早めに起きたつもりだったが、もう明良は仕事で出て行ってしまった後だった。

菜々子も気づかなかったという。


「まだ6時よね。」


素顔の菜々子があくびをしながら言った。

圭一は、ONとOFFの顔が変わらない菜々子に驚いていた。


「はい…。父さん、何も言ってなかったんですか?」

「うーん…。予感はしていたんだけど…」

「予感?」


圭一は、菜々子の前にベーコンとスクランブルエッグの乗った皿を置いた。


「わー!おいしそー!」


菜々子が言った。圭一が申し訳なさそうに言った。


「すいません。トーストの方が後になってしまって…」

「いいの、いいの!…あー明良さんにも食べて欲しかったわー…圭一君のこれ…」


菜々子はフォークでスクランブルエッグをすくって一口食べた。


「ん!バターの具合がとてもいい!」

「ありがとうございます。」


圭一が微笑んで言った。が、すぐに眉間にしわを寄せて菜々子に尋ねた。


「専務…予感って?」

「うーん…もう圭一君も北条家の一員だから…言っといた方がいいわね。」

「…なんですか?」


菜々子はフォークを置いて、圭一に向いた。


「今日ね…明良さんの誕生日なのよ。」

「!!」


圭一は(しまった)と思った。自分の誕生日を祝ってもらっていながら、連日の忙しさに、明良の誕生日を聞いておくこととずっと忘れていたのだった。


「じゃ、今日パーティーの用意しなきゃ…!」

「それが駄目なのよ…圭一君。」

「!?…どうして…?」


菜々子は、圭一に「こっちに座って」と自分の隣の椅子を引いた。

圭一は「はい」と言って、言われるまま、菜々子の隣に座った。


「…明良さんの誕生日はね…お姉さんの命日なの。」

「!!!」


圭一は一瞬言葉を失った。


「命日…?」

「ええ…私も明良さんと付き合い始めて、明良さんの誕生日を聞いたことがあったのね。そしたら「知らなくていいですよ。」ってそればっかりなのよ。で、相澤さんにこっそり聞きに行ったの。そしたら「明良に誕生日を祝うのはタブーだよ」って言われて…よくよく話を聞いたら、お姉さんの命日だったの。それも、お姉さん…明良さんにケーキを買いに行った帰りに事故に遭われたそうなの。」

「!!」

「明良さんが見たわけじゃないらしいんだけど…お姉さんが倒れている傍につぶれたケーキがあったそうなのね。相澤さんが明良さんの誕生日をお祝いしてあげようとした時は、明良さんが20歳で、まだ亡くなってから4年しか経っていなかったそうなのよ。明良さんは相澤さんにはすべて話したんだって…そしてこれからは何もしないで欲しいって言われたそうなの。」

「……」

「たぶん、そのことに触れられるのが怖くて、早めに出たんじゃないかしら。」

「……」


圭一は下を向いた。


「だから、プロダクションで会っても、知らないふりをしてね。」

「…はい。」


菜々子にそう言われ、圭一は返事をした。


……


「…何もできへんなんて…」


床に座り込んでいる圭一が、ふと呟いた。


「ん?なんて?」


隣で一緒に座りこんでいる雄一が、聞き返してきた。

圭一ははっとして、あたりを見渡した。ジムでマシンを使う前の、柔軟運動の最中だったことに気づいた。


「何でもない。」

「何かができへんって言ってへんかった?」

「…ん…」


圭一は雄一に言うべきかどうか悩んだ。あまり人に話してはいけないような気がしたのだ。


「あのさ、雄一。」

「何?」

「自分の大事な人に何かお礼したいと思っていても……やっぱり、いいや…」


圭一はどうしても今の心境を言葉にできずに、途中であきらめてしまった。


「いや、よくないやろ。」


柔軟運動をしながら、雄一が言った。


「つまり何かお礼したいけど、なんかがあってできへんってことか?」

「ん…まぁ…そんな感じ。」


雄一にも圭一の言う「大事な人」というのが誰かわかっている。でもそれを確かめることはしなかった。


「ん~…そやなぁ…。僕やったら、まともに「お礼です!」ってせんと、さりげないような…違う方法でお礼をするな。」

「違う方法って?」

「お礼と解らない様にするんや。お礼らしくないことで、お礼をするねん。…圭一やったら…」


雄一はそこまで言って、圭一の耳元に口を近づけて何かを言った。


「!!」


圭一は目を見張った。


「さりげなくやで。さりげなく。」


雄一がそう念を押した。


「…ありがとう…雄一。やってみる。」

「うん。」


2人は立ち上がり、各々のマシンへ向かった。


……


夕方-


明良は菜々子と一緒に、声楽のレッスン室に圭一に呼ばれた。

そのレッスン室に向かう廊下で、菜々子が明良に言った。


「新しい曲を練習したから聞いて欲しんだって。」

「へぇ。楽しみだな。」


明良はそう嬉しそうにした。

レッスン室に入ると、なんとバイオリンを持った青年がいる。そしてその青年と打ち合わせている圭一の姿があった。それもその青年と圭一は『ライトオペラ』での衣装を着ている。


