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プロローグ

世界は、いままさに終わろうとしていた。

 魔素が荒れ狂い、空が裂け、大地が悲鳴を上げる。


 世界が崩壊する音がした。


 そこは、異世界アルヴェリアの最終決戦――魔王城。


「……ふぅ。まったく、強すぎるんだよ、お前は」


「こっちもそろそろ限界なんだがな」


 白銀の髪を揺らし、一人の男が刀を肩に担ぐ。

 剣聖――リュシアン・ヴァイス。

 人々が“最後の切り札”と呼ぶ最強の魔剣士である。


彼の前に立つのは、黒き霧をまとった禍々しい影。

 魔王 バアル・ゼフォン。


 「よくぞここまで到達したものだ、剣聖……しかし――」


その声は低く、どこまでも澄んでいて、どこまでも冷たい。


 「我を討ち倒したところで、貴様もただでは済まぬ」


 リュシアンは苦笑した。


 「知ってるよ。だから言ったろ? ムチャは嫌いだって」


 だが、退く理由はない。


 世界を守るため。

 師匠の、師匠の、さらにその師達が命を賭して戦ってきた宿敵を――

 ここで終わらせなければならない。


 リュシアンは刀を構え、低く呟く。


 「禁技――空裂断くうれつだん


 次の瞬間。


 空が音もなく“切断”された。


 世界が悲鳴を上げるほどの衝撃波。

 魔王の体はゆっくりと、裂け目へ吸い込まれていく。


 「ふ……ふははは……面白い……!

  剣聖よ、どこへ落ちようと、また会おう……!」


 バアル・ゼフォンの声が、どこか楽しげに消えていく。


 「……冗談じゃないっての!」


 だが、遅かった。


 切り裂いた空間の向こう側から、逆流する“力”がリュシアンを飲み込んだ。


 刀を逆手に握りしめ、最後に吐き出した言葉は――


 「くっそ……やっちまったかぁ……!」


 そして、剣聖は落ちていった。


 ――光も音も失われた、世界と世界の狭間。


 どれほど漂ったのか分からない。

 意識が薄れ、暗闇すら遠ざかる。


 …………。


 風の音がした。


 土と木と、血の匂いがした。


 「……は?」


 目を開けると、そこは

 太陽に照らされた洛外の山道 だった。


 見たこともない衣装の男たちが数名。

 驚き、警戒し、刀を抜いてこちらに詰め寄る。


 「誰だ貴様ッ!」「構えが違うぞ、あれ!」


 リュシアンはしばし動けなかった。


 ――魔素の気配が、まったくない。


 「……ちょっと待て。ここ……どこ?」


 だがその代わり、空気の奥で

 微弱だが、別の“何か”が脈動するのを感じた。


 魔素とは違う。

 だが、どこか……懐かしいような、似ているような……。


 「……まぁ、後でゆっくり考えるか」


 侍たちが一斉に斬りかかってきた。


 次の瞬間――

 誰も、リュシアンの姿を視認できなかった。


 白刃の閃光だけが、残った。


 風が裂ける音。

 影が掠めるだけで、男たちは膝から崩れ落ちた。


 「……よし。ひとまず……生きてる」


 リュシアンは刀を収め、周囲を見渡した。


 「ふむ……異世界かぁ……。んな馬鹿な……って顔だよね」


 しかし、事実だ。


 魔王を道連れに“空間断裂”へ落ちた結果。


 剣聖は、幕末の日本に転身していた。


 そしてこの地にも――

 魔王の残滓が、すでに漂い始めていた。


 異世界剣豪、転身したらほぼチート。

 【幕末編】、ここに開幕する。


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