第五話 『事件は中庭で』
リビングのソファにごろんと寝転がり暇そうにTVを見つめる。
台所では匂いだけはいい焼き魚の匂い。
うぅん。食欲をそそる匂いだな。
しかし、完成形を想像したら一気に失う食欲。
そう、相田 早稀。男子からは性格良し、ルックス良し、成績良し。
なんでも出来る完璧人間。
もちろん、家事も出来きたりするのだが……
「夜人~出来たよ~」
「おぉう」
勢いをつけてソファから飛び上がりテーブルに座る。
……そう、唯一の早稀の欠点…
料理が…下手なのだ…
『いただきます』
パンと手を合わせ、箸をとる
しかし、味は何故か普通に美味いのだ。
問題はこの見てくれなのだ…
今日は見事な焼き魚だ。
…しかし、俺にはどうもこれはシャチホコにしか見えないんだが…
…食いずらい…食いずらいですよ、早稀さん…
そんな、俺が何とも言えない中、早稀が「はぁ」っと息を吐く。
「どした?」
俺がなんかしたのかと思い、そう聞いてみる。
「だって昼休みさぁ……」
と、弱り切った顔でまた嘆息。
俺は昼に起きた事を思い出す。
「まあ…あの人と先生がああ言ってたら、完全に決まりだろうな」
「…はぁ…」
ちなみに俺たちが話しているのは
例の喫茶店の事を生徒会に報告しようとした時からの話だ
少し振り返ってみよう。
………
……
例の喫茶店の話が一通り終わって
二時限が終了し、俺はとりあえず早稀に頭を下げる。
早稀は『この企画を私一人で報告しに行くのは嫌』と言って俺も一緒に報告しに行く
というだけの条件で許してくれた。
そして、その前に飯を食べようと切り出したところから始まる
「と、言う訳でお弁当食べるよ!」
そう言うと、早稀が鞄から弁当を取り出す。
「あれ?愛奈と食わないのか?」
と、俺の隣の愛奈の席を見る。
しかし、そこにはクイーン オブ ロリ(紅雨が勝手に言いだした)の姿はなかった
というか、俺もそうだが、このクラスの窓際の連中は全員どこいったんだ。
「今日は文達に貸出中~」
と、早稀がまるで愛奈を本の様に言う。
文はいつも授業中に居ない割に顔が広い。決して不良って訳でもないんだが…
で、案の定勉強が出来かったり。
でも、俺と同等の成績。
何故なんだろう…
「という訳だから、一緒に食べましょ」
「ん…別にいいが、俺購買行くぞ?」
そう俺が言うと何故か早稀が嫌な顔をする
まあ、大体理由は想像がつく。
何故なら俺の買うパンは一風変わっているからだ。
「あんなパンより私の作った奴の方がいいと思うんだけどな…」
ちょっとしかめた顔でサラッと恐ろしい事を言う。
それだけはちょっと勘弁してほしいのだが、
これを言ったら不機嫌になりかねないのであえて言わない。
こいつは自分の料理の見てくれが悪い事に気付いているのだろうか……
「まあ、あのパンにも需要はあるんだよ」
「ないでしょ?」
早稀がそう言うと、俺は何も言えなくなる。
そうだったりするので困る。
実際、あんなもん買うのは俺か罰ゲームで負けた人くらいだ。
「ま、まあ、いいだろう?ほら、行こうぜ」
そう言って誤魔化し、早稀を教室の外から連れ出す。
………
購買で俺は闇パンという物を購入した。
ちなみに闇は【あん】と呼ぶ。
要するに何が入っているか分からないパンだ。
これは食堂のおばちゃんが先日余った材料をパンに入れてそれを売り出している。
なんかこれは商業的に色んなものに引っかかりそうだが、何故かそれが許されている
…謎だらけのパンだ。しかも数量限定。
なかなかの売れ行きだったりする。
そして俺たちは今中庭で昼食中である。
ちなみに俺の今回の闇パンの中身は蜂の子だった。
これはこれで美味かったりする。
隣に居る早稀はすっごく嫌そうに食べていた。
うん。俺二口目は嫌だった。でも美味いもん。
と、再び口に放り込む。
そして二つ目の闇パンを開けた瞬間
「ご一緒いいかな?」
と、聞き覚えのある声が
俺が声の主の方を見ると、そこには我が学校の生徒会長の姿。
白石 美羽。
うちの学園の生徒会長であり、学園一の美少女と謳われている。
二つ名が薔薇色の天使。俺の知り合いの中で二人目に古い付き合い(一番は早稀)
俺は早稀の方を見て『良いか?』というアイコンタクトを送る。
早稀は少しだけ不満そうに顔をしかめたが、頷く。
「構わな…構いませんよ…」
「あはは~ありがと~」
と、会長が言うが、それは譲らない。
結構長い付き合いで、本人は『タメ口がいい』というのだが
一つの歳の差でも敬語は大事だったりする。
それでも『タメ口でいい』って言うから、俺は『せめて学園に居る時は敬語』と言って