「副社長、専務…いきなり、すいません。」


圭一が、明良達が入ってきたのを見て言った。


「いや…新曲だって?」


明良が驚きながらも菜々子と一緒に、用意されている椅子に座りながら言った。


「ええ。新曲と言ってもクラシックですが。」


圭一がそう答えた。そしてバイオリンを持っている青年を紹介した。


「こちら、バイオリニストの「秋本 ゆう」さんです。ピアノの先生が紹介して下さったんです。」


秋本と言われた青年が、明良達に丁寧に頭を下げた。

明良達も、立ち上がって頭を下げる。


「よろしくお願いします。」


明良が言った。青年は「こちらこそ、お願いします。」と言った。圭一と負けず劣らずの好青年で、圭一より少し年上のようだ。

圭一が申し訳なさそうに明良に言った。


「すいません。もうちょっと待ってもらっていいですか?」

「うん。構わないよ。今日はもう帰るだけだから。」

「よかった。」


圭一は明良のその言葉にほっとしたようだった。

そして、また秋本と真剣な表情で、楽譜を見ながら小声で打ち合わせをしている。


「…ちょっと難しいでしょうか…」

「ん~…そうだな…ここを歌い終わって、すぐにだもんな…息が持つかな。」

「ブレス入れたら、ワンテンポどうしても遅れてしまう…」

「それなら、ワンフレーズ殺してしまった方がよくない?」


圭一は歌いかけて「あ」と口を抑えた。明良達には聞かれたくないらしい。


「早すぎたかい?ちょっと後にまた来ようか?」


明良がそれに気付いて、圭一に言った。


「いえ!すいません。大丈夫です。」


圭一が明良にそう言い、再び秋本に向いた。

秋本と打ち合わせている圭一の姿は、普段の子どもっぽさがなく逞しささえ感じる。

菜々子がそっと明良に耳打ちした。


「雄一君ともビジュアル的にかっこいいけど、この2人は違った美しさがあるわね。」


明良は小さく笑った。


「女性はこれだからなぁ…」

「あら、ビジュアルも大事な要素だわ。」

「はいはい。」


結局、圭一が納得した様子を見せ、秋本に「それでお願いします。」と言った。

秋本がうなずいた。


圭一は、グランドピアノの前に立った。秋本は、グランドピアノの楽譜立てに楽譜を立て、バイオリンを構えた。


「…では…これを、父さんに捧げます。」


圭一が言った。


「?…私に?」


明良がそう言うと、菜々子が何かに気付いたように口に手を当てて微笑んだ。


「何?」

「ううん。何でもないわ。」


菜々子はそう言って、明良の手を握った。

明良は不思議そうな表情をしたが、菜々子の手をそのまま握った。


秋本は弓を引いた。


最初の出だしでもうわかる。


バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」だった。

美しいバイオリンの旋律がレッスン室に響く。


そして、圭一が旋律に合わせて、歌詞ではなく「あ」で歌った。この曲ではよく使われる方法だ。

途中で歌詞が入った。英語だ。


讃美歌で有名なこの曲は、イエスキリストを讃える歌である。

圭一はクリスチャンではないので、今まで「アベマリア」以外の讃美歌は避けていた。

だが明良のために歌うことにしたのだ。


今はイエスではなく、明良を讃えるために。


歌い終わって、圭一は「ふーっ」と息を吐いた。

菜々子が拍手をした。明良は何か神妙な表情で黙っている。


「明良さん?」


菜々子が明良の様子に気づいて、明良の手をもう1度取った。

秋本が不安そうな表情で、圭一に近寄ってきた。

圭一は秋本に「大丈夫」というように微笑んだ。


「副社長もクラシックをされていたので、この讃美歌の歌詞をご存じなんです。」


圭一が秋本にそっと小声で言った。


「…なるほど…」


秋本が安心したように微笑みながらうなずいて、明良を見た。


明良は菜々子の手を握り返しながら、下を向いている。

その目から涙が流れ、頬を伝っていた。


……


「主よ、人の望みの喜びよ」の歌詞の意味はだいたいこうだ。



イエスがいることは私の幸せであり、イエスを固く抱きしめることだろう。

イエスは私の心を癒してくださる。

