序章
これは、気が遠くなるほど遥かな昔の物語。
かつて世界には、二つの強大な種族が存在していました。一つは、巨大な蛇のような体を硬いうろこに覆われ、背中に広大な翼を持つドラゴン族。もう一つは、ドラゴンほど巨大ではないものの、強靭な体躯と自在に魔力を操る能力を持った魔亜人族。
二つの種族は長い間、互いを憎み、争い続けていました。
そんなある時、一匹のドラゴンと一人の魔亜人が恋に落ちます。二人は密かに愛を育んでいましたが、その想いとは裏腹に、種族間の対立は日に日に激しくなっていきました。
やがて訪れたのは、ドラゴンと魔亜人が種族の存亡をかけて激突する、運命の日――『終焉の審判』でした。
世界は砕け、大地は割れ、草木は燃え尽き、水は枯れ果てました。それでもなお、二つの種族は終わりなき戦いを続け、ついには虚無の世界だけが残ったのです。
その空虚な世界に生き残ったのは、かつて恋に落ちたあの二人――一匹のドラゴンと一人の魔亜人でした。
ドラゴンは、散らばった亡骸と砕けた岩を集めて広大な大地を作り、それを背に乗せて世界を支えました。魔亜人は、その新たな大地に再び生命を与えるため、水と草木の種を撒きました。
そして二人の間に、一人の子どもが生まれました。
その子どもの名は――『始終の魔女』。