落ち着いた。まあ、昔は会っていたが、最近はそこまで学園の外で会う事は少ないから
結局はタメ口を使う機会がなかったりする。
でも、普段敬語を使わないので、今の様にボロが出そうになるが。
会長が空いてる椅子に座り、設置されているテーブルに弁当を置く。
言い忘れていたが、俺たちが座っているのはカフェテラス風の椅子。
会長はフォークで卵焼きを刺して口に入れる
「あ、そう言えば、早稀ちゃんと夜人君の所のクラス、学園祭の出し物決まったの?」
会長が美味しそうに卵焼きを食べた後にそう聞く。
早稀は『あっ』と思い出して、持ってきていた鞄から紙を取り出して、会長に渡す。
会長は受け取ると、手を止め、書類に目を凝らす。
時々文章を読んだりして内容を頭に入れているようだ。
すると、会長が少し困った表情をする。
「う~ん、さすが那恵湖先生のクラスだねぇ…こんな事考え付くなんて」
と、ある意味関心をしていた。
そっちの方向で感心されたくないです。喜ぶのは鍵山と文と紅雨とあの担任くらいだ。
ちなみに原案者は俺だが、そんな事は言いたくないのであえて言わない
「ちなみに原案は夜人ですよ」
「ちょっ!!」
早稀があっさりと言ってしまった。
早稀は冷やかな視線を俺に送ってくるが目を合わすまいと早稀から視線を逸らす
会長が意表をつかれたのか、驚いた顔で俺を見て、
しばらくするとうんうんと頷いて『夜人君も男の子になったんだねぇ』と納得していた
やめてください。そういう認識。言ったのは俺だけど。
私服○○○とかのビデオあるけど!そういう疾しい事じゃないもん!
すると、会長を紙をテーブルに置き、俺をじっと見て
「うん。許可します!」
ぐっと親指を立てて、そう言った。
『えぇぇ……』
俺と早稀がついそう漏れてしまった。
自分で言ったもんだが、これは通ってほしくない。
盛り上がるクラスの連中には悪いが。
「だって、そこまで規制すべき内容じゃないし、他にもメイド喫茶とかあるからね」
会長が笑顔のままそう言うと早稀はさらに嘆息する。
まあ、那恵湖先生とかが色々修正して、紅雨の無駄な意見を取り入れなかったから
特に危ない所はないのだが…何と言うか、女子たちに同情する。
「それにこれ、男の子もやるんでしょ?」
と、急に目をキラキラさせて俺に聞いてくる
「ら、らしいですねぇ」
そういって俺はフルーツ・オレを飲む
会長は何故か嬉しそうな顔をして
「じゃあ、夜人君もやるの?」
思わずフルーツ・オレを隣の草たちに吹きかけてしまう。
俺、地球の為に水あげたよ……たまには糖分摂れよ?
俺はゲホゲホと咳き込んで、慌てて弁明する。
「やりませんよ!やりたくないですし!」
「えぇ~」
と、会長が残念そうに声を上げる。隣に居る早稀も何故か残念そうな表情をしている。
なんでお前も……?
それでも俺はこれだけは譲れずさらに厳しく言う
「そんな声あげても、絶対にやりませんよ?俺は裏方です」
そう言ったら会長が本当に残念そうな顔をする。
「夜人君がやったら行こうと思ったのになぁ…」
残念そうに会長が言うと、俺は『やってもいいかもしれない』と思ってしまった
いやいや…それは…勘弁…
「…まあ、恐らく俺が接客する事はないでしょう」
と付けたしておいた。
「うん。じゃあ楽しみに待ってるよ」
会長が嬉しそうにそう言った。
…でも、会長が来たら紅雨が五月蝿そうだから本当にやらない方がいいかもしれない
………
と、言った感じの事が起きていた。
「あ~あ。あんなあっさり決まるなんてなぁ……」
早稀がこの世の終わりの様なテンションでそう言った。
俺は食いにくいシャチホコとの戦いを終え、お茶を飲んで一息吐いて
「でも、決まっちゃったしな」
そう言った。
早稀は『分かってるよ…』と言ってまた嘆息。
…見ちゃいられんな。
早稀が自分の家に帰った所でようやく落ち着く。
風呂も上がり、部屋の電気を消し、ベッドに飛び込む。
しばらくボーッと天井を見つめて濃い一日を振り返る。
…何時にも増して濃かったな…
そこで急激に睡魔に襲われ、俺は眠りについた
明日の平穏を願い…
どうも。四条 樹です、ポゥ!
…25日はマイケル命日ですよ。本当は明日なんですけどね。
さて、今回のは数時間前の回想ですよ。
実は当時急に出来た新キャラ『白石美羽会長』を出したかったのでこうなりました。いやぁ、修正加えましたけど、いかんせんイミフな文章。これを修正するとすると、全部しないと行けませんので
横着ぶっこいて部分修正してUPしました。
まあ、文章が少しマシになるのはもうちょっと先ですね