病のときも 悲しいときも 私にはイエスがいるのだ。

イエスは私を愛し 私のためにご自分をも差し出してくれる。

だからイエスを放さない。

たとえこの心が張り裂けようとも



圭一はこの歌を歌う前に、明良にささげると宣言をした。

つまり、自分にとっての「イエス」は「明良」だという気持ちを込めたのである。


……


明良は、涙を拭かずに圭一に向いて言った。


「…素敵なプレゼントをありがとう。」


その言葉に、菜々子がうれしそうに圭一を見た。

圭一は頭を下げた。そして秋本に握手を求められ、それに応えた。



……


翌日、レコーディングの許可を取るため、圭一は「主よ、人の望みの喜びよ」を秋本のバイオリンを伴奏に、相澤の前で歌った。

雄一もいる。同期生達も来ていた。

そして、もちろん明良と菜々子もいる。


曲が終わった時、相澤が拍手をしながら言った。


「よし、すぐに準備をすすめよう。秋本君もよろしく。」


圭一と秋本が満面の笑みになり握手をした。新生『ライトオペラ』が誕生した瞬間だった。

雄一たちも拍手をしている。


圭一は雄一に駆け寄って「ありがとう」と言った。

雄一は驚いていたが、圭一の差し出した手を嬉しそうに握った。


「…もう…明良さん、泣きすぎよ。」

「泣かない方が無理だって。」


菜々子にハンカチを渡され、明良は笑いながら、そのハンカチで目を拭った。


……


音楽番組-


圭一と秋本が呼ばれた。2人立ち上がるが、お互い先を譲りあった。

結局、秋本が笑いながら先に進んだ。


2人は男性司会者の横に座った。

もう1度ユニット名を言われ、拍手があった。2人は頭を下げた。


「これはまた美しいホストさんがお2人で。」


司会者が言うと、全員が笑った。


「北条圭一君の新パートナー、バイオリニストの「秋本 ゆう」さんです。」


秋本はそう紹介され頭を下げた。少し長い、栗色のくせ毛が頬にかかる。拍手があった。少しため息のような声も混じっている。


「秋本さんは音楽番組に出られたことは?」

「ないです。正直、全くの素人なので。」

「どなたかのお知り合い?」


司会者が秋本の奥にいる圭一に尋ねた。


「『ライトオペラ』をネーミングしたピアノの先生のご紹介なんです。」

「へぇー。先生やるねぇ…」


笑いが起こる。司会者が秋本に尋ねた。


「圭一君より年上だよね?」

「4歳上です。」

「23歳ですよ。」


圭一が念を押した。


「23でこんなに美しかったらどうするの!」


司会者がそう言うと、秋本は照れくさそうに圭一の方を見て笑った。

圭一も笑っている。


「好みですか?」


圭一が司会者に尋ねた。


「好み、好み!後で楽屋においで。」


全員が笑った。


「行かない方がいいですよ。」


圭一のその言葉に、秋本がうなずいてみせる。

また笑いが起こった。


「圭一君達は抱き合わないんだよね。」


圭一が思わず声を上げて笑ってしまう。秋本は笑顔のままで、不思議そうに圭一を見た。

司会者が言った。


「明良お父さんたちは、よく抱き合ってたけどねぇ。」

「そうなの?」


秋本が圭一に尋ねた。圭一がうなずく。


「社長としょっちゅう…」

「ええ!?」


司会者を始め、全員が笑っている。


「抱き合うの、大好きだって言ってたもんね。」


笑い声が大きくなった。


「抱き合った方がいいの?」

「!?」


秋本の大胆な発言に圭一が「しなくていいですよ。」と言った。

客席から「えーっ」という声がする。

圭一と秋本、驚いた表情で客席を見る。


「しないです!しないですよ!」


圭一が必死に手を振りながら言った。司会者が笑いながら話題を変える。


「今回の曲は讃美歌の「主よ、人の望みの喜びよ」ですね。これを明良お父さんに捧げるために歌ったとか。」

「そうです。」


司会者の質問に、圭一が答えた。


「ぶっつけ本番だったんだって?」

「そうなんです。どうしてもその日に歌いたくて、ピアノの先生に「なんとか今日バイオリンを弾いてもらえる人が欲しい」って無理を言ったんですよ。そしたら秋本さんがバイオリンを背負って、バイクで駆けつけてくださって。」

「バイク!またイメージが正反対だね。」

「僕、駐車場まで迎えに行ったんですけど、カッコよかったです。」

「だろうねぇ…」

「僕も初対面だったので、秋本さんがヘルメットを取り外した瞬間、息を呑んでしまって。」


秋本が「言いすぎ」と圭一に言った。圭一は「いえいえ、本当に」と首を振っている。


「あー…俺もそれ見たかったー!…後で楽屋でやって。」


司会者の言葉に、全員が大笑いする。


「行ったらだめですよ。」


圭一が秋本に念を押した。秋本が笑いながらうなずいている。全員の笑い声。


……


スタンバイが整って、2人はセットに向かった。

圭一がスタジオの真ん中に立ち、斜め前に秋本が立つ。


「あー…さすがに緊張する。」


秋本が圭一に振り返りながら、呟くように言った。


「大丈夫ですよ。リハでうまく行きましたから。」


圭一が励ます。


司会者が2人のユニット名を言い、曲名がアナウンスされる。

拍手が起こる。


バイオリンを構えていた秋本、弓を引く。

美しい旋律。


同じ旋律が繰り返されるところで、圭一が「あ」で旋律を歌う。

秋本の斜め前からのカメラアングル。

秋本と圭一が2人とも映っている。


圭一が英語で歌いだすと、カメラが圭一へ移動する。

バイオリンだけのところになると、長い睫毛を伏せてバイオリンを弾く、秋本のアップになった。


曲が終りに近づき、圭一が歌いあげた後、秋本が余韻を残すように最後のフレーズを弾く。

拍手が起こる。

秋本の笑顔のアップの後、ズームアウトして、圭一とほっとした笑顔を見合わせる姿が映る。


秋本がバイオリンを持ったまま、圭一に歩み寄り、圭一を抱きしめる。

拍手が大きくなり、笑い声も起こる。

圭一が笑っているが、秋本の背に手を回す。


スポンサーの紹介に入ったところで、2人が体を離し照れくさそうに笑いあう顔が映る。


……


社長室で、この番組を見ていた相澤と明良が、テレビに向かって思わず拍手をしている。


「これは、秋本君のソロアルバムも出してあげなきゃならないな。」

「いいですね。」


相澤の言葉に明良が同意した。


「ピアノの先生も人が悪いなぁ…。もっと早く彼を紹介して欲しかった。」

「それは無理ですよ。「バイオリン」とは縁がなかったわけですから。」

「そうかぁ…。圭一君にも感謝しなければならないな。」

「…そうですね。」


明良が感慨深げに下を向く。


「あの日、圭一君がバイオリンにこだわらなかったら、秋本君は他に取られてただろうなぁ。」

「でもぶっつけ本番だとは知りませんでした。何度も練習をしてからだと思っていましたから。」

「2人共、そこがすごいな。気が合うんだろうね。」


明良がうなずく。


「雄一が嫉妬しないかと思ったけど。」


相澤がそう言って笑った。


「今日もマネージャーでついていったよ。嬉しそうに。」

「…それは良かった…」


明良も笑いながら言った。


「来週は、雄一君とのユニットで出るんですよね。」

「そう。圭一君、大活躍だよ。」

「雄一君にもソロさせてあげたらどうですか?」

「!?…雄一に?」


相澤が驚くのを見て、明良も驚いた。


「考えてなかったんですか?」

「…そういや…考えてなかった…」

「そりゃ、可哀相でしょう。先輩が一番に気に入った子ですよ。」

「…うん…そうか…雄一にソロ…」

「ダンサーを別につけて、どうですか?」

「それはいいね。」


相澤が真剣に考え始めた。


「しまった…今言っちゃあだめでしたね。」


明良のその言葉に、相澤が不思議そうに明良を見た。


「今夜、寝られないでしょう。先輩。」

「寝られないな…」


相澤が笑った。


(終)

<あとがき>


最後までお読みいただきありがとうございます(^^)


やっと出せましたよー。「美しきバイオリニスト」秋本君を…。


美しい男の人って言えば、私的には、まず「ガクト」さんでしょ?「キムタク」さんでしょ?(同い年なんですね。このお2人…)

女形の「早乙女太一」さんは、男のままでも綺麗ですねぇ。


立花が秋本を妄想する時は、いつも「マツジュン」さんなんですよ。


でも!でもですね!一時引退するのしないのと騒がれてました「水嶋ヒロ」さんって、お綺麗なかたですねぇ!奥さまもまた可愛い方ですしね。ご病気いかがでしょうか。


ヒロさんが、バイオリンを構えて、弾く姿もめちゃ綺麗だろうなぁ…なんて、勝手に夢想しています。

夢想には肖像権がないから、ほんと何でもあり(笑)


どうぞ、これからも、夢想についてきてくださいねー!(笑)